第12話 ダンジョントラブル
隠しダンジョンは結構な大きさでクロムさんと並んで歩いても余裕があります。それと本来は薄暗いはずのダンジョンですが謎の鉱石の放つ光によって岩肌まではっきり見えるようになっていました。先へと進むとたまに魔物が襲い掛かってきます。それを彼女は遠慮なく刀でぶった切っています。
「クロムさん、魔物は味方ではないのですか?」
「サラ様、奴らは群れを作るタイプでなければ魔物同士でも普通に襲い合っていますよ。よって私が味方と認識されることはないでしょう。それに人間達も結構な頻度で人間同士の争いを繰り広げているではないですか。我から見れば同じようなものです」
「なるほど」
女バージョンのクロムさんはいつものクロムさんの時と思考が微妙に違う気がします。形が変わると考えも変わるのでしょうか。そんな他愛のない話をしながら半日ほどが経ちました。ダンジョンの構造としては基本的に1本道で魔物がたまに出る程度、階層の終わりに開けた場所があり本来そこにはボスみたいなのがいると推測されます。私達が来たときには下へ降りる階段があるだけの広場みたいな状況です。
「もっといろいろ持ってきておけばよかったです」
ダンジョンに潜るにしてはあまりに用意が不足していました。今は小休憩中で私はその辺の岩に座りながら独り言ちていました。そんなちょっと気を抜いていた時に
「ッ!」
近場からおそらく女神さまから与えられたと思われる天界の力の気配を感じ取りました。
「外来種……」
彼女も感じ取ったようですね。それにしても予想よりずいぶん早いですね。
「クロムさん、そういえばどのような作戦を考えているのですか」
「先手必勝でございます」
「ははは、ご冗談を」
それはノープランというのですよ。
「いざ」
ものすごい速さでクロムさんがシンさんパーティに接近しています。奇襲としては十分と言えるでしょう。次の瞬間には武器がぶつかり合う音が聞こえてきました。頑張って走って何とか追いつきました。パーティメンバーは見たところ武闘家の女の子と魔法使いの女の子と治癒師と思われる修道女の子です。うわーハーレムですね。
「な、なんだ」
「ほう、この一撃を受け止めるか。さすが勇者だな。ならばこれならどうだ」
連撃です。無数の斬撃がシンさんめがけて放たれていますがすべて弾かれます。
「ちょっと、あんた何なの」
「近寄るなトーカ、近接得意なお前でもこれはきついぞ」
トーカと呼ばれた武闘家の子がぐぬぬといった感じで踏み出した足を戻しました。
「無駄口を叩く余裕があるか。随分となめられたものだ」
クロムさんは一度距離を取り構え直しています。今までの攻撃とは雰囲気の違う何かを感じますね。
「参る」
クロムさんの姿は一瞬で消えました。
「よっと」
それをシンさんは軽々とよけて見せます。しかし
「うそだろ」
シンさんから焦りの声が聞こえる。見ると彼の腕から血が出ている。
「次は仕留める」
再び構えるクロムさん。
「ちょっと待ってください。なぜ私たちを襲うのですか」
修道女の子が割って入ろうとします。
「危ない!チユ!」
叫ぶシンさん、なぜかこの好機にクロムさんは動いていません。
「サラ様、あの女を見ていると少し鈍ります。どうにか対処できませんか」
なんだかよくわかりませんがあの子と関係があるのでしょうか。あの服装私の着ている服によく似ているなぁ。嫌な予感がするので早めに対処しましょう
「わかりました。ちょっと止まっていてくださいクロムさん」
「よろしくお願いします」
私は割って入った修道女の子に声をかけます。
「初めまして。私はサラ・クラークです。お話なら私が承りますよ」
ちょいちょいと手招きをします。
「は、はい。今行きますね」
「あ、あの子は幸太郎のとこにいたシスター?ちょっと待てチユ」
シンさんはようやく私の存在に気づいたみたいです。クロムさんに対処するのに手いっぱいなところを見るにほんとに余裕がないのかもしれません。
しかし、私の存在を視認した結果呼び留めるのが遅れましたね。無防備に近寄ってきた修道女の子に私は抱き着きます。ホールドです。
「きゃっ」
かわいらしい声ですね。女子力高そう。さて、目的達成。
「いまです。クロムさん」
「ありがたい」
「え?え?」
クロムさんが戦闘を再開します。しっかりとクロムさんは武闘家と魔法使いの子にも牽制をし、私に近寄らせないようにしています。
「あ、お話合いですよね。伺いますよー」
笑顔で彼女を見ます。抱き着きながら。でも私の腕力なんてたかが知れているのに振りほどかないところを見ると、優しい人なのでしょう。おろおろしながら私とクロムさん達を交互に見る修道女の子。
「えっと、戦闘をやめてもらえませんか」
「抱き着いてるのはいいんですか」
「その……なぜだか嫌な気はしません」
話を逸らすための適当な言葉に彼女は真剣に答えてくれます。
「それは良かったです」
結構抱き心地が良いと龍には評判だった私。人間相手でも通じると分かり若干自信が付きました。そして私自身もこの修道女の子は抱き心地がいいです。ふかふかでアリューさんとはまた違った良さがあります。
「いやそうじゃなくて!戦闘をやめてくださいと」
「そうですね。では、やめるために話し合いましょう。まずあなたのお名前は?」
「あ、はい。サラさんは名乗ってくれたのにすみません。私はチユ・アステローテです」
「チユさんですね。よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いしますサラさん」
我ながら良い雰囲気を作れたのではないでしょうか。
「サラ様ああぁ……少し、いやだいぶ厳しい状況です。いったん出直しましょう……」
クロムさん!?どゆことですか!?いきなり後ろからすごい情けない声が聞こえてきました。
「いやぁ最初はどうなることかと思ったけど君の刀、見た目と実際の長さが違うようだ。それと君の刀を武器で受けると感覚を少しずつ狂わせるスキルが組み込まれている。ここまでわかれば対処法はいくらでもある」
タネばれちゃったんですねー。結構えぐいスキルです。
「う、うるさい。貴様に解説されると腹が立つ!」
なるほど、シンさんにデバフ無効のスキル[白紙化]が付与されています。これは魔法使いの子の仕業ですかね。
「ええい、これ以上の話は不要、スキル[逃避]を使用します。サラ様」
「だめだ。このダンジョンでワープ系のスキルを使っちゃいけない!」
「貴様の言うことなど聞くはずなかろう!」
クロムさんが私と自身を対象に転移系のスキルを発動したようです。
「間に合ええええええええ」
が、しかし私を対象にしていたはずの転移系スキル[逃避]は勇者シンのスキル[代理]によって対象をシンさん自身に移されました。
結果、シンさんとクロムさんはまばゆい光とともにこの空間からいなくなりました。
「「「「え?」」」」
この場に残った全員、ポカーンとした顔をしています。私を含めて。
「わかりました。ちょっと止まっていてくださいクロムさん」
「よろしくお願いします」
私は割って入った修道女の子に声をかけます。
「初めまして。私はサラ・クラークです。お話なら私が承りますよ」
ちょいちょいと手招きをします。
「は、はい。今行きますね」
「あ、あの子は幸太郎のとこにいたシスター?ちょっと待てチユ」
シンさんはようやく私の存在に気づいたみたいです。クロムさんに対処するのに手いっぱいなところを見るにほんとに余裕がないのかもしれません。
しかし、私の存在を視認した結果呼び留めるのが遅れましたね。無防備に近寄ってきた修道女の子に抱き着きます。ホールドです。
「きゃっ」
かわいらしい声ですね。女子力高そう。さて、目的達成。
「いまです。クロムさん」
「ありがたい」
「え?え?」
クロムさんが戦闘を再開します。しっかりとクロムさんは武闘家と魔法使いの子にも牽制をし、私に近寄らせないようにしています。
「あ、お話合いですよね。伺いますよー」
笑顔で彼女を見ます。抱き着きながら。でも私の腕力なんてたかが知れているのに振りほどかないところを見ると、優しい人なのでしょう。おろおろしながら私とクロムさん達を交互に見る修道女の子。
「えっと、戦闘をやめてもらえませんか」
「抱き着いてるのはいいんですか」
「その……なぜだか嫌な気はしません」
話を逸らすための適当な言葉に彼女は真剣に答えてくれます。
「それは良かったです」
結構抱き心地が良いと龍には評判だった私。人間相手でも通じると分かり若干自信が付きました。そして私自身もこの修道女の子は抱き心地がいいです。ふかふかでアリューさんとはまた違った良さがあります。
「いやそうじゃなくて!戦闘をやめてくださいと」
「そうですね。では、やめるために話し合いましょう。まずあなたのお名前は?」
「あ、はい。サラさんは名乗ってくれたのにすみません。私はチユ・アステローテです」
「チユさんですね。よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いしますサラさん」
我ながら良い雰囲気を作れたのではないでしょうか。
「サラ様ああぁ……少し、いやだいぶ厳しい状況です。いったん出直しましょう……」
クロムさん!?どゆことですか!?いきなり後ろからすごい情けない声が聞こえてきました。
「いやぁ最初はどうなることかと思ったけど君の剣見た目と実際の長さが違うようだ。それと君の剣を武器で受けると感覚を少しずつ狂わせるスキルが組み込まれている。ここまでわかれば対処法はいくらでもある」
タネばれちゃったんですねー。結構えぐいスキルです。
「う、うるさい。貴様に解説されると腹が立つ!」
なるほど、シンさんにデバフ無効のスキル[白紙化]が付与されています。これは魔法使いの子の仕業ですかね。
「ええい、これ以上の話は不要、スキル[逃避]を使用します。サラ様」
「だめだ。このダンジョンでワープ系のスキルを使っちゃいけない!」
「貴様の言うことなど聞くはずなかろう!」
クロムさんが私と自身を対象に転移系のスキルを発動したようです。
「間に合ええええええええ」
が、しかし私を対象にしていたはずのワープ系スキル[逃避]は勇者シンのスキル[代理]によって対象をシンさん自身に移されました。
結果、シンさんとクロムさんはまばゆい光とともにこの空間からいなくなりました。
「「「「え?」」」」
この場に残った全員、ポカーンとした顔をしています。私を含めて。
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