第3話 ヒロインはお友達と出会う

目の前に大きく開く門に圧倒されて見上げてしまう。

……純朴な田舎娘を演じる。純粋に感情を表現するのが、お貴族様からしたら幼稚で、自分でなんとかなる相手と感じるのだから使わない手はない。


今日の私は気合いが入っている芋くさい田舎娘、2つ結びのお下げにアレンジなしできっちりと着こなした制服。

手元には大きなトランク。トランクは古めかしい木と皮でできた母親が使っていたものに、ピンクのリボンをつけて可愛らしさをアピールしている。


完璧ね。


横を抜けていく馬車のいくつかには私が狙うべき獲物が乗っているに違いない。



「新入生かな?」

「は、はい!」



声をかけてくれた門衛すら、良い家の三男四男の可能性がある。男爵や騎士爵の家ではこうした仕事につくことが珍しくないと聞く。

でも、平民も成り上がってくる階級だから、伯爵辺りから上にはバカにされるらしい。


正直、家で楽させてくれるなら階級なんてどこでも良いのよね。あまり高過ぎると、嫉妬やら本来の婚約者やらが出てきて面倒だもの。



「歩いてくるなんて珍しいなぁ。アニーみたいだ」

「アニーさんですか?」



おっと、私には先客がいたらしい。王道のヒロイン演じようとしていたせいか、同じことをした人がいたのね。



「アニーは商家で、本来なら馬車で来れるはずなんだけど、馬車を降りるのがバカバカしいと歩いて来たんだよ」



それはかなり変わっている。でも、そういう変わっているけど、実は常識も持ち合わせている子は御友達サポートにピッタリだ。


これぞ、良いめぐり合わせって感じじゃない?



「おい!マックス、勝手に人のことをペラペラ話すなよな」

「ごめんって、アニー」



マックスと呼ばれた門衛が話しかけた先には噂のアニーがいた。真っ赤な髪を高くポニーテールにして、如何にも気が強そうなつり目の女の子。最高じゃない。


ぜひお友達になりたいわ。

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