第24話 体育祭③

『これからサッカー決勝戦が始まります』


そう放送が聞こえてくるころにはもうベンチ入りをしていた。スタメンなんてごめんだ。


「それにしても観客が多いな、蒼井」

「そうだね、誰かさんが圧倒的な試合を見せたからでは?」

「ナ、ナンノコトカナ?」

「ソウデスカって、始まるよ」


ピィーーーーーーーーー


ホイッスルの音がたかだかと鳴り響く。

ついに決勝戦が始まった、俺達二年対通称運動クラスと言われている三年との戦いである。もし俺がこの戦いを予想するなら俺なしなら1−0と負ける。そう考える。俺有りでもあの時みたいにやる気ではなかったらぎりぎりの戦いになる。それほど相手の三年は守ることがうまい。運動クラスと言われているほどスポーツ推薦の人が多くサッカーをやっている者はいないが運動神経がよく大体のスポーツができるため体育祭の優勝候補である。正直厄介だ。


やはり試合の状況は動かず、攻めても守られそれの繰り返しをしている。


「後半蒼井と俺に交代来るかもな」

「そうだと思う」

「だよね」

「うん」


もうそろそろで前半が終わろうとしている。アップはまだしなくていいどうせ休憩の時に交代になるんだから。

実は近くから視線を感じている。霜端からだ。なんでだろうな?もしかして蒼井と話しているのにヤキモチを付いたのか?!ならば仕方ない黙ろう。

しかし麗七人の内六人が見に来ているなんてな。うん、まぁどうせ監視だと思うけど。蒼井はベンチに居るがそれでも警戒をしているみたいだ。まさか俺のことまで疑って居ないよな!?

そんなことを思ってしまったから疑われているような感じがしてきたぞ。

むむむ。


ピィーーーーーーー


「お、前半終了したか」

「そうだね」


0−0と点は決まらずに選手達はトボトボとベンチに戻ってくる。残念そうにしている。相手の選手も残念そうにしている。

お互いシュートを決めようとするが毎回のごとく防がれていた。


「俺と蒼井で交代で」

「分かった」


そうキャプテンである四条が答えてくれる。やるからには勝つ。


「涯、頑張ろうね」

「ああ」


横に居た蒼井がそう言ってくる。さて開始までアップでもしておくか。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


私としたことが蒼兄ぃがベンチに居るときに涯の横顔を見つめてしまった。いけないいけない。もしかしたら涯があのデマを流した犯人かもしれないから。


ピィーーーーーー


あ、後半始まった。FWというポジションに涯と蒼兄ぃが居る。サッカーについては少ししか知らないのでもしわからないことがあれば横に居る紫霧に聞くことにしよう。

さっきの試合の時みたいにやる気は感じられないが蒼兄ぃと一緒に頑張っている。

やる気がある涯に会ったのは初めて会った時だった、その時に私は一目惚れしたのだ。私が中学三年の時、蒼兄ぃと一緒に買い物を行き桜道を通り帰っているとトラックが赤信号なのに止まらずに私達の方に突っ込もうとしていて、そのころは小説サイトを見ていたから異世界転生するようなこんなベタなことがあるなんてと思っていたがスピードを上げて突っ込んでくるトラックを見て、迫力があり私は怖がってしまった。蒼井には慌てていた。その時にもうだめだと思っていたらトラックを片手で止める人が居てそして、


『大丈夫か?』


そんなことを言われた。私と蒼井は驚いていたがその人はまるで覇気を纏ったかのようにやる気が、いや闘気が溢れんこそばかりに出ていた。


『おいおい、なにか言ってくれよ』


そう言われると蒼兄ぃが、


『大丈夫だよ、君が止めてくれたおかげで助かったから』

『そうか、良かった、もう行きな』

『分かった、また会ったら話しかけるね』

『ああ』


『霜端行くよ』

『うん』


蒼兄ぃに引っ張られるようにして家に帰った。それが涯との出会い。

そして次の日、蒼兄ぃがあの時助けてもらった人と同じクラスだと言った。そして名前は頂利涯。そして涯は蒼井に誘って貰い家で私の一緒に遊んだ。少しでも一緒に居たくて。

時期は経ち私が受験シーズンなった時、涯と会ってなければ他のもう少し上の高校に行く予定だったが涯と同じ高校にした、私はそのことが悟られるのが恥ずかしくて去年の時のようにはできずあまり遊べていない。


ピィー


ホイッスルの音が鳴る、蒼兄ぃが痛がって倒れていた。なにが起きた!?


「紫霧」

「うん、あれは反則した」


なるほど反則行為があったと、蒼兄ぃはなんとか立ち上がった。

シュートを決めるのは蒼井ではなく涯が蹴ることとなった。まだ0−0と同点で残り時間は十分ぐらいということはここがチャンスだと思っていいだろう。


観客も選手も涯のキックに意識を向けていたので急に無音なったかのように静かになる。まるで嵐が来るまでの静けさみたいだ。

そして涯は蹴ると、相手キーパーの手には当たったがゴールの外には出ずに入る。

スコアは0−1と点が入ったのだ。その時観客達は声出して喜んだりしていた。


そうして歓喜のまま試合が終わった。

さて昼食にしないと。

そうして事前に集まると決めた居た場所にお弁当を持ち向かう。

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