第18話 ヒロインは踏み入る

理由はまだ分からないけど、フランシス様はご令嬢方から役者のような人気があるものの、友人や結婚相手としては人気がない。

言われてみれば、王子やエリオット様に婚約者がいるのに、フランシス様だけいない辺りで察するべきだった……そう後悔するのは後の祭りだ。


アニーやローワンから理由を聞いておけば、と思うも2人が教えなかったことから考えると、貴族庶民関係なくわかるはずのことなのかもしれない。



「す、すみません。緊張してしまって」



ぼんやりしていたからか、うっかり躓いてフランシス様に支えられる。



「もし、悪く言われても、カレン嬢のせいではないから。その……カレン嬢はとても綺麗だ」



表情に影を落とすぐらいフランシス様が嫌われている理由を私は全く分からないんだけど、まあ、田舎ヒロインならそういうものよね。


振り切って知らぬ存ぜぬで押し通して、フランシス様との仲を深めよう!まあ、フランシス様だと第二夫人はとってくれなさそうだから、あくまでお友だちだけど。



「フランシス様の方が綺麗です!とても騎士の制服が似合っていらっしゃいます」

「ありがとう」

「あの、もし、フランシス様を悪く言う人がいたら悪く言う人の目が節穴なんです!私はフランシス様ほどカッコイイ騎士様は見たことないです」



フランシス様の無表情が僅かに歪む、もしかしてなにか踏み込んでしまったのかも。



「もしかして……いや、あとで話そう。さあ、会場に入るよ」



生徒会が管理している庭園の入口に立つ。入口にそびえ立つ花のアーチには大輪の薔薇が咲いている。これがアニーが言っていた魔力と金の結晶の薔薇。

これを年中咲かせたままにするために高価な魔石と優秀な魔法士が力を尽くしているらしい。


季節の花を見れば良いのに、頑張っている人には悪いけど、ちょっとアホらしい。


そんなことを思いながら、フランシス様の半歩後ろを静静と歩いた。

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