02・速く、そして矛盾を越えて

 さて、今日は前回示した問題点のうち、「執筆速度」及び「流行りに合わせること」について語りたいと思います。


 執筆速度は重要。間違いなく極めて重要です。

 一般的な大量生産の商品は、「続きを書く」に類する行為の必要はない――わけでもありません。

 ロングセラー商品も、時代に合わせて改良したり、新しい材料を使ったり、コストカットに成功したり失敗するなどしています。某コンビーフ缶詰の変更についてのニュースは聞いた方も多いのではないかと思います。もっともこれは、マーケティングというより生産機械の都合によるらしいですが。

 ただ、だからといって小説の続きを書く行為が、これらと同じかというと、そうでもないように感じます。

 おそらく、一般的な商品の改良や更新より重要で、性質も異なります。それゆえ、執筆速度が遅ければ、それを工夫でカバーするか、努力によって速筆になるか、どちらかをしなければなりません。

 工夫には、書き溜めをする、各話完結型のコンセプトで書くなどが該当すると思います。


 これについて、一話当たりの文字数を下げれば、「更新の」速度は上げられるという意見もあるかと思います。が、限界もあるのは確かです。見聞きした情報によると、エッセイや各話完結型作品を除けば……だと思いますが、一話一千字を下回ると集客が減るらしいです。そして私の速度では、これでも連載掛け持ちで毎日更新は厳しい。

 とすると、一作は事前に書き溜め、一作は毎日更新を目指しつつ各話完結型で書くといったところが無難でしょうか。

 もっとも、速度の工夫に関しては色々な兼ね合いが考えられます。ある程度まとまった長さの書き溜めで両方とも回したり、字数削減が許されるテーマで書いたり。きっとこれといった正解はないでしょうね、明らかな手抜きを除けば。


 もちろん日頃の、速度を上げる訓練も必要です。じわじわ腕を磨いていこうと思います。ただ、小細工に見えがちな工夫も組み合わせないと、厳しいのは確かです。

 そもそも、ネット小説は供給の速度、またはアップデートの頻度とか、そういったものが特殊過ぎるんですよ。続きを書く行為をどっちに分類したらいいのか、サッパリわかんねえよ……。速いほうがだいぶ有利というレベルでしか分からない。私は研究者ではないので、それ以上論じる意味もないですし。


 そして、流行りに合わせることがよいことか否か。

 ここでは芸術や文芸の未来、マクロやら高尚性でどうこうとかではなく、あくまでマーケティングの観点のみから申しますが、……しかし、この問題も一般的な理論とネット小説とでは違うと考えます。

 一般的には、未開拓の分野を拓くこと、例えばニッチや隙間の分野を突いたり、競争相手の少ない市場、「ブルーオーシャン」に商売を向けることがよいとされています。

 しかしネット小説では、皆さんも想像がつくと思いますが、隙間ジャンルでは読者が圧倒的に少ない。競争相手がいないかわり、需要も少ないんよ……。

 というわけで、やむなく競争相手と需要の多い「レッドオーシャン」に飛び込むことになりますが。


 個人的には「競争相手の多いジャンルに飛び込みつつ、競争の少ない要素をメインに据える」が最適解かと思います。


 異議あり! 矛盾だ! これは明らかな矛盾です!


 まあ文芸は論理ばかりではないので、この異議はほっときます。

 しかし、こういった、いわばマイナーチェンジを繰り返し行っていったことが、全体としてのなろう系ジャンルへの批判が起きる一因となっているのでしょう。一種の「合成の誤謬」です。難しくてわけわかんねえな。

 でも気にしない。嫌ならこの市場構造を変えてからどうぞ!

 実際、一個人、イチ作者に言われても仕方がないんですよね。私は構造まで改革するつもりはないですし不可能です。


 具体的に何を書くんだ、って?

 それは作者の機密にかかわるのでお教えできません。い、今から考えるなんて言っていないんだからね!

 ただし、かなり構想を練らないといけないのは確かです。矛盾しているように見えることほど実現も難しいんです。きっと。


 まとめると、


・執筆速度、というか更新速度を高く維持できる方法、例えば書き溜めや字数調整で


・「競争の多いジャンルでかつ競争の少ない要素」を目指して作品を構成する


 といったところでしょうか。

 速度の細かい工夫と、矛盾した構想術こそが正義と信じて!

 次回、また読んでくれよな!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る