13(最終)・運命に爪を立てること
運命。
どんなに人智を発揮し、工夫を重ね、最高の道筋を探究しようとも、迫りくる大きな運命を覆すことは難しい。
人の創意工夫は、天運を真正面からひっくり返すには至らないものです。
しかしながら、私は、それでも工夫を、戦略を、自作が読まれるための計画を、否定しません。
失敗はままあるでしょう。ささやかな英知を運命が押し流すことも多々あります。
現に私は、このエッセイがカクヨム公式にレビューされること以外に、形のある成果を挙げられませんでした。敗北といってもいい。
されど、それでも考え続け、試行錯誤を続けることを、私は決して無駄だとは思いません。
命運に対して突き立てられた、人智による小さな爪は、ときに別の命運を呼び寄せることがあるからです。
流れを押し返すには至らなくとも、少しだけその流れが様子を変え、それが更に何かと噛み合って、やがては大きな後押しとなって我々を押し上げる。
そのわずかな可能性のために、あれこれと考え、実行し続けることを、私は無用の営みだとは思いません。
漫然と運命に流されることを拒否し、その運命の抗いがたさと爪の小ささを理解してなお、迫りくる流れに立ち向かい続けることこそが、物書きの戦いというものなのです。
私はそのために、このエッセイを書くことで思考を整理し、あっちこっち考えを飛ばし続け、ついでに思考の痕跡を残すことで他の誰かの助けになればと、挑戦を続けたのです。
確実に運命をはねのけ、全て思い通りにバズったり大当たりとなる作品を書ける……そんな方法があれば、どんなに楽なことか。
それを夢想しながら、私は到底それには及ばないささやかな工夫を試み続けてきました。
そしてそれは、無力であっても無駄ではないと、私自身は信じ続けます。
ところで。
私は、このエッセイで散々、偉そうに物書きの戦略を語りました。しかし結局のところ前述のように、このエッセイが公式にレビューされること以外に、現在において形のある結果を残すことができませんでした。
創作論または戦略論を語る人間として、当の自分はそのようなふがいない結果であった、ということを心より恥じ入る次第です。
これにてこのエッセイを終了いたします。
ここから先は、当作品をご覧くださった皆様が、運命に爪を立てるために、各々あれこれと考えてください。私の意見が間違っているのであれば、異なる手段を用いるのも、私には止める理由はありません。むしろ可能であればその知見を、私を含む物書き一般に示してくだされば幸いです。
大きな流れにささやかな戦いを挑む人たちに幸あれ。
零細作家が野心のためマーケティングを試みるエッセイ 牛盛空蔵 @ngenzou
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます