第23話 体育祭②

「これから体育祭を行います、では選手宣誓」


「はい!」


生徒会長がマイクの前に立ち宣誓をする。


「我々はスポーツマンシップに乗っ取り体育祭に挑むことを望みます」


去年と変わらないことを述べているがそれで去年に明らかに悪質な行為があったような?


「頑張ろう、涯」

「ああ」


列に並んでいると後ろから蒼井にそう言われる。その通りだが蒼井には今年こそ頑張ってほしい。今回は交渉をしてきてないのでクラスの男子に従わなくて済む。そして今はもはや女子強の時代!だから蒼井の味方であれば俺は助かるわけだ。ハハ、ざまみやがれ男子よ。俺という情報を女子に流す者居る限り蒼井への悪質な行為はないしむしろそんなことをしたら男子の評価が下がることには気づいている人物は居るが少ない。せいぜい四条ぐらいだ。

そうして体育祭が開始した。







まずはクラスごとに男子はサッカー女子はバスケをすることとなっており全学年でトーナメント形式で、三年対一年のようなことがあるがここの学校では当たり前なのでみんな気にしていない。俺も気にしてない。文句言い輩はいない。居たとしたらどうなることやら、どうなるかは学校の七不思議である。

俺らのクラスは一回戦はまさかの三年が相手となった。


「やるぞ!」

「おー!」


掛け声をして始まる。蒼井と俺はベンチスタートとなっている。俺は自分からベンチスタートでと申し込んだが蒼井は自然とベンチになっていた。

観客席には順番が後の方である霜端、暁、府姫が目を光らせていた。

ベンチでなにか起きるのではと見ている。ただ試合は見ていない。


「麗七人の三人のお方が来ているぞ!」

「うっしゃ!」


自陣が勘違いをしたのか見に来てくれていると思っていいところを見せようと躍起になっている。

勝ってくれればいいのでそれでいい。

相手三年にはスカウトを受けた選手がいるからどうなることやら。

やる気が勝つか実力が勝つかのどっちか。


ピィーーーーーーーー


ホイッスルの音がなり、三年のボールから始まった。


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前半が終わった。

7−1と負けている。途中から音を上げる者がいて士気がダウンしてその隙を狙われたようだ。

なんだこの試合?

憤りを感じるわ。俺はやるからには勝ちたいタイプだからこんな試合見てられない。


「交代だ」

「分かった、FWで交代でいいな?」

「ああ」


少し強い口調にい苛立ちを隠せていないが交代させてくれる。見てろよ、これが一度死んだことがある人間による攻撃だ。

俺は口を手で隠してニヤける。

そうして後半が始まった。

俺らのボールから始まる。


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「蒼兄ぃ」

「なに?霜端?」


ベンチに近い観客席から霜端がなにかを聞いてくるようだ。一体なんだろう?


「涯ってあそこまで怖かったけ?いややる気を出している涯なんて久しぶりに見たね」

「そうだな」


始まってそうそうセンターサークルからロングシュートを蹴るといぶし銀のようにものすごく速いけど魅せるようなシュートではなく狙っているようで相手のキーパーは全く反応できず呆然と突っ立っているだけ。

あんなまるでなんだろう?闘気の中にある怖さがあり、敵味方ですら驚きを隠せていない。いつもはやる気がないようにしてあまり強く感情を出していないのに苛立ちという感情が涯を変えた。まるで別人だ。

敵にはサッカーで強豪チームから内定を貰っている選手ですら唖然としており、みんな異様な、怪物を見るような目で涯を見ている。そう見ていないのは僕と霜端だけ。

そして再開されるとすぐに涯は相手のボールを取り、敵陣に攻めてまたシュートを入れる。

こんな涯は本当に久しぶりに見た、こんな涯は初めて出会った時以来見ていないのだから。


「まるで別人だな、霜端」


回想に入る前に霜端に話しかけて回想しないようにした。


「でも、いつもよりこっちの方が人気が出そうね」

「その通りだ、まるで強者のような雰囲気をただ酔わせているから普段のなにもやる気ないですよみたいなよりかはいいと思う」

「だが普段の涯でもいいとは思うけどね」


これが恋をするということかな?つまり霜端はどんな涯でも好きということ言っているようなものだ。

兄歓喜。涯なら信頼できるから。

そうしている間にも涯の単独での猛攻は止まない。


ピピィー


また得点が入ったようだ。スコアを確認するとまだ後半が始まって十分ほどで7−8と勝っていた。涯が七点も入れている。しかもありえないシュートなどを放って入れている。

もはや怪物と言える。怪物ように遊んでいる、点の入れ方がキーパーを抜いて入れたりと毎回違う。敵は果敢に奪い返そうとするが全くボールにすら触れられずに居る。

圧倒している。

その勝ちムーブに感化されたのか味方もやる気を出していく。

今度の点の入れ方は味方を使い入れている。

他のところでも試合はしているがこんな試合はないだろう。


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僕はベンチで出場はしていなかったが、7−14と圧勝をした。


「お疲れ涯」

「ああ」


あ、普段の涯に戻った。でも普段の方が懐かしく感じるな。


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うーん。苛立ちのせいで少しやる気でしてしまったな。次からは控えよう。

とういうかすぐに次の試合があるんだけど!まあこれがこの学校の体育祭の普通だけどな。

決勝戦の時だけ休憩があるのは助かる。

そうして移動をしてすぐに次戦に挑む。

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ピィーーーーーーーーーー


試合終了の合図が鳴る。これで決勝戦進出だ。


「蒼井」

「なに?」

「お前の妹の試合見に行くぞ」

「そうだな」


なぜか女子は男子より少し遅く始まるためまだ準決勝だ。

休憩時間に見に行けるほどの時間はあるため蒼井と見に行くことにした。



体育館に入り、観客席から蒼井と隣で見ることにする。

対戦するのは一年と三年で、霜端と暁が出場していて相手の三年には東条さんが出ている。

身体能力が高いのでどうなることやら。


試合が始まると以外にも点は決まらずに両者攻防戦になっている。


「攻防戦だな」

「ああ、でもこんな短時間に結構動いているからどちらかに隙ができるかもよ」


蒼井が真面目に答えてきた。その通り隙ができてもおかしくはない。接戦と言えるだろう。すごいところは一年と三年の戦いであることだ。普通なら一年対三年の戦いは三年が余裕を持ち勝つはずなんだが今回だけ違うみたいだ。

そしてついに、


「入ったな蒼井」

「ああ」


霜端が二点決める。これで大きく試合が変わるのか?と思っていたんのだが攻防戦になる。

最初のインターバルが終わり、2−0と激しい攻防戦であったと思える。これは本当にバスケをやっているのか?中々決まってないぞ?


「すごいな、この点の入らなささ」

「同感だ、しかし霜端はよく決めたよ、兄として嬉しい」

「そーですかー」

「冷たいな」

「そうかな?」

「とぼけても無駄だぞ?」

「知らん」


シスコンであることが薄々思っていたが確信した。仲がいい兄妹だな。

そこから疲れてきてくるはずなのに息もつかせず攻防をしている。

しかしハーフタイムが終わるころには6−9と三年が逆転している。


「このまま三年が勝つかな?」

「どうだろう、このまま逃げ切るのか一年が巻き返すのか」

「で、この試合が終わったら頑張らないとな」

「普段からやる気がない涯には言われたくないな」

「なんだと?俺も頑張っていることはあるんだぞ?」

「なに?」

「言わない」


計画実行のために頑張っているとは言えない。今のところ俺の計画は順調に進んでいるがなんども言うが誰かに気づかれると失敗してしまう。でも第一段階だけは気づかれてはいけないので二段階目は気づかれたっていい。むしろ第二段階からは気づかれた方がことが進みやすいのだがまだ第一段階にすら到達していないので第二段階以降のことは今はまだ気にしなくていい。


「再開されたよ涯」

「ああ」


蒼井の声により一旦は頭の片隅に置いておき、試合を観ることにした。

少し疑問に思う。蒼井は本当は彼女らの好意に気づいているのではないかと。


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「惜しかったな」

「そうだな、サッカーが終わったら昼食の時間だからその時に褒めてやろうぜ」

「うん、そうする」


結果は58−60と接戦であったが惜しくも一年は敗戦した。

延長戦までもつれ込んだが両者は延長戦に点の取り合いとなったが三年が制したのだ。

さてサッカーの決勝戦頑張らないと。








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