第19話 ヒロインは対峙する

こういうのは階級が低い人からはいるから、私たちより後に入るのは、ジョシュア殿下とフローレス公爵令嬢マリアローザ様のペアのみだ。

エリオット様は主催扱いなので、開場から庭園で待機されている。


ちなみに、エリオット様のペアはイグレシアス伯爵令嬢シャーロット様だ。アニーがいうにはイグレシアス伯爵は教会を束ねる貴族らしい。でも、タイニー村には教会がなかったからイマイチわからない。



「すてき」

「お褒めいただき、光栄です。ようこそ、フラン、カレン嬢」

「本日はお招きいただき、ありがとうございます」



ガラス張りの天井から降り注ぐ光は淡く、キャンドルのような魔道具がテーブルの上でお菓子の間にひっそりと置かれている。

ティーカップが可愛らしいのはもちろんのこと、円盤型の何層にもなった不思議なお皿に見たこともない彩り豊かなお菓子が並べられている。


流石は殿下が出席するお茶会なだけあって、良いものが揃えられている。


白い衣装の殿下と黄色のドレスに身を包んだマリアローザ様が入室されると、みんなが一斉に膝をついた。

私もアニーに教えて貰って挨拶の基本はできるようになったので、それにならう。



「あら、あなたが噂の?」

「お初にお目にかかります。カレン・ステノと申します」

「そう。付け焼き刃にしては悪くないわ」



マリアローザ様に声をかけられて、返答する。普通は私より階級が高いフランシス様に声をかけられるはずなんだけど、マリアローザ様はそれだけ言うと中央の席へ向かわれてしまった。

代わりにジョジュア様が今日も元気?ぐらいのことをフランシス様に問いかけて行かれた。


隣の座席にいるアニーとローワンが引きつったような笑顔をしているからきっと今のやり取りにも嫌なほど意味があるのだろう。


無言のまま引き絞られた拳がフランシス様にとってなにかが起きたことを教えてくれていた。

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