第17話 ヒロインは武装する
ローワンとアニーに庇われて、教えられて、あっという間にお茶会の日がやってきてしまった。
私の装いは、アニーとその家の使用人が手伝ってくれてお茶会の準備が整った。
アニーもローワンと一緒に招待されているらしい。海外からの輸入デザインと聞いたドレスは、アニーの目の色に合わせたグリーンで、珍しい形をしている。
「今日のアニーは一段と美しいよ」
「よく言う」
寮のロビーではいつも通りの掛け合いをしている2人の声が響いていて、少し安心する。こういうお茶会等のために寮には更衣室代わりの部屋がたくさんあると寮母さんが言っていた。
そして、アニーとローワンは今日のお茶会のために、それぞれ一室借りているとも聞いた。
「カレン!恥ずかしがらずにおいで」
「え!あの」
「私たちの腕を見誤らないで欲しいね」
「もちろんアニーのことは信じてる!でも、こんな格好したことないし……、着られてしまってないかしら」
「そんなことない。今日エスコートできないのが残念なほど可愛いよ、カレン」
アニーに呆れられながらも褒め言葉を口にするローワンはいかにも商人らしい。
「カレン嬢、待たせてしまってすまない。こちらを」
急いだ様子でロビーに駆け込んできた濃紺の騎士制服に身を包んだフランシス様は思わずはっと息を飲むほど美しい。普段の言動も相まって、とても凛々しく頼もしい。
袖口の赤の縁どりは線の数や模様で騎士の中の階級がわかるらしいが、私にはまだわからない。
フランシス様に差し出された小箱の中には煌びやかな宝石のついたネックレス、でも普段も着けられるようなシンプルなものが入っていた。
「カレンに私が付けよう、お預かりしても?」
「あ、あぁ」
ネックレスを着けた私を見て真っ赤になったフランシス様の気持ちを察せないほど鈍くない。これまでフランシス様に言いよった女の子は居ないのか、逆に心配になる。
「カレン嬢の初舞台が私のエスコートで申し訳ない……。ただ、必ず守る」
フランシス様って、もしかしてワケありの貴族?令嬢たちは「フランシス様のお手を煩わせるなんて……」とか言っていたけど、どういうこと?
頭の中は疑問だらけのまま、フランシス様のエスコートでお茶会会場に突入していくことになった。
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