第10話 ヒロインはお茶会に誘われる

講義も新しいことがたくさんで、アニーやローワンと通して、友だちも増えて……


調子がいいと思ったらすぐこれだ!!


目の前でその馨しいご尊顔を多分に輝かせた王子様が手紙を私に差し出した。



「1週間後、生徒会が開催するお茶会に来てもらえないだろうか?」



疑問形だが、一切断らせる気がないのが明確だ。なぜなら今いるのは人通りの多い廊下で、それもジョシュア様ご自身で誘ってくれた。


これは断っても、応諾しても身が危険だ。


まあ、でも、これはまだアニーに習ってないし、多少は予想外の行動をしても良いわよね?

アニーもまさか個別に王族がお茶会に誘ってくるなんて想定してない。



「お誘いいただくのはとても嬉しいのですが……、その、私はお茶会に参加できないです。マナーも、服装もわからないですし。ご迷惑おかけしたくないです」



まさかの断り文句にザワつくが、常識ないからキラキラしい場所にいけませんって自己申告するいたいけな庶民に興味持つ同情してくれるようなお貴族様はいないのかしらね。



「殿下からの誘いを断るなんて……」

「仕方ないわ、貧乏人にドレスなんて用意できないでしょう?」



ザワつく声を拾うが有望物件は見つかりそうにない。こんなに目立ったのに残念だ。


少なくとも、隣で驚きつつも納得していそうなローワンと、引きつった顔をしているアニーは理解してくれてそう。


流通を抑えているだけあって貴族にも一目置かれる2人が味方になってくれたのは大きい。

この2人がわかっていてくれるなら、噂はどうにでもなる。常識があるはずがなくて教育中の庶民バカに無理させようとしているのは王子側だ。



「殿下、よろしいでしょうか?」

「良い」

「それでは、私が彼女にドレスを贈りましょう。そうですね、エスコートはフランに任せましょうか」

「なにを……?!」



楽しそうに微笑むエリオット・ギタレスに衝撃の提案をされた。

火の魔法で大爆発が起きたかのように、先程まで騒がしかった廊下がヒヤリと静まった事実がその提案の異常さをこれ以上なく物語っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る