第17話 シンさんぬき新パーティ結成
私がシンさん達の家へ戻るとチユさんが出迎えてくれました。
「心配しましたよ。どこへ行ってたんですか?」
「王都は初めてなので興味本位で少し散歩に行ってきただけですよ」
本当のことはさすがに言えません。
「疲れてませんか?ウィズさんも休むように言っていましたよ」
「なぜか元気が有り余っていまして」
ベッドにダイブして思考をまとめながら寝たいくらいです。
「そうですか。わたしがいろいろと案内したかったです……今からでもわたしと」
「いやいや大丈夫です。それよりこの後のことについて話し合いたいので皆さんを集めてもらえますか」
さて、これからどうしたものか。今も布からの音声は聞こえてきますが98階のボスを攻略中みたいですし先は長そうです。
「シン、そのままつき進め!囮は我が努める」
「だめだ!女の子にそんな役任せられない!」
「ええい貴様!女扱いするなといっているであろうが」
「それじゃあ言い方を変える。君に傷ついてほしくない。だから囮は俺が引き受けた」
「うぅ」
布に触れている全員にこの会話は聞こえています。布の説明をした私は皆さんと一緒にリビングで布から流れる音声に耳を傾け現状の把握に努めています。
「こんな感じに二人で地上を目指すべく動いていますよ」
私は簡潔に現状を理解してもらうため3人に会話を聞いてもらったのでした。シンさん達の方針も伝えてあります。、
「うーん……これまずくない?」
「あたしも戦いたかった-」
「無事でよかったです」
三者三様の答えをいただきました。
「ウィズさん何がまずいのでしょうか?」
「いやだってシンとあの子だいぶ仲良くなってない?これこのまま進展しそうなんだけど」
「ハハハ、大丈夫ですよ。クロムさんはシンさんにもかなりの恨みを持っています。クロムさんがシンさんを好きになるような心の隙間なんてあるはずないじゃないですかー」
クロムさんの力の源はそういった怨念の類のエネルギーのはずですからまず大丈夫でしょう。
「それよりも二人が地道に地上を目指していることはわかりました。私たちはどう動きますか?」
「そうね。一応こちらからも迎えに行けるようにダンジョンの攻略を進めるってことでいいんじゃない?一人すごい戦いたそうにしてるし」
「いくかー!ダンジョーン!シン待ってろよー!」
トーカさんはすごく元気ですね。いやぁまぶしいです。
「皆さん頑張ってくださいね。私は陰ながら応援させていただきます」
「あら?何を言っているのかしらサラちゃん」
ウィズさんがこちらをロックオンしてます。
「へ?」
「あなたも来るのよ。当たり前でしょ」
「いや私、何もできないただの非力な一般天使ですよ」
「頭が回るっぽいのよねーあなた。さっきの闘いの時もしっかりチユを無力化していたじゃない」
ハテサテーナンノコトヤラーワタシワカラナイナーって顔をします。
「わ、わたしもサラさんといっしょがいいです」
上目遣いでチユさんがこちらを見てきます。断りづらい、反則なんですよ。ほんとこの子はほんとご自分の武器を理解してらっしゃられる。
「わ、わかりました。クロムさんも迎えにいかないとですし一緒に行きます」
クロムさん回収の際に困るかもしれませんから。
「んじゃ、決まりだね。明日の朝日が昇る頃に出るから、今度こそしっかり体を休めときな。散歩なんていくのはだめよ」
見事にくぎを刺されました。
「は、はい」
こうして私は明日、再びあのダンジョンへ挑むことになりました。うーむ、あまり自由に動ける時間がないのは困りものですね。
翌日、朝起きるととりあえずクロムさんの布に触れます。少し寝息が聞こえますね。まだ向こうは起きていないようです。一応、夜寝る時は外すようにしました。会話や何かを破壊する音とかいろいろうるさくて眠れなかったのです。一応、寝るとき以外はこうやって腕に巻き付けておきましょう。
「サラさーん、起きていらっしゃいますか」
「はい、起きていますよ」
「よかった。朝食の用意ができているのでリビングに来てくださいね」
「わざわざありがとうございます」
朝食、たぶんチユさんの手作りでしょう。少しだけ楽しみですね。
朝食を摂りながら私達はダンジョンでの行動の話をしました。
「あたし前衛がいい―というかそれしかできないよ?」
「わかっています。基本は前衛一人に後衛2人、サラちゃんは好きなとこにいていいわ。全体を見て軽く気づいた点を教えてくれればいいわ。可能ならば戦闘の指揮もやってみてね」
「は、はい」
なんか大役を任されている気がします。
「一応、地下20階層までの攻略が終わっているから21階層からになると思うんだけど……危なくなったら即にげるから煙幕や姿を消すアイテム、幸太郎の超加速するドリンクも各自一つずつ渡しておくわ」
幸太郎さん、さすがですね。それにしてもしっかりと準備をしているとこに好感が持てます。いや、当たり前なんですが、私はなぜか計画を立てる前に状況が迫ってくるんです。
とりあえず皆さんのステータスは一通り見ておきましたがさすが魔王を倒したパーティ、全員が高いステータスを持っています。私の出番はないかもしれませんね。
「では、いざダンジョン入口へ」
ウィズさんのスキルで私達は昨日きたダンジョンの入口へと一瞬で移動しました。
「シン、そいつは任せたぞ」
「おっけー、クー。任された」
クロムさん達は現在96層、90階層あたりの敵はすべて癖が強いようでなかなか進めないと言っていました。
「なんかこうやって背中合わせで戦ってると燃えるな!」
「ばか、今の闘いに集中しろ。わ、我はまだ貴様のことなど」
「貴様じゃなくて」
「シ、シンのことなど……ええい行くぞおおおおおおおお」
「やっぱ、クーはかわいいなあ」
「かわいいとかいうなあああああああ」
クロムさん大丈夫でしょうか。少々嫌な予感がしますが我々もそろそろ21階に到着です。ウィズさんから適当に指示出してみてと言われましたしちょっと頑張ってみますか。
階段を下りてウェルカムしてくれたのは私たちの10倍以上の大きさのきのこでした。
「全員マジックマスク着用してください」
ステータスを見ます。やはり胞子系のスキルが結構ありますね。一定時間呼吸の際有害な物質を吸収するマジックマスクの着用は正解っぽいです。ふむ、弱点は炎系スキルですか。
「ウィズさんは炎系広範囲のスキル[大炎陣]の用意をタイミングは指示します。トーカさんは拳に炎を纏わせるスキル[炎拳]を使用しながら攻撃、私が合図したらスキル、バックステップで距離を取ってください」
「わ、わたしは何をすればいいですか」
「チユさんは万が一攻撃を浴びたメンバーがいたらすぐに対処できるようにしてください。サポート系のスキルは使わずしっかりと場を見極めてください」
私にできることはこんなものでしょうか。他人の情報が見れるのである程度、指示を出す役職に向いていますが、的確な指揮ができているか不安です。
「トーカさんさがって大丈夫です。トーカさんが範囲を外れたらウィズさんお願いします」
私の心配をよそにあっけないほど簡単に巨大きのこは倒せました。スキルの熟練度による威力が違うため普通は何度も攻撃しなくてはならない相手もこの通り数発で終わりです。
「思ってた以上だわ。サラちゃんありがとう」
「すごいすごい。サラの指示通り動いたらほんとにあっさり倒せちゃった」
「わたしは出番ありませんでしたが、自分の役割を理解していると変な焦燥感に駆り立てられなくてよかったです」
みんなして私をべた褒めです。むずがゆい……
「い、いや。私にできることはこれくらいなので」
「あなたもしかして他人のスキルとかが見えるのかしら」
さすがにウィズさんは鋭いです。ドストレートで当ててきます。いや、まあ思いっきり弱点見極めた感じの指揮でしたしバレますか。
「は、はい。私の唯一ともいえる力なので……」
実はもう一つ補正も持っていますがそれは正直、戦闘では役に立たないのです。
「すごい助かるわ。私たちのパーティって高い練度で基本ごり押しなのよ。シンが結構突っ走っちゃうから……」
「確かにそれだけの強さがあれば弱点などを突かなくても基本的に勝てちゃいますしいいんじゃないですか」
「悪くはないけど、それのせいでこのダンジョンでは結構苦労してるわ」
「一癖あるんだよねーここの魔物って。だから単純なごり押しだと結構消耗しちゃうんだ」
「そうですね。毎回バフ系のスキルをかけているのも結構大変で……」
ふーむ、シンさんは女の子を危険な目に遭わせたくないはずなのに、女の子と冒険をしてリスクある戦法を取っている。なんでしょうこの矛盾……今は考えてもしょうがないですね。とりあえず先に進みましょう。
私たちはその後、23層まで制覇しなんとか王都へと帰りました。
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