三者三様異世界行脚 #2
七人の妖精たちは、生真面目に空中で直立不動の体勢をとった。
「〈グラッドニィ〉くん! 〈スローサ〉くん! 〈カビタス〉くん! 〈エンヴィー〉くん! 〈アンガラ〉くん! 〈プライディー〉くん! 〈ラスティ〉くん!」
名前を呼ばれた者から順に敬礼していった。
「――セツ防衛機構第八防疫軍第五十八師団第二連隊長付き第一特殊支援分隊総員七名、全員いるでありますね!」
〈グラッドニィ〉くんの帰還をフィンは確認していないが、きっと錬金兵装を使いすぎて意識を失っている間に戻ってきてくれていたのだろう。
戦術妖精たちは五歳児相当の知能を持つが、発声器官が小さすぎて喋ることができないのだ。
「現在、我が分隊は不可解な状況に置かれているであります! まずは周囲の状況の確認が急務であると判断するであります! ただし何が起こるのかわからないので、分散しての偵察活動は危険であると考えます! だから……」
小さな両のにぎりこぶしを胸の前に持ち上げて、にっこり笑う。
「みんなで探検するであります!」
戦術妖精たちは、興奮に頬を紅潮させ、フィンの周囲を飛び回った。
せっかちな〈グラッドニィ〉と〈アンガラ〉は先導するように先へ先へと進み、あくまで任務とそわそわわくわくする気持ちを抑えながら〈カビタス〉と〈エンヴィー〉と〈プライディー〉はフィンの周囲を警戒するように飛び、のんびり屋の〈スローサ〉と甘えん坊の〈ラスティ〉はフィンの両肩に座って足をぶらぶらさせていた。
静かだが賑やかな一団は、かくしてあてどもなく行軍を始めた。
●
パンツ一丁で。
「いやいやいや。いやいやいやいやいやいやいや。おかしいでしょうこれ駄目でしょこれ、なんなんこれ、マジ意味わかんねえよ何なん? ドッキリなん? 寝起きにやれや! それともあれか? 世紀末空間がバグってこの『しばらくお待ちください』的な画像に差し替わった系男子? ないわー、メーカーどこよ責任者出せこの野郎! しかも解除できねえし! ガッディーム! これは慰謝料じゃ済みませんなぁグヘヘ」
このわけわからん森の中に放り出されてからかれこれ三十分くらいさまよってっけど、特に第一村人的ななんかに遭遇することもなく鳥の声や葉が擦れるかすかな音ばかりが延々BGMになっててもう飽きたので独り言を延々くっちゃべっているのであった。
パンツ一丁で。
「あーもうコータどこいったんだよーオイオイまだ乳触りたんねーぞこの野郎しばらく見ねえうちにめちゃくちゃでかくなりやがってやっべ思い出したら興奮してきましたぞこいつぁよぉ!! あーっと! しかしここで超天才たる烈火くんクレバーにもパンツを脱ぐのは差し止めるぅぅぅッッ!! 何故ならドッキリの可能性はまだ捨ててない! 誰か見てるかも! アタイのパンツ一丁の艶姿をどこかの変態が覗いているのかもしれないのよ!! 変態を刺激するようなことしちゃダメ!! でまーぶっちゃけさーこれさーこの状況さー異世界転生じゃねえのこれ? あーこの場合は異世界転移なんだっけ? まぁどっちでもいいよつまりあれだよな俺様が異世界でチートでハーレムってわけだよマジかよ最高じゃん食いまくりじゃん天国じゃんいやーやっぱ日ごろの行いがいいとこんなこともあるんだなぁオイ神様はちゃんと見てる!! ありがとう!! 愛してる!! ところでそろそろヒロインの一人と運命的な出会いイベントとかあってもいいのよ? 烈火くん強いよ? もうマジでガチ強キャラだからね? 天才だからね? 美少女がどんな敵に襲われてようが
それにしてもうるさい男である。
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