第14話 ヒロインは騎士に助けられる

振り下ろすのが余りに遅かったからか、振り上げられた手は私に届かず、赤の縁どりがされた制服の人に振り上げられた手が掴まれた。


茂みに手を突っ込んでそれができる勘と思い切りの良さに感心した。茂みに手を突っ込んだら痛いという簡単な想像するをしながらも、思い切れる強さがあるのが騎士なのかもしれない。



「なにをしている?」

「そのお声は……フランシス様?!」

「私たちは礼儀を知らない平民を躾ていただけです!」



この方と縁があるのか……と考えかけてやめる。そもそも平民、それも貧しい村出身の生徒を助けるような物好きは少ない。


中庭の状況をたくさんの人が見かけて、クスクス話していたのを聞いて動いたのがフランシス様だけだったのだろう。



「この学園の規則に暴力は許されていない。それぞれ階級差があれど、今は学生同士。お互いを尊重し合うのが学生の務めだ」



素晴らしいほどにテンプレート真面目騎士のご回答をありがとう。

正論故に貴族令嬢たちは黙り込むが、フランシス様の今後のためには一つもなってない。もっと柔らかく、貴族的に説得できればこの方も敵が少ないだろうに、と余計なお世話なことを考えてしまう。


いや、真面目で優秀、そして平民にも平等な騎士のブランドは守ったのか。



「も、申し訳ございません」

「失礼いたします!」



蜘蛛の子を散らすように貴族令嬢たちが散っていく。あーあ、もう少し喋らせて、主犯を聞きたかったのに残念だ。


まあ、そういうのはまだ早いってことかしらね。



「怪我はないか?カレン嬢」



令嬢たちが散って行く様を見届けるなり、フランシス様は私に手を伸ばす。

一瞬、ロマンチックなことを想像したけど、この真面目な騎士様に限ってそんなことがあるわけもなく、ハンカチで私の頬についた泥を拭ってくれた。

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