第27話 体育祭⑥

「いやーやっぱあそこが勝つよな」

「うん」


綱引きは運動クラスが圧勝したのだ。強いな、引っ張り始めて初戦以外は十秒で瞬殺している。

総合点数は運動クラスが一位で俺らのクラスは四位でまだ一位を狙えるところにいる。

競技で点数が高いところを落とさなかったら少しだけある。


「しかし綱引きが負けたのが痛いな」

「そうだけど競技で頑張ろう」

「ああ」


そうして蒼井と一緒に自分の番が来るまで観客スペースから見ることにした。

まずは短距離走、この競技は点数は大きくないがもしもの場合に備えて勝っておきたい。そもそもどの競技でも勝っておきたい。


パァン


ピストルの音が鳴り走者が走っていく。あっという間にカーブに差し掛かっている。

そして俺が勝手につけた魔の五メートルへ。

魔の五メートルとは直線にも関わらずにコケたりするところでよく逆転が起きたりするので魔としてつけた。

魔の五メートルに入る前の俺らのクラスの者は六人中四位となっているが魔の五メートルに入った瞬間一位の人はコケて二位も巻き込まれてそのせいで三位は失速して四位は一位になりゴールした。まで絵に書いたような逆転劇だ。

そうしてトントン拍子で競技が進んでいく。


『男女混合リレーに出る人は選手入場入り口付近に集まってください』


「お、いくか」

「もちろん」


最後の競技のアナウンスが流れる。

この男女混合リレーは点数が高い。なぜなら各学年ごとに走りその中の上位二組が進出してそして各学年男女混合リレーが行われるため時間がかかるからである。

俺らのクラスはこれで一位さえ取れば総合優勝できる。

だからまずわざと学年ごとでは二位を取ることに調節する。そうすれば内側の方のラインで走れて有利であるから。調節することは言わないから俺一人でなんとかする。言わないのはスポーツマンシップに反するからバレたくない。言い訳としてくじいたとか言えばいい。


まずは一年がしていく。一位二位が接戦だったが二位と三位の差は歴然であった。


そうして二年になりレーンに第一走者である七間さんが並び、


パァン


スタートした、一周するので今から準備するのは早すぎるのだが蒼井はもう準備をしている。俺は声をかけようかと考えるが目立つことと走っていない走者は走る順番に並んでいるため距離が少しあり声が届かないからやめておく。

お、七間さんが一位に躍り出ている。しかし蒼井と同じレーンで走る走者は陸上部だから書道部である蒼井にはハンデである。蒼井は運動ができるかと問われたら、ある程度しかできない。そう答える。

そうしていると七間さんが戻ってきてバトンパスを問題なく済まして蒼井に渡り、その勢いを貰ったかのように蒼井は練習の時より早く走っていく。表情は楽しんでいる。

やっぱし蒼井は主人公だ。もしこれを作品にするなら蒼井が主人公のラブコメになるだろう。そして俺は友人キャラとして登場してサポートして終わるだけだ。きっとそうだ。

七間さんが列に戻ってきて俺の後ろに座る。


「お疲れ様、この後も大丈夫か?」


俺は進出した時の体力はあるか?と体を後ろに向かい聞いておく。


「ええ、大丈夫です、お仕事で100%でやっているので回復するのが早いので問題ないです」

「そうか」


なら、いいか。しかし俺は本当に友人キャラなのか?実は悪役ではないのか?そんなことを疑問に思っていると、


「前」


七間さんに言われて前を見ると御珠はもう準備をしており、前が詰める状況だったのだ。


「ありがとう」


俺はそう言い詰める。

訂正俺は悪役だ。

蒼井はどう思うかしらないが中々素晴らしい計画をしているがそれが人を狂わす計画であると俺は信じておく。

今まで変わらないことをしてきた、なにかを起こしても元に戻ってしまう俺のこの腐りすぎた性格を変えるために。

いやただの詭弁だな俺の計画に俺の嘘なことをただ思いついて付け加えている。これだから元に戻ってしまう。

自信はなくともなにかをしないといけない。これは俺がただ思っているだけこんなものは所詮自己満足にしか過ぎないがそれでいい、今はもう戻れないように自分を追い込んでいるだけなのだから。

そうして間にも御珠にバトンが渡り走り出していく。


御珠は抜かされいく。御珠が遅いわけではない。このリレーには総合で逆転があると賭けているクラスが多いので速い人が多いのだ。


俺は気づくのが少し遅くて御珠が戻ってくる少し前に準備をしたため少しバトンパスにミスがあったがバトンを受けたり走っていく。

走りだした時には最下位だったが俺は少し飛ばして残り後一周のところで抜いていき、一位と接戦になりゴールした。

手は抜いている。一位でゴールできたかもしれないが有言実行、二位になった。


「なんだ最後アンカーの最下位からの追い上げは?」

「すごいで片付けられないがすごい」


周りの人からそんな会話が聞こえてくる。

そして二年は一度隅っこに移動して三年がリレーを始めていく。

年齢の差か全体的にレベルが高い。

これなら少しやる気出していいみたいだ。

そうして出るクラスが決まり、他の敗北したクラスは観客スペースに戻っていく。

観客は一同として見ている。

そして第一走者である七間さんがレーンに並ぶ。緊張感がはしる。だがこれにワクワクする自分が居た。

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