第4話 ヒロインは王子様と出逢う

順当にお友達となったツンデレのアニーに連れられて、寮に向かうことになった。うんうん、良い具合に進んでいるわ。



「へえ、カレンは村のためにここに来たんだ」

「うん!みんなの生活をもっと良くしたいの」



アニーはいい子ね。ちょっと変わっているけど。でも変わってないと貴族や金持ちだらけの学校に通っている庶民の友達にはなってくれないから、アニーが少し変わっていて助かっちゃった!


学園の建物はどれもこれも、村役場よりも大きな建物ばかりでびっくりする。一々、態とらしく驚くのも面倒くさくなってきた、が、どこで誰が見ているかわからないから気は抜けない。



「なんの騒ぎだろう?」

「あー、恒例行事でしょ。王子様よ。ジョシュア・プリンス、我が国の麗しの第2王子様、部活に行くために寮から出れば毎回毎回あぁやってファンが騒ぐの。殿下が寮に来てから2週間も、全く飽きないよねえ」

「す、凄いんだね」



貴族の子女は淑女だなんて誰が言ったんだが、キャーという黄色い声だけじゃなくて、うぎゃーとかうぉぉみたいな野太い声も混ざっている気がする。



「見てく?」

「ううん、私は良いや。同じ学校ならそのうち見かけるでしょう?」

「それもそうだ。にしても意外だなぁ」

「だって、王子様なんて別世界の人だもの。そこまでして会わなくても、お祭りで肖像画を見れるわ。それに、普通に暮らしていてそんなに見られていたら王子様も可哀想じゃない。私なら嫌だなぁ」



本音を言えば、王子はターゲットじゃないから見に行く必要がないというのが本音だ。王子の場合、庶民の私が狙う位置は愛妾になる。そういうのは普通、学生時代から抱えるものじゃないし、今は正妃候補のご令嬢も通っているから下手に向こうに目をつけられたら文字通り首が飛ぶ。


王子を狙うのは卒業までに他に良い相手を誰も見つけられなかった場合、王宮に就職してから勝負すると決めている。

それに、そういう場所に行く女の子はある層に敬遠されるから進んでいくとは思われたくない。



「あはは!肖像画で見られるか、いいね、その発想!あの子たちに聞かせてあげたいよ」



横合いから大爆笑されて、思わず振り返った。誰?とでも聞こうと思ったら、彼らの顔を見て、一瞬、嫌な顔を見せたアニーが膝をついて挨拶を述べた。


膝をつく挨拶……?


そんな挨拶をする相手は王族だけ、そうなると、まさかのご本人登場か!

王子様には興味ないんだけど……。でも、そんな事故で私の本性暴かれるのは御免よ!膝をつく挨拶、アニーの仕草を見よう見まねでやろうとしたら、笑っていた彼に制止された。



「挨拶は要らないよ、どうもはじめまして。僕はジョシュア、どうぞジョシュ君とでも呼んでくれ。君たちの名前は?」



王子様あなたに名前なんて覚えられたら危ないから、聞かれたら困る!!と叫びたい気分になった。

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