あのーなんかいい感じにいい感じでアレしてください #2
「な、なんと……こんな小さな御子が……!?」
おっぱいの大きい人が目を丸くしている。
むむっ。
「小官は子供ではないであります! これでもセツの大義に身命を捧げた軍人でありますっ!」
「あ、いやその、すまない。力を疑ったわけではないんだ。ただその、英雄どのがこんなに可愛らしい御仁とは思わなくて……」
むむむむむっ。
むすーっと頬が膨らみそうになる。おっぱいの大きい人はアワアワと慌てだした。
青年が、苦笑した。
「まあ/\、こゝはひとつ、全員が自己紹介と行こうではないか。」
「そ、そうだな! さすがソージューローどのだ! 是非そうしよう!」
シャーリィもこっくりとうなずいた。
フィンもその意見には賛成なので、とりあえずむくれ顔は引っ込めることにした。
……しかし、一人だけ話をまったく聞いてない奴がいた。
「お……お……お……」
フィンは烈火がさっきから一言も発さずにワナワナしていることにようやく気付いた。
「レッカどの? どうされたでありますか?」
「お……お……お……ッ!」
「お?」
「おっぱああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁァァァァァァァァァッッッッ!!!!」
爆速跳躍!! 両手を合わせてそのままおっぱいの大きい人に飛び込んでゆく!!
「生まれた時から好きでしたッッッッ!!!! 結婚してくださいッッッッ!!!! むしろ結根してくださいッッッッ!!!!」
パンツ一丁の大男が初対面の女性に求婚する事案が発生!!
「うきゃあああああああああああああ!?」
カウンター気味に放たれた拳が烈火の顔面を直撃! 鼻血の筋を曳きながらぶっ飛んでゆく!!
ぎゅるぎゅると縦回転しながら大樹の幹に激突! 木片が爆散し、人型の穴が開く!
「うわわっ」
木屑を避けるようにフィンは一歩退く。
「おゝ、見事である。」
ソージューローは面白そうに見ている。
「ぜぇっ……ぜぇっ……はぁっ……はぁっ……」
「リーネどの、感想を一言。」
「な、な、なんだあの破廉恥漢はッッ!! けっ、け、けけけ結婚だと!? フザけているのかッッ!!」
「うむ、同感である。しかし意外な結果だな。小生の見た所、あの男の身のこなしは……」
ばりばりと破砕音。
人型の穴から烈火が這い出てくる。傷らしい傷なし!!
「ぶはぁっ!! ふぃー、すまねえな頭が冷えたぜ」
猫のように頭を振って木屑を飛ばしつつ、烈火は着地。
野性的な顔に眩く爽やかな笑みを浮かべる。
「ついつい迸る本音をいきなりぶつけちまったぜ。驚かせちまったかい美しいエルフのお嬢さん。俺様は黒神烈火っていうしがない超天才だ。良ければあんたの名前を教えちゃくれねえかい? あとついでにバストサイズとカップと安全日も」
烈火の股間にハルバードの石突がめり込んだ。
「アギョワゴゴギギュアアアゴアッッッ!?!?」
のた打ち回る烈火。
「うううぅぅぅぅぅぅぅ~ッ!」
顔を真っ赤にして涙を浮かべたリーネが、ハルバードの柄で烈火の身を何度も打ち据える。上腕に擦れてぶるんぶるん震える胸元。
「アッ! ちょっ! ギャッ! 痛ッ! ちょっ! 待ッ! ぐぇッ!!」
「君はどう思う?」
「へっ!?」
いつの間にか隣に立っていたソージューロー氏が、なにやらフランクにフィンに語りかけてくる。
「小生の見た所、あの半裸――黒神烈火の実力は、細かい動作の端々から推察するに、凄まじい領域にある。力、速さ、技術、耐久力、すべてにおいて人間の限界を遥かに超越してゐる。にもかかわらず、リーネどのには手もなくボコ/\にされてゐる。これは――どういうことなのだろうね?」
「リーネどのが、それ以上に強いのでは……」
「それはないな。彼女の戦働きは実際にこの眼で見たし、卓越した武勇の持ち主であることは認めるが、黒神烈火にはとうてい及ばん。では黒神はわざと暴力を受けてゐるのか? 被虐嗜好者か何かか? それも何か違う気がするな。あの痛がりようは演技ではあるまい。」
「ええと、つまり?」
「いや、小生にもよくわからぬ。だが、明らかに道理にそぐわぬことが起きてゐるのは覚えておくべきであろう。」
「な、なるほど……」
涼やかな声で理路整然と論ずるこの人としゃべっていると、不思議と気持ちが落ち着いてくる。
それに、こちらを子ども扱いせずに意見を求めてくれたのが、少し嬉しかった。
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