第7話 もちろん俺らは抵抗するで?
「おい、全部お前のせいだからな。」
ドスン、ドスンとおれは彼の肩を軽く拳で打つ。肩パンだ。でも彼は、何の反応も示さない。それどころか表情一つ変える素振りを見せない。いつもの微笑みを浮かべたままだ。それに苛立ちを覚えた俺は、リズムを刻んで彼に拳で畳み掛ける。
「俺の!金を!返せ!」
「光くーん!なにやってるんだい?早くこっちにおいでー!!」
少し遠くで朱記さんが呼んでいる声がする。今いくよー!そう返して俺は、メガネを掛けた白いスーツ、白い髪、長い白ひげが特徴の男性に背を向け、小走りで彼らの方へ向かった。
今、俺達が向かっているのは、町外れの廃校だ。もちろんその目的は、「神の力」を証明してもらうため。しかし今は真冬だ。このまま、歩いて町外れに向かうには寒すぎて耐えられそうにない。風も強く、耳が痛い。
「なあ、神の力で暖かくしてくれないか?」
「バカ言わないで。できるわけないじゃない。バカ。」
ええ、二回もバカと言われたんだが。仕方ない。寒さくらい頑張って耐えるか。それにこのまま歩けば、身体が暖かく感じるようになるかもしれないしな。
「ところで光くん、僕が最初に君に神様を信じるか聞いたのは何故だと思う?」
「もう質問形式は勘弁してくれ。朱記さんはたまに怖いんだよ。」
「はは、すまないね。僕はどうにもこういったまどろっこしい言い方をしてしまうのが癖みたいなんだ。」
そう言って朱記さんは俺にあんなことを聞いた理由を説明してくれた。それは遺伝子レベルで神の記憶が俺たち人間に根付いているということを理解してもらうためらしい。やっぱりなんだかまだしっくりこないが、彼が先程言っていた、お地蔵さんとおっさんの例えなどから、なんとなく言いたいことはわかった気がする。そしてダーウィンの進化論から広げた話もまた、俺に神のことを少しでも信じてもらえるようにと彼なりに理論立てて話してくれたらしい。つまり、人間の中にある内的事象と、人間を取り巻く外的事象から神の存在を証明しようとしたのだ。
「人間という生き物は、自分が理解できないことをバカにしてしまう傾向があるからね。」
確かにそうだと思う。俺も最初はバカにしていたが、彼の話を聞いて少しは真面目に受け取れるようになった気がする。まだ半信半疑だが。
そうこうしているうちに廃校についたようだ。廃校の周りは木々が何本も生えていて、冬だからか、その枝々に葉は一枚もついていない。対象に、雑草は生え放題になっていて長らく誰もここに入ってきていないことを物語っている。太陽が雲に隠れて薄暗いせいか、廃校が漂わせる不気味な雰囲気のせいか、またその両方か、なんだかでそうだ。
「こ、こ、こ、こ、こ」
「なんだ?鶏か?」
「ち、ち、ち、違う!!なんだかここ怖いのよ!!絶対おばけでるでしょ!!」
あんなにツンケンしていた静流がおばけで怖がるなんて・・・かわいいところもあるんだな。いや、もちろん容姿は他を寄せ付けないほどの絶対可憐美少女なんだけど、性格の悪さが容姿を上回っていると思ってたからな。まあ性格の悪さこみでも俺は彼女のことが今でも・・・
「あ?なに見てるのよ?やんの?だったら私の右ストレート、あなたのこめかみにぶちかましてやるわよ」
そういって俺に左拳を向けてくる静流。もしかしてこいつ、天然か?
「大丈夫。おばけはでないよ。それより早いとこ、彼に能力を見せてやってくれ。」
「あ、やっぱりおばけなんてでないのね!知ってた、知ってた。」
やっぱり天然だな。こいつ。そして静流は言葉を続ける。
「じゃっ、光。私を思い切り殴りなさい!」
「ふぁ!?」
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