第9話 練習

「あー、では先ほど決めたであろう体育祭の競技ごとに皆並んでください」


そう言われ、次々と並んでいく。


「蒼井、一緒だね!」


「そうだな、空布、もう一人は七間さんか」


「はい」


俺は無言。だって蒼井がこの男女混合リレーに決めてから女子は騒がしくなった、四条に言いにいったのは俺、つまり俺が男子のもう一人だと分かっているはずだ。


「とりあいず、並んだと思うから、走る系はトラック、他はまぁ俺に付いて来いで、練習だ」


やる気ないだろ、体育の教師。普段はちゃんとやってくれるんだが体育祭など特別なことになるとやる気をなくしている。去年もそうだったから覚えているぞ、なぜやる気をなくすのか分からない。


「蒼井、向かうぞ」


「ああ」


俺は仕方ないので先導することにした。こんぐらいはいいだろう。蒼井がボコボコにされるのはいいけど妹の霜端が差別を受けることは許さない。だって一年のころ蒼井の家に何度か行った時に毎回霜端の晩御飯を食べるのが当たり前になっていたからその晩御飯のおかげだから。ああ霜端のご飯美味しかったな、もう一度食べに行こうかな?この前ことがあるから大丈夫だろう、多分。でも俺と蒼井などが二年になってから霜端が俺に対して無視するようになってきたから晩御飯作ってくれるかな?心配だ。考える時は霜端としているが言う場合は板見にしている。


「で、走る順番はどうする?」


俺はバトンを手に落とさない程度に軽く持ち聞く。


「頂利はアンカーでいいでしょう、で私は蒼井の次で」


「じゃあ、七間さんが最初でいいかな?あとその次自分で空布、涯で」


「分かった」


七間さんは短く返した。あの時居酒屋で会ったのは七間さんではないのか?全く人が違うように感じてしまう。あと七間さん独特の響きがない。それは気にしなくていいか、いちいち響くと嫌なこともあるだろうし。


「まずは一回通そう」


御珠がそう言い、俺が七間さんにバトンを渡す。


「ありがとうございます」


俺にしか聞こえない小声でそう言うとバトンを受け取りスタート位置に着きスタートした。

その間に蒼井の横に並び、話をすることにした。


「今日放課後遊びに行ってもいいか?」


「ああ、もちろん!」


蒼井から喜んでいることが分かった。御珠は蒼井と俺の間にいかに入れるか様子を見ている、さてどんぐらいかな?と思い、七間さんが走っているのを見ると、


「蒼井、準備」


「分かった」


七間さんは意外にも速かった。わんちゃんこの競技で勝てるかも。

七間さんが戻ってきて蒼井に渡すと蒼井は走っていく。もう御珠は準備をしている。文句は言わずにはぁはぁと呼吸している七間さんのところに向かう。


「ナイスです七間さん、結構速かったね」


「ありがとうございます、でも自信はないですけど」


「それはバスケでは?」


「そうかも。フフフ」


「俺も自信がないけどね」


七間さんは可愛らしく笑う、息が上がっているからそんなことしなくてもいいのに。

でも俺が冗談を言ったと思っているから冗談を返して笑ったんだろうな。それにしても声を使い分けれるのかすごいな。


俺は気になることがあったため率直に聞かずに、


「七間さんは実は有名人?」


ビクッ!わぉ、鎌をかけたらわかりやすいな。


「ち、違うよ、あはは」


誤魔化そうとしている、引き下がるか話題を変えるか、うーん、どっちにしようかな?七間さんは見た目に反して口調などが変わるな。普段はなにも特徴がなさそうな感じの反応で、でも時には他の反応をする。


「頂利君、ほら板見君が戻ってきたよ」


七間さんは話題を変えた、これで林奈々=七間さんだと分かったからいいか。でも一応終わってから聞こう。でもこのあと昼食だから聞けるかな?

蒼井は御珠にバトンを渡すとこちらに向かってくる。


「お疲れ、蒼井」


「ありがとう涯」


「俺はもう準備するわ」


そうして離れて軽めにジャンプしたりする。俺は入院生活があったもののそこまで運動に鈍っていないため、少しだけできる、でも本気で走ったことはない。

そういえば御珠は陸上部に入っているためかクラスの女子の中で一二を争う速さを持っている。

そうしていると戻ってきたのでバトンを貰い、二割で走る。八割以上は自分が本当に困った時のみ使うためこういう時には申し訳ないが使わない。

しかしアンカーはもう一周しないといけないといけないのでだるい。よし三割にしよう。そうして三割で走り終わり、蒼井達のところに戻ると、


「速いな涯」

「案外速かったな頂利」

「すごい速かったです頂利君」


「そうだったかな?」


まず本気ではないため速くないはずだがな。


「これほどで自信がないとかやばいです」


む、心外だ、七間さん。俺は運動と勉強も自信がない。自信があることは手加減と戦いぐらいだ。


「よし、次昼休みだから早めに終わる」


体育の教師はそう言うと俺は更衣室に誰よりも速く向かう。ここは六割でいいだろう。


「いつもどおりだな」

「ああ、そうだな」

「なんであいつ普段からあんな感じにいないのかな?」

「わからん」

「「それな」」


そんな会話が聞こえるころには更衣室に入り、着替える。

さて七間さんを待つか。










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