第2話 ヒロインは物語を空想する

安い紙で作られたノートを出して貴族が想像する囲い込みたくなる庶民の女の子像を書き出す。

次に、庶民が考える貴族へ成り上がっていくお姫様ストーリーを書き出す。


これを噛み合わせて自分のキャラ作りをして、学園に望まないと。このままの村での私じゃ、目標の貴族を落とせない。

ガリ勉が好まれるのは40より上の教師関係の人にだけ。同年代や若い人に好まれるのはガリ勉じゃ難しいのだ。



「ふう、今後を左右すると思うと緊張する」



姫様ヒロインは頑張り屋で、貴族社会を知らないから純粋無垢で、貴族らしい企みから無縁。それ故になんでも相談して言える存在。そして、簡単には手折られない強さはあるけど、傷ついたり泣いたりしたときは自分に頼ってきて何とかできる相手。

見た目は素朴だけど、磨けば光りそうなちょっと垢抜けない可愛らしい系。目立たない髪色だと尚良い。こんなところかな。


次に成り上がりストーリー。これは吟遊詩人が語る歌から大きく外れない方が良い。その方が親しみやすいものね。


努力家の女の子が家族や友人のために必死で勉強して良い学校に行くと、貴族やお金持ちにいじめられる。それでもめげずに努力を続けていたら、王子様ヒーローが目に止めて、助けてくれるようになる。

仲良くなって王子様ヒーローの心の傷を癒せるようになった二人は恋に落ちるけど、身分差が立ちはだかる。女の子は相手のために身を引こうとするも、王子様ヒーローは本気で迎え入れられるように親を説得する。そして、卒業後はめでたしめでたし……っと。



「私はようやくスタート地点に立ったのよ」



絶対に負けるものか。私の物語はここからが勝負だ。そうと決まれば、服装も髪型も合わせないとね。制服になる前の服で、印象はかなり左右される。清潔感と花の香りは必須よね。


今日の洗濯には花を入れましょう。染色成分がないものを選ぶように気をつけないと。


気の強さを表すように高く結っていた髪を2つのお下げにしよう。そう決めて、村の雑貨屋に走った。

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