第39話

「な、何言ってるんだよ小春。好きにしていいって……どういう…………」


 悠斗くんは私の言葉を聞いて少し戸惑っている。

 

「言葉通りの意味だよ。私、悠斗くんになら何されても良いもん」

「そ、そんな事言うなよ」

「お願い」

 

 私は悠斗くんの胸におでこをくっ付けて小さく言う。

 もしこれで悠斗くんにダメと言われたら、悠斗くんにお礼ができなくなっちゃう。

 だから、どうしてもこのお願いだけは聞いてほしかった。

 これ以上ない我儘。

 悠斗くんがこれで満足してくれるとは思ってない。満足するのは私。

 悠斗くんは私にそんなことを言うなと言ってくれた。悠斗くんにお礼がしたいなら悠斗くんのお願い、言うことは聞かないといけない。

 けど、そう思ってても、『お願い』と言ってしまった。

 私って――――最低だな。


「どうして急に、そんな……」


 悠斗くんは私の両肩に手を置いて顔が見えるまで押した。

 

「実はね。さっき友達と電話をしてて、どうしたら悠斗くんに、彼氏に今までのお礼ができるのかなって相談してたの。そしたらね、手料理を振舞ってあげたら? とかね、彼氏と一日一緒に居てあげたら? って言われて、でも手料理は毎日悠斗くんに食べてもらってるし、同棲してるから毎日一緒にいれるから。それ以外でって言ったらね」


 私は歩夢ちゃんと話た事を悠斗くんに説明していく。


「えっちな事をしたら? って言われて」


 私は胸の前で両手をもじもじとさせながらそう言う。


「でも、万が一その……赤ちゃんができちゃったらって思って。それを言ったらね、友達が避妊具を使えば大丈夫だって。コンビニに売ってるからって」

「だからさっきコンビニに行きたいって言ったの?」


 私は頷く。

 

「私、その……初めてだから、やさし――」

「ねぇ」


 私が最後までいう前に悠斗くんがそう言葉にした。

 

「小春からのお礼、俺が決めても良いかな?」

「え? 勿論、良いよ」


 今まで私の我儘やお願いを沢山聞いてくれたんだもん。何をお願いされても応えないと。


「ちょ、ちょっと小春! 何で服脱ごうとしてるの⁉」

「え? えっちするときって服脱がない、の?」

「べ、別に俺は小春にそう言ったことはお願いしようとしてないよ!」

「え、え⁉」


 つい私は悠斗くんにえっちな事をお願いされると思っていた。

 は、恥ずかしい……


「じゃ、じゃあ悠斗くんのお願いって、何?」

「俺のお願いはね、今日一緒に寝ない?」

「え? でも毎日一緒に寝てる……」

「違うよ。一つの布団に二人入って寝るの。ダメ、かな?」


 悠斗くんが私にお願いしてきたのは添い寝。

 もしかして悠斗くん。私が悠斗くんのお家に来た時に私が言った事覚えてて……


「そ、それで良いの? 他にも良いんだよ?」

「それで良いよ。小春と近くに居られるだけで十分幸せだから」

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