第11話 ヒロインは騎士様に憧れる
「なにを……?!」
エリオット様の言葉からいち早く現実に戻ってきたのは「私をエスコートせよ」と指名されたフランシス・アレンだった。
「私は
「だ、だが!」
「それとも、フランシスはお茶会に怯えるいたいけなレディの手も取れないと?」
予想外の事態に反応が取れない。フランシス・アレンを狙うつもりは微塵もないのに、エスコートなんてされたくない。
いくら学内とはいえ、お金もない平民をエスコートするなんてフランシス様も勘弁して欲しいだろう。
私もそこまでの危険をおかしてまでフランシス様と仲良くなるつもりは無い。
「ギタレス伯爵令息エリオット様、このローワンに発言をお許しいただけないでしょうか」
沈黙していたローワンが流れる動作で貴族向けの挨拶を述べる。
「もちろんだよ」
「カレンのエスコートは私にお任せいただけないでしょうか。ミラー商会の倅として、その腕前を披露する機会をお与えください」
「……待て、私がエスコートしよう」
先に行動したのはフランシス・アレンだった。驚いて棒立ち状態になっている私の前で膝をついてそっと手を取ってくれた。
長い前髪の向こう側から、赤い瞳が私を映して細められる。真っ直ぐに私のことを見上げるフランシス様は私が初めに抱いた印象通り真面目で誠実な方なのだろう。
まるで物語の騎士様に話しかけられているような、そう、まるでお姫様にでもなったようで、一気に頬が上気する。
「カレン嬢、お茶会であなたの手を取ることをお許しいただけないでしょうか」
「は、はい」
慣れてなさそうな微笑みを一瞬だけ浮かべると、手の甲に口付けをして殿下の近くに戻って行った。
「この通りだ、ローワン」
「またの機会にいたします」
「期待しているよ」
ローワンと会話をしながらも、口元を隠しもせずに釣り上げて笑っているエリオット様と、面白いものを見たと言わんばかりのジョシュア様を見て、楽しい気分が一気にしぼんだ。これはフランシス様に対する貴族的なイジメなんだなと察した。
本命になるつもりはないけど、好意的に思ってもらえるのは私の人生にプラスだ。全力で頑張っていこう。心の中で密かにお茶会へ気合いを入れた。
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