第15話 絶体絶命

 まずい。考えが甘かった。


 周りには他にも複数人の警官がいて、他の一般人にも似たような内容を告げ、顔のチェックを行っているのが見える。


 竹下通りはほぼ直線上にできた通りだ。入り口や出口の数は数えられる程しかない。そこさえ抑えてしまえば、通り内で見つけられなくても出口で取り押さえられる。ずっと黙り込んでいても不自然なので、感づかれる前に一度引いたほうが良さそうだ。


「すいません。ちょっと買いたかった物を思い出したので、戻ってもいいですか?」


 その警官は以外にもあっさり「楽しんでおいで」と承諾してくれた。命が狙われているのはこっちなのだがなぜだか申し訳ない気持ちになった。出口から引き返す途中、俺はスマホを開き、カメラアプリを起動する。写真を撮るためではない。インカメにして後ろの警官たちの様子を伺う。



「やはりか」



 先程の警官の周りに他の警官たちが集まってきている。その中のひとりはスマホを片手に俺たちを見て何かを照らし合わせている素振りを見せ、そしてもうひとりは俺たちを指差している。どうやら感づかれたらしい。比べているのはおそらく、俺達の服装だ。原宿に来て一番はじめに入ったファッション雑貨店経由で俺たちの今の服装までたどり着いたのだろう。気がかりなのは、全員がサングラスをしていること。



「追ってきているね。どうする?光くん。」


「大丈夫。このまま近づいてきてもらおう」


「でも、撃たれるわよ?」


「いや、彼らは撃たない。というよりも撃てない」


「どうゆうこと?」


 

 俺がこの場所を選んだ一番の理由、そして俺の秘策、それは、一般人を盾にして遠距離、中距離射撃を防ぐためだ。警察も自衛隊も公的機関。だったら一般人を巻き込む可能性、大いにあるこの場所で銃は使えない。ならば必然的に近づいて俺たちを捉えに来るはず。彼らを目視できる距離まで近づけさせれば、朱記さんの能力で記憶を書き換えることができる。



「もしかして光くん。彼らに近距離戦までもってこさせて、僕の能力でこの場を回避する算段かな?」


「さすが朱記さん。全くそのとおりだ!頼んだぞ」


「ごめん!無理だー!」


「え?」


「僕の能力は相手の目を見なきゃ発動できないんだ。言ってなかったっけ?」


 え?この人マジで言ってる?なんでそんな大事なことを黙ってたんだ!


 代案よろしく~と陽気な感じで言う朱記さんを本気で殴ってやりたい。敵はもう背後まで迫ってきている。どうする。このままじゃ本当に捕まってしまう。まだ解決策はあるはずだ。考えろ。この状況を打破するには、朱記さんの能力が必要なのは絶対だ。だが相手のサングラスが邪魔だ。静流の能力を使って全員分のサングラスをはずさせるか?いや、いくら能力を使った静流でも成功する確率は低い。人数が多くて時間がかかる。その間に反撃されたら、素人三人組は終わりだ。応援要請を受けたであろう警官や自衛隊員が前方からも近づいてくる。


万事休すか。そう思ったところで、ある考えが頭に浮かんだ。

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