第2話 転校生が来た!
チャイムが鳴りそうな時間に戻って自席に座り、周りがいなくなった人物の方に体だけ向け、話をする。
「休憩時間はどうだった?」
「え、なにが?」
「え?じゃない、府姫とか来ていただろ」
「ああ、そうだな、それで?」
鈍感過ぎて呆れを通りこして恐怖だわ。
「もういいわ」
「?」
蒼井はわけが分からないかのように首をかしげる。
必要最低限だけ話しかけようかな?
キーンコーンカーンコーン
俺は体を黒板に向ける。
「よし、揃っているな」
主担任はそう言う、あ、そういえば今日二時間連続主担任だったわ。
みんなは気になるのか席に座っている、普段は少し遅れたりするのに。
「では入れ」
クラスの戸が開く。
「
主担任がそう言い、七間さんは、
「七間燐です、よろしくお願いします」
声は小さいがこのクラスの隅まで聞こえそうなきれいな響きがあった。
七間さんの見た目は眼鏡をつけており地味そんな印象だ。
全体的にがっかりしている、転校って案外そんなもんじゃないの?
幻想を抱いていた男子生徒はわかりやすく机に屈服している。
「あそこの頂利の横の席だ」
「あ、はい」
主担任は俺を指す。
七間さんは弱々しい声で返事をして、俺の横に来る。
七間さんがかばんを机の上に置くと、
「頂利、今は授業中だが七間さんを校内案内しなさい、減点にはしないから行った行った」
そう言われ、俺と七間さんは廊下に出る。特にこの学校は目立つようなことがないからどうしよう。
「あ、あの」
「なに?」
「え、えっと案内してください」
「わかった、まず上の階から行こうか」
俺はできるだけ優しく言う。警戒されるのだけは避けておきたい。
「はい」
ーーーーーーーーーーー
ーーーーーーー
ーーーーー
「ここが音楽室」
「はい」
「で、ここが第一美術室」
「はい」
七間さんははい以外言っていない、ちょっと気まずいな。
俺は話題を決める。
「七間さんはここに来てどう思った?」
「え?」
急に話しかけられたのが予想外のようで慌てている。
「ほらこの街に来てどう思ったの?」
「えっと、転校する前の街よりもいいなと」
「そうか」
「これでいいですよね」
「ああ」
七間さんは心配になったのか聞いてくる。人見知りなのか?
「七間さんって人見知りなの?」
「少しだけ、あ!」
少しではなくだいぶだと思うよ。あ!となにか思いついたように言ってくるなにを思いついたんだ?
「
「うーん、申し訳ないけど知らないな」
俺の家にもテレビはあるが見る気は最初からないので見ていないから芸能人の名前とか知らないし、病院生活していた時は勉強ばかりしていたから見ていない。
「そうですか、その林奈々っていう女優兼モデルさんなんですけどもう芸能生活十年以上なんですよ」
俺は頷いておく。これでいいはずだ、分からなくてもこういう時は頷くのがいい。
七間さんはその林奈々の話しをしていると笑顔になっている、眼鏡をかけているとはいえ、顔も美少女なのでさきほどの時とは別人のように見える。
まだまだ林奈々について話しながらよく使う教室を教えていく。
ーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーーーー
ーー
「お、終わったな、席に戻って今やっている範囲の教科書を見せてやれ」
「はい」
終わる気がない林奈々についての七間さんの会話を切り上げてクラスに戻る。
一方的に話してくるから頷いていただけなんだけどね。ただこの学校なんもなさすぎて林奈々についての会話がなければ数分で終わっていたと思っている。
クラスは授業中のようだが俺らが戻ってくると、主担任は手を止めそう言ってくる。
七間さんはまだ教科書を貰っていないのかな?
俺と七間さんは座り、机をつけて俺の教科書を広げる。
「ありがとう」
七間さんは小声で言ってくる、俺は返事はしなずに少し頷く。七間さんは気づいてようで一瞬笑顔を作る。
そうして授業を受けるのだった。
俺は特待生として入学している、どうやら南森医師と玄さんとこの学校の理事長が仲がよく、頼んでくれたらしい、本当に感謝しかない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます