第6話 ヒロインはメモをとる
私の方に手を伸ばしたジョシュア様を黒髪の生徒が止める。ネクタイは赤、騎士課なら護衛かな。
でも、王子の側近なら伯爵家以上、私が狙いたい辺りだ。できれば、もう少し下の家柄が良いけど、ただあまり下がりすぎると第二夫人を囲うだけの余裕がなくなるから微妙なところだ。
「戯れが過ぎます。知らぬ女生徒によろしくありません」
「自己紹介したから、知人にはなったよ」
「フローレス公爵令嬢に知られたら事ですよ」
「わかったよ、フランは固いなぁ」
物凄く軽い調子の殿下とその護衛に会釈をして、見送る。
護衛の人は第二夫人とかを取らなさそうな真面目な雰囲気の人だったな。頭の中で見込薄な相手として、バツ印をつける。家柄も高過ぎるし、危険を侵して狙う相手じゃない。
それに第2王子は私としてもやめてほしい。私に興味を持ってそうだったけど、彼にはマリアローザ・フローレス、フローレス公爵のご令嬢が婚約者としている。そして、彼女が正妃候補だ。
候補とついている理由は婚約が確定していないわけじゃなくて、ジョシュア様が王太子になるか、第1王子が王太子になるかで、どちらかが臣籍降下するからに過ぎない。
「ギタレス伯爵家エリオットです。カーター嬢はお分かりかと思いますが」
「ええ、心得ております。カレンにも伝えておきます」
さっきの超軽いアレは殿下で、人前でジョシュ様と呼んではいけないとかかな。
「悪い癖です、本当に……。ステノ嬢」
「はい!」
「カーター嬢に色々と学んでください」
「もちろんです!」
「後日、お会い出来るのを楽しみにしています。向上心のある子は嫌いじゃありませんから」
エリオット・ギタレスは合格。家柄も雰囲気も悪くない。清濁併せ飲みそうな人だから、必要なら第二夫人をとるだろう。頭の中で、メモをとった。
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