お散歩
「お散歩行こう!」と靴を履いたり,コートを着たりして,準備をしていると,ちょこちゃんも玄関までやって来て,訴えるような目で私を見上げる。
[お母さん,私も,行くんだよね?この可愛い私をまさか置いていかないよね?]
ちょこちゃんのリードとハーネスを出すと,連れて行ってもらえることがすぐにちょこちゃんに伝わり,コロンとお腹を見せて,更にアピールをする。
[早くつけて!早く,早く!]
ハーネスとリードをつけると,喜びのあまり,飛び跳ね回る。
しかし,ちょこちゃんは,お散歩が大好きなのに,小さな体がその大好きな気持ちについていかない時がある。散歩の途中に力が尽きて,歩がなくなる時がある。引っ張っても,声をかけても,座り込んだまま,はぁはぁと舌を出して,荒く息をする。
こういう時は,幼い子供のように抱き上げ,うちの玄関まで運んであげる。
ところが,ちょこちゃんは,超小型犬だから,年中散歩できる訳ではない。春と秋の天気の良い日にしか外に出られない。自分の体の弱さを知らないちょこちゃんは,この時によく戸惑いを覚える。
子供と防寒具を着て外へ出る準備をしていると,ちょこちゃんがやって来る。
「ちょこちゃん,今日は寒いからごめんね。暖かくなったら,またみんなで行こう。」
と私が謝る。
でも,ちょこちゃんは,そう簡単には諦めない。得意のコロンをして,お腹を見せて来る。
[こうしても,ダメ?]
「じゃ,ちょこちゃん,行って来るね!またね!」
と子供を抱いて玄関を出ようとドアを開ける。
[嘘!本当に私を置いていくの!?この可愛い私を!?嘘でしょう!コロンまでしたのに!]
ちょこちゃんが信じられないような顔をする。
私が玄関を閉めると,ちょこちゃんが縁側へ移動し,私と子供の様子を伺う。
[マジで,置いていきやがった…信じられない…。]
ちょこちゃんが涙を堪えているような淋しい目で私と子供を見る。そして,諦めて,寝る。
帰って来て,「ちょこちゃん,帰ったよ!」と呼びかけても,拗ねて,姿を見せてくれない。
だから,お留守番のご褒美に,おやつを用意し,機嫌を取る。仕方がない。
だって,ちょこちゃんは知らないんだ,自分は犬だっていうことを。
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