第10話 きちゃった♡
「たっだいまー!!」
「な、なんで?!」
「なんでってお世話になる約束をしたじゃないかぁ!」
お世話になるってそういうことかよ!まあ、もう会えないとおもっていたから、こちらとしては一安心?なのか?というか静流も朱記さんもどうしてこんなにテンションが高いんだ?
「きちゃった♡」
そう言って朱記さんは手をグーにして頭に当て、テヘっと舌を出した。
「・・・できればそういうセリフは女性から聞きたかったな。」
チラっと俺は静流を見る。
「いやいや、そうじゃなくて。」
「ん?」
「研究所、破壊してきちゃった♡」
「はあああああああああああ???!!!!」
彼らは、一度俺と別れた後、彼らの研究を行っている研究所に戻ったという。
「もともと私達に外出許可が出ているのは今日までなのよ。」
「でも、研究所に戻ったら私達はまた実験体に逆戻りなわけだからね。あれすっごい痛いし。もう殺されるのは懲り懲りよ。だから、逃げてきたってわけ!」
やれやれといった感じで静流は肩をあげる。殺されるくらい痛いということか。想像もしたくないな。彼女たちが今まで何度も苦しい実験に付き合わされたのはわかった。一時的とはいえ、それから開放されたんだ。テンションが上がるのも当然だが。
「ということで、僕らはめでたくお尋ね者だ。研究所から逃げる時中枢機関をいくつか壊してきたからね。追っ手が来るとしたら、明日以降になると思う」
そのつもりでよろしく!とあくまで他人事のように呑気な感じで朱記が言う。そのつもりって、どのつもりだよ。
「私達と同じ“神の子”が追手として来ることはまずないから、安心して。」
「来るとしたら警察か自衛隊員だ。発泡許可も当然得ているだろう。僕と静流は顔も割れているだろうし。」
発砲許可?!無理無理!!死んじゃうじゃん!なにが安心してだ。
「というか発砲だけじゃなく絞殺や暗殺など、色々な手段で殺しに来るだろうね。」
「でも大丈夫よ。私達のどちらかが死んだら、どちらかは殺されないから。」
「どういうことだ?」
「私達と同じ“神の子”に、死者を蘇らせる能力がある女の子がいるのよ。蘇らせられる人数は、一日一人が限界らしいけど。」
なるほど、一人を殺して、生き残ったほうを戦意喪失している間に捕らえる。その後に死者を蘇らせる能力をもつとされる神の子が、死んだ一人を復活させる。ということか。神の力とやらを使える人間が何人いるのかはわからないが、生け捕りが条件であることから推測する限り、人数はそう多くないらしい。というか
「俺は?!見つかったら俺はどうなっちゃうの?!」
「僕たちに協力しているのがバレたら、問答無用で殺されるだろうね~頑張れ!」
「全然大丈夫じゃねえじゃねえか!!」
頑張れ!じゃねえよ!!まじで!!相手は警察や自衛隊、さらには発砲許可もでている。逃げようがないじゃないか。
「ということで、光くん。なんとかしてくれ。僕も静流も頭の出来はいい方ではないからね。僕たちの能力は把握済みだろう?いいように活用してくれ。」
「無理!無理だ!警察だぞ?自衛隊だぞ?敢えて悪い言い方をすれば国家公認の殺し屋部隊だ!」
朱記さんの能力は対象者の記憶を操作できる。静流は少しの間透明人間になることができる。どちらも戦闘タイプではない。ダメだ。積んでいる。
「でもこのままだと、あなたはただ殺されるだけね。私達もまた実験体に戻ってしまう。麻酔も射ってもらえず、メスで皮膚を開かれ・・・」
「ああああ!!痛い、痛いよ~助けてくれ~光くん!」
静流たちは今までそんな辛い思いをしていたのか。文字通り死ぬまで実験され続けていたのだろうことは容易に予想できる。死んだら能力によって復活させられて、何日か経ったらまた実験台に戻され・・・俺だってできれば静流や朱記さんの助けになりたいし、死にたくもない。ただ、打開策が思い浮かばない。
「やっぱり、国が絡んでいる公的機関から逃げ切ることなんて・・・」
国、国家、公的機関、警察、自衛隊・・・
「いや、もしかしたら・・・」
もしかしたら逃げきれるかもしれない。ただ、逃げ切れたとしてもその先はどうする?いや、そうだな。とりあえずは明日を乗り切ることに専念しよう。
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