第17話 正義の無自覚少年
今日も蒼井は来ていないな。
次の日になれば復活してくると思っていたのに。
どうやらクラスの男子は全く昨日と雰囲気が変わっていないからまだ他の女子達に蒼井の怪我のことを拡散していないみたいだ。でもこんな雰囲気が変わり、暗くなると思うと笑えそうだな。
む、そうだ、今のうちに蒼井に失望する女子を出させよう。
「どうしたんですか?」
小声が聞いてくる。席が横だから周りから注目はされていないようだ。
おっと、いけない七間さんにニヤついていることバレたみたいだ。
「いやなんでもないよ」
「そうですか」
違和感しかないがなんとか誤魔化せたな、では時間を見つけてこっそりとするか。
あー、でも今日も体育あるな、そして大綱引きかな?
蒼井が居なければ平和なんだよなこのクラスは。
別に蒼井が悪ではないけどむしろ正義の無自覚少年だからな。でも普段はいまいちぱっとしないんだがな。
蒼井については今はこのぐらいにしますか。
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いやー、予想通り大綱引きだったな。
さていつもどおりのボッチ飯にしますか。そう思い教室にて弁当を取ると、
「あのー」
不意に後ろから声をかけられる。
七間さんか。少しびっくりしたわ。
「なに?」
「えーと、一緒に食べませんか?」
特に断る理由もないしいいかな。
「もちろん」
「前食べた時に居た階段にしますか?」
「どっちらでもいいよ」
「ではいいところ見つけたのでそこにしますね」
七間さんは弁当を持ち、向かうので俺は付いていくことにした。
そんなところはあるのか?俺が時々ボッチ飯ポジ探しとかしているのに。
信じるか。
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「まさかこことは‥‥」
驚いてしまう。心地よい風が吹いている。
「そうですよね、でもここなら気にせずに食べれますよ」
「ここなら人が来ません」
俺は少し皮肉る。なんと場所は旧校舎の屋上。そして俺らが普段いる新校舎よりも一階多い。旧校舎と聞くとボロボロみたいな感じを受けると思うがそんなことを払拭するぐらいキレイでホコリを新校舎よりも見ていない。なんで新校舎建てたんだよ!
「ではご飯にしちゃいましょう」
「ああ」
尻を地面につけるが汚くはならない。弁当open!!
自分で作っているからなにが入っているからは知っているんですけどね。くそつまらない茶番を一人でして心の中で自分で突っ込むのは何回もしているため慣れている。恥ずかしいなんて感情は意味がない。くよくよしているのはつまらないから恥ずかしいなんて邪魔なだけ。例外はもちろんあるがな。恋愛の時のみ。
それにして七間さんの弁当美味しそうだけど、明らか野菜の方が多い。仕事ってのはもちろんキツイいんだな。女優兼モデルは体型維持が必要になってくるんだな。
「七間さん」
ご飯を食べることをお互いは自然とやめる。
「なに?」
「七間さんはいつ素ですか?」
「ご想像にお任せにします」
七間さんは微笑を浮かべそう言う。勘では答えられるが答えるべきではないだろうな。さて止めていたご飯を食べることを再開していく。
食べている間は静かで風の音が時々聞こえてくるだけだがそれがまたいい。
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「ここ教えてくれてありがとうね」
「気にしないでください頂利君」
そう短く会話を済ますとクラスに戻っていくことにした。またお互いは移動中も静かだ。でもなんだが心地よい、七間さんも同じことを思っているのか話さずに無言の心地よさに少しでも長く浸かっていようとする。
教室に戻ると俺の席の前に御珠が居た。七間さんも気づいたのか俺と七間さんは元々横に居たが離れる。心地よい時間は終わったのだった。
すると御珠は俺を見つけると近づいてくる。ひどく深刻そうな顔をして。
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