第12話 ヒロインはドレスを贈られる
お茶会騒ぎから私は落ち着かない日々を過ごしていた。それも当然、あの貴族からしても高嶺の存在であるジョシュア様からお茶会に誘われて断ろうとした不届き者として有名人だ。
「落ち着かないな」
「ごめんなさい」
「いや、あの場で取れる最善だったよ。正直、僕らじゃ、なにかあったときに庇いきれないから」
「そうなの……。ローワン、あのときはありがとう」
柔らかく微笑んでお礼を受け取ってくれるローワンは、アニーの友人だけあって本当に良い人だ。
ニヤっとおどけるときに浮かべる笑いに切り替えたローワンは人差し指で頬を指さした。
「お礼は頬にキスとかで良いよ」
「カレン騙されるな。やつは可愛い女の子からキスが欲しいだけだ」
「アニー、先に言っちゃわないでよ!」
もはやローワンがおどけてからアニーに叩かれるまでがセットの様式美をやっている2人に笑う。
用事があるらしく先に帰るローワンを見送ってから、寮の部屋に戻ったら私の部屋が箱置き場になっていた。
寮の部屋、特に狭いわけではないベッドと机とクローゼットがある至って普通の部屋の真ん中に大きな箱が陣取っている。他にも小さい箱がいくつか置かれていて、急に部屋が狭苦しい。
「え?あぁ、あれか」
私の部屋で個人的なお茶会こと、マナー教室をやってくれる予定だったアニーが箱の上に置かれた手紙を見てため息をつく。
「ったく、災難だったな。貴族の喧嘩に巻き込まれるなんてついてない」
「こんな高そうなの貰って良いのかなぁ」
「相手からしたらたいした値段じゃないだろ、既製品だしな。慰謝料だと思って貰っておけば良い」
昼のお茶会用ドレスだから見た目はワンピースに近いけど、布が明らかに違う。風になびいて広がる赤のスカートが美しい。
「きれい」
「悪くないな。衆目の場で宣言しただけある」
ローワンから、ジョシュア様の希望を叶えるために側近の2人が融通をきかせた形と聞いた。
服飾品とエスコートを衆目の場で宣言して分担することで、愛妾や恋人関係ではないと公言して私のフォローをしてくれたらしい。
ただ、騎士の仕事一辺倒で女性経験も少ないフランシス様には難しそうと見たからローワンがフランシス様が断っても問題ないように割って入ったらしい。
うう……。やはり正妻にはなりたくない。私はその場でそこまで考えて動くような日常を過ごすために頑張ったわけじゃない。
目指せ第二夫人!と決意も新たにアニーのマナー講座に臨んだ。
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