第11話 ~Hside~ ⑥緊張するふたり…彼女の距離感と僕の理性
なんだかんだ仕事が忙しくて
ゆっくり彼女と会話をする時間もないまま、約束の日になった。
僕は彼女を迎えに行くために、彼女の家へ向かった。
彼女は実家暮らしでちょっと厳格そうな家柄だ。
かくいう僕の実家も同じくらい厳格な感じ。
小さいころからの苦労はよくわかる。
彼女の口は悪いけれど、育ちがいいところは
小さい頃からしっかりしつけられたことがよくわかる。
とはいえ、根っこは真面目で一生懸命なんだけど
コミュニケーションの下手さがすごく目につく。
生き方が不器用というかアンバランスというか
もっとうまくできたらと思うけれど
それもまた彼女の良さなんだろうな
そんなことを考えながら、彼女の家に着いた。
彼女と一緒に、外まで彼女のお母さんが出てきた。
僕はご挨拶をしてお預かりすること、無事に帰すことをお約束した。
なんか、恋人みたいだけれど…大丈夫かな。
彼女を見ると、
根掘り葉掘り聞かれてすっごく嫌だ!!
って、顔に書いてあった(笑)
まぁ仕方ないか。
どこの馬の骨かわからん男と出かけるんだもんな。
しかも、バツイチとか7歳上とか
知ったら、絶対に反対しそうな親だ。
僕はあえてその話にはなにも触れずに
映画が楽しみだという話をした。
彼女はすぐに機嫌をなおし、笑顔で話にのってきた。
ホントにすぐに表情が変わる。
さっきまでのブスッとした顔が嘘のようだ。
すっかりと彼女の扱いはお手の物状態だ。
けれど、ちょっとだけ、彼女から「緊張」を感じる。
実は僕もちょっとだけ「緊張」してるんだ。
とにかく今日はお互いの気持ちとか関係性とか
そういうことを考えるのはなしにしよう。
映画を見ことを楽しむ
そのことに集中するのだ。
けど、どうしてもどうしても1ヶ所だけ
彼女を連れていきたいところがある。
彼女が絶対に喜んでくれると思う場所。
そこだけははずせない。
映画を見て、ご飯を食べて、そこに行きたい。
彼女からOKが出るだろうか。
サプライズで連れていきたいから
ギリギリまでは内緒だけど。
いろいろな意味で「緊張」するけれど
僕はポーカーフェイスを装って
彼女が熱く語る映画や俳優についての話を聞いていた。
ホントに、この子は…(笑)
ガードが堅いんだか緩いんだか
距離感がおかしいんだよ。
カラダの前にはバックが置かれ、人を寄せ付けないような感じなのに
身を乗り出して近づいて話すし、プラス、僕をやたら触ってくる。
どこぞのおばちゃんのように、ペチペチたたいてくる。
ボディタッチ多すぎだろ!ホント。
これ、絶対に男が勘違いするパターンだぞ。
まったく俺の理性をふっとばすような奴だな。
あぁ、また僕が俺になってる。
やばいやばい。
理性を保たねば!
今日一日、大丈夫かな…俺…(苦笑)
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