看護師のたまごの話

杏野 凜華(あんの りんか)

看護師のたまごの話

突然ですが、あなたは入院したことがありますか?


病院にはたくさんの人が働いています。

その中でも、いちばん多いのが看護師です。


私はその看護師のたまごで、いま看護大学という星にいます。


看護師は患者さんの入院生活を手助けしたり、

診療の補助をすることがお仕事です。


でも、看護師のたまご達は、はじめからそれができる訳ではありません。


立派な看護師になるためには実習 という試練を耐え抜き、

アセスメントという 患者さんの様子を適切に把握する技を身につけ、どんなケアをするか計画を立てなければなりません。


看護師のたまご達は、毎晩 毎晩 涙を流しながら たくさんの記録を書きます。そして、アセスメントや計画を何とか終わらせて、次の日の実習に行くのです。


しかし、次の日先生は大抵こういうのです。


「アセスメントが不十分ね」


そしてまた、徹夜でアセスメントや計画を立て直すのです。


看護師のたまご達は、自分の患者さんを愛しています。だからこそ、どれだけ眠くても、辛くても、実習を頑張るのです。

でも、それでも先生や看護師さんのように患者さんを上手に理解することが出来なくて、心が折れそうになってしまう時もあります。


そんな時、何よりも励みになるのは患者さんやその家族からの言葉なのです。


「今日も来てくれたのかい?」


「あなたが体拭いてくれると気持ちいいよ、ありがとう」


そんな言葉をかけてもらえたら、

それまでの疲れや睡眠不足はたちまち吹き飛ぶことでしょう。


そして、自分の睡眠なんかそっちのけで、患者さんのためにとやさしい表現の資料をせっせと作りだす。


私たちはそんな生き物なのです。


これを読んでいるあなたへ

どうかお願いです。

看護師のたまご達から実習の依頼を受けた時は、受け入れてあげてください。


そして、優しく見守ってください。


突然入院して こんなに大変な時に?

こんなに辛い時に学生なんて!

おっしゃるとおりです。


しかし


看護師のたまご達は、不器用だけど、

精一杯の笑顔と等身大の愛情をもって患者さんに接することでしょう。


そのすがたはきっと、

病気とたたかう あなたや家族を元気づけてくれるはずです。


ずいぶん長い間 お話してしまいました。

疲れてしまっていたら、ごめんなさいね。

でも、最後まで聞いてくれて私はとても嬉しいです。


そろそろお別れの時間のようです。


優しいあなたと、またどこかで出会える日を楽しみにしています。


病院以外でね。

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