〈06〉脳通信
次の質問までの時間は、おそらく三分ほどだったと思う。
シャルは決してロボットから目を離さず、電話やメールなどでの連絡なしで、次の質問リストを受け取ったようだ。やはり、脳で直接連絡している感じだ。
次の質問がスタート。
「あなたが最初に飼ったペットの名前は何ですか」
「……マックスです」
「あなたの好きな映画は何ですか」
「……ええと……オズの魔法使い」
「あなたの母親の旧姓は何ですか」
「………………あれ? ……忘れました」
報告書には、使用者の記憶をそのままコピーしているとあったのに、忘れてしまったという答えが目立った。――もしかしたら、データが破損しているのかもしれない。
AI分析は無事終了し、ミミクロイドは別の部屋に移動された。つまり逃げないよう、閉じ込めておくわけだ。
ミミクロイドの移動が終わった後、シャルと教授は分析データの考察のため、別の部屋へ向かった。
考察が終わるまで、私は休憩しているようにという指示なので、休憩室へ向かう。
そこでシャルの助手のオギワラ君と会った。
シャルについて、いろいろ聞きたいこともたまっているし、少し会話してみることにする。
「さっきの分析のとき、シャルさんは、どうやってAIの専門家と、やり取りしていたんですか?」
「ああ、そういえばジョブさんは、まだ新ネット初心者でしたね。あれは〈脳通信〉ですよ」
「脳通信……! 何か脳に埋め込んでるんですか?」
「いえいえ、そういうことは必要ありません」
オギワラ君の説明によると、新ネットの圏内なら、脳から脳へ、情報を直接送信できるとのこと。
脳に何かの細工をする必要はなく、通信システムに脳の『登録』が済んでいれば、誰の脳でも通信できるらしい。
「シャルロットさんの仕事には、この技術が必須なんですよ」
オギワラ君はそう言って、シャルの仕事と〈脳通信〉の関係について話してくれた。
シャルは〈脳通信〉においては世界トップクラスのスキルを持っていて、百人ほどの脳との通信を、同時に処理できるそうだ。
同時並行で、さまざまな人に指示したり、情報共有したり、ときには行動を操作したりして仕事をする。
しかもシャルは国家の枠を超えて、かなりの権限を持っているので、かなり偉い人さえも動かせるとのこと。
「あ、分析が終わったみたいです。行きましょう」
オギワラ君は、何か連絡が入ったわけでもないのにそう言って、立ち上がった。
――もしかしたら、これも、その〈脳通信〉か?
私たちは、シャルと教授のいる部屋へ向かった。
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