第9話 ヒロインはアルバイトをはじめる

入学式はとても煌びやかで素敵な式だった。魔法で色付けされたカラフルな照明や、登壇する先輩方も麗しい。もちろん新入生代表は先日廊下で私たちを大笑いしたジョシュア様だ。


あのとき、アニーに貴族常識を教えるように言っていた青いネクタイのエリオット・ギタレスは先輩らしく、入学式に生徒会メンバーとして登壇していた。

もちろん階級社会の縮図のこの学園では入学したらジョシュア様が生徒会長、副生徒会長がエリオット様になる。



「カレン、同じクラスだね」

「アニーもローワンも一緒で安心した。これからもよろしくね」

「もちろんだよ」

「付いてくるなら拒まないよ」

「アニーは素直じゃないなぁ。嬉しいくせに」



ローワンとアニーは幼なじみらしく、掛け合いがとても軽くて早い。これに混ざれるように頑張らないと、友だちだものね。



「カレンは部活どうするの?」

「うーん……私はちょっと悩んでいるの」

「どこを悩んでいるの?」

「私、アルバイトをしようと思って」



驚くかと思ったけど、2人は想定していたような反応だった。



「商家出身だとよくある選択だね」

「まあ、その場合は縁のある親元でアルバイトすることが多いかな。アニーのとこはアルバイト受け入れられないだろうから、家で雇おうか?」

「え?いいの?私、働いたことないから本当に迷惑かけると思うけど」

「大丈夫大丈夫!詳しくは今度場所を決めてから伝えるよ」



サラリと笑って請け負ってくれたローワンは仕事のできる商人の雰囲気だ。



「ダメだ、契約書を見るまで安易に頷くな」

「アニー、いくら僕でもそれは傷つくなぁ」

「そうじゃない、カレンの今後のために教えないといけない」



お説教が始まりそうな空気だ。


今回はローワン・ミラーというアニーのお友だちを無条件で信頼している無垢な女の子を演出するために必要だからそうしただけで、契約を即決するような浅はかさはないよ!と言い訳をしたいが、それは私の目指すキャラではない。黙って怒られよう。


本当にアニーはいい子ね!友だちを叱れる子なんて、本当に珍しいわ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る