第5話 ヒロインは自分から追いかけたい
突然あらわれた第2王子に澱みなく返答して、自己紹介のリクエストにも応えられる辺り、アニーの育ちの良さがわかる。
「アンナ・カーターと申します。カーター商会会頭エドの三女です」
「え、ええと、カレン・ステノです!タイニー村から来ました!」
「タイニー村?」
「はい!グロースの森の奥、グラン山脈の麓の村です。特産物はラポールという赤い果実です」
本当ならターゲットの貴族に聞かせたかった自己紹介だけど、他にぱっと思いつかなかったのだから仕方ない。ジョシュア様の側で険しい顔をしている側近が2人もいるんだから、無駄じゃないはず。
「自分の村が好きなんだね」
「はい!私は村のために学園に来ました。たくさん学んで、村の役に立ちたいです」
「そう、それなら確かにあの騒ぎに入るのは得策じゃないね」
「え?えー、あ、あの」
王子様に向かってファンの騒ぎに入りたくないと聞かれてしまうのは、不敬罪と言われてもおかしくない。どう言い訳したら良いだろう。
それも、他の人が良い感情を抱く方向で。どうせなら活用したい。折角、王子の側近というターゲットがいるんだもの。
焦っていて何を言っているかわからないけど、悪い子じゃなさそうという評価を狙いに行く。
「あの!私は!遠目に見てもよく分からないから、だから会う人のことをきちんと知りたいと思っています。だからアニーのことも、ジョシュ様のことももっと知りたいです。
綺麗に見える真っ赤なラポールだけじゃなくて、見た目は黄色のラポールでも、とても甘くて美味しいのもあって、それは、あの、その、それで、あれ?」
「あははっ!!うんうん、カレンはいい子なんだね。ラポール、好き?」
「はい!特にラポールで作るコンポートが好きなんです」
「そっか、カレンが認めるラポールは本当に美味しいんだろうね」
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