第18話 私の相方が雌になってしまった件
「シン。今日はそろそろ休むぞ」
「そうだな。今日は92層までいけたし」
「んじゃあ俺はなるべく離れて……」
「そんなにはなれずともよい。よ、よく考えればシンが近くにいてくれた方が我の憎悪もたまりやすいはずだ。100層で使ったスキル[瘴気の風]があれから一度も打てぬし」
「そういわれると複雑だけど一緒に寝ていいって言うならお言葉に甘えちゃおうかな」
「い、い、いっしょじゃなくて……ち、ちかくで寝るだけだ!」
二人の話を聞きながら就寝準備です。服はまたチユさんがくれたのですが、なぜか新品のような気がします。本人に尋ねてもわたしが好きでしているといわれてしまいました。
「おやすみなさいクロムさん」
私は明日のことを考えながら布を外して就寝しました。
「おはようございます」
耳元で私に挨拶をしてくれたのはチユさんでした。なんでしょうやさしく起こしに来てくれたのはありがたいのですが起きてすぐチユさんの顔が横にある状況は同性でもドキドキしてしまいました。
「あぁありがとうございます」
思わず変な挨拶になってしまいました。おはようございますって言いたかったのに……
「朝食ができているので着替えたら降りてきてくださいね。もちろんこれもプレゼントです」
横の椅子に私のために用意された服がおいてありました。
「チユさんそんなに服をいただいては……」
「気にしないでください。ほんとに趣味なんです。なんというか天使様が私の選んだ服を着てくれることにそしてそのお姿を拝見することにとてつもない喜びを感じてしまいまして」
「チユさんはアルリス教徒の方なのでたぶんそれに近い属性の私に信仰のようなものを持っているんでしょうね。ですが、普通に接してください。アルリス様もそのような信仰は望んでいないはずです」
「私はアルリス教徒としてではなくただサラさんに興味があるんです」
チユさんなんかキャラ変わってません?
「さあさあ、お着替えしましょうね」
はあはあ言いながら迫ってくるチユさんはなんか怖かったです……。
着替えを終えて1階のリビングに降ります。
「おはよー指揮官。今日はフリフリが多い服ね」
チユさんはダンジョンに潜ることを想定した服を私に与える気がないことからも先程の発言の本気度が分かります。
「気にしないでください。というか指揮官って何ですか?」
「昨日の活躍見たらそう呼ばなきゃってウィズと二人ではなしてたのー」
ウィズさんとトーカさんからそのような評価を受けたことに私は多少の嬉しさと能力バレしてよかったのかという不安がフィフティフィフティです。
「そうですか……そのありがとうございます……」
でもやっぱりうれしさが顔に出ちゃいます。だってこういう評価されたの初めてで耐性がないんです。他の皆さんも私の表情に気づいているようでニコニコしていました。
「さ、さあ!今日も頑張って地下の攻略を進めますよー!」
「その前に朝食ですよ。皆さん座ってくださーい」
「あ……すみません先走りました」
チユさんの一言で朝食となりました。朝食が用意されている生活に慣れてなかったのです。
こうして私の新しい生活スタイルが始まりました。
クロムさん達が下から地上を目指し、私たちは地下をなるべく攻略しクロムさん達を救出する。今のところこれ以外に決まった目標がないのが残念ですが頑張りましょう。
二日目
「いやあ、昔幸太郎のとこにいた龍、アリューさんに聞いたんだよ。龍種は絶対に嘘がつけないって」
「なるほど。ようやく合点がいった」
「こんな話でよければいくらでも聞かせてやるぜ」
「頼む。なぜだかわからぬがシンの冒険の話を聞いていると心が満たされるのだ」
「冒険の話ってのはわくわくするものさ」
なるほど、解釈によっては敵の情報を聞き出しているとも取れなくないですね。様子見です。
三日目
「臭くないか?」
「大丈夫だよ。俺は気にしない」
「ああーやっぱ臭いのだな。やはり我はリフレッシュ系のスキル覚えるぞ」
こちら今日のクロムさんとシンさんの会話でございます。あれ?おかしいですね。クロムさんがいつの間にか女子になっていません?体臭とか気にするのが女子力っぽさであると過去の私は力説しました。この説に従うならクロムさんは女子化し始めているのでは?いやいやいやさすがに、さすがにそれはないですよね。ハハハ何ってんだろ私。今日もダンジョン攻略頑張るぞー!
5日後
「もう、我が夕飯作るっていったであろう。おとなしく待っていろ」
「いやいや、さすがに今日倒したモンスターで料理はむずかしいんじゃ」
「いける!そう我の感が告げておる」
「その自信はどこから……いや、まて、わかった。料理をすることを認めよう。ただし
クー、できればエプロン姿で髪を下ろしてやってくれると嬉しいんだが!」
「近いぞ、そんなグイグイくるな。わかったエプロンでもなんでもやってやる。まったくお前という男はまったく……」
まんざらでもない声が聞こえてきます。クロムさんがお料理作るのとか初めて見ますよ。いや見えてないんですけど!聞こえてくる声がやたらと女子なんですが!?いや、あれも作戦のはずです。シンさんを行動不能にするための料理に違いない。私は信じていますよクロムさん!
「お、意外とうまい」
「こら、つまみ食いするでない。きゃっ、後ろから抱き着くな!もう……」
私は布切れを地面にたたきつけました。
7日後
「シン、こら起きろ。まったく我が起してあげているというのに」
「むにゃむにゃ、クーがキスしてくれたら起きれるきがするー」
「ば、馬鹿なことを言うな。シン、昨日のあれは我の気の迷いで……」
「スキアリー」
「ん、んん……もう、強引なんだから」
ダメだ。完全にクロムさんが雌と化しています。さて、どうしましょう。これはシンさんにしてやられました。クロムさんは天界からの指令までゲロっている可能性があります。クーリングオフを使えるのはクロムさんだけ……
以上の状況確認からもうミッションインポッシブルなので天界に帰っていいですか。
はぁ、でもやれることが思い浮かんでしまいます。さすがに5日目時点で少しずつ最悪のケースを想定していました。計画変更です。そのためにまず足の確保と良き仲間を作らなければなりませんね。
いつもの皆で食べる朝食、その前に私は布に触れてもらうよう皆さんに頼みました。
「シン、横になるのはかまわないのだが、その……我動けないんだけど?」
「いやークーの膝枕はやっぱいいな。前もモンスター倒したあとやってくれたのが忘れらんなくてさー」
「我も不思議だ。こうやって上からシンをのぞき込んでいると吸い込まれそうに……ん」
「隙アリだ」
「ばか……」
「というわけで皆さん、シンさんとクロムさんがバカップルになったのを報告させていただきます」
固まったまま動かないトーカさん。
「やっぱりかー」
と多少予感があったのかため息交じりに答えるウィズさん。
「大胆ですね。でも幸せそうです」
と祝福ムードのチユさん。
「あれ?チユさんはシンさんのこと好きだったのではないんですか?」
加護や補正で相当女性に好かれているシンさん。チユさんもそばにいたのでそうなのだと決めつけていました。
「あー私はそういうのはないです。良き仲間だとは思いますが」
そこで私は思い至る。ああ、そういえばチユさんの加護は[完全無潔]。これはあらゆるスキル、補正、加護による自身にとって不利な効果を受けなくする加護でもちろんシンさんの補正も受けていないということになります。
「すみません勝手に決めつけて」
「いいんですよ。気にしないでください……なるほど、そういう勘違いがあったからだめだったんですね」
チユさんはなにやら考え込んでいました。
「ああああああああどうしたらいいのおおおおおおお」
トーカさんが突然叫びました。
「ずっとずっとシンがそばにいるから、だって」
トーカさん混乱中。
「落ち着きなさいトーカ。これを私達に見せたってことはなにか考えがあるんでしょ。指揮官」
さすが、ウィズさん。精神ダメージを受けていてもしっかりとこちらの意図を読んできますね。
「はい、その通りです。私は天使。あなた達に道を示すものです」
「指揮官、なにかいい方法あるのーおしえてー」
トーカさんが泣きついてきました。
「前にも話した通り私はシンさんを元の世界に連れ戻すお仕事があります。ですが、シンさん一人ではもしかしたら向こうの世界では厳しいかもしれない。だからその世界に一緒について行ってほしいのです」
「はい、はーい、あたしいくよー!」
「待ちなさい、トーカ。この世界からいなくなるのよ。ちょっとは考えなさい」
「そうだった。でもシンと一緒だったらあたしはどこまでも行けるよ」
「はぁ、この子は真っ直ぐなんだから……私も別の世界に興味もあるから引く気はないんだけどね」
「はい、お二人がそういうと思って私、少し考えたんです。心して聞いてくださいね」
わかったというお二人の視線がこちらに向きます。
「勇者シンを倒しましょう」
「「「え?」」」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます