〈04〉キャンディス

ジェットはその島に着陸した。


今回の事件の発端となったロボットは、この島にある極秘施設で、厳重なセキュリティの下に保管されているという。


シャルの権限によって全てのセキュリティを通過し、ロボットの残骸が保管されている部屋に到着。


既に数名のスタッフが作業を進めているようだ。教授が部屋に入ると、皆が作業の手を止めて、教授に近づいてきた。


スタッフのリーダーらしき人が、教授と握手。


「コレットと申します。一緒にお仕事ができることを、うれしく思います教授」


「現状を、教えていただけますか」と、教授。


その後、スタッフたちがウィル教授に対して、ここまでの分析結果などを報告していった。


パーツごとに担当者が違うようで、教授は各パーツを分析するブースを順番に回りながら、それぞれの担当スタッフから説明を聞いていく。


教授は、相づちもなく静かに聞いているかと思えば、ときどき気が付いたことを質問したり、確認したりする。


教授の質問することは、かなり核心をついていて、新たな方向性を示すものでもあるようで、説明するスタッフの目が輝きを増し、話の熱量も高まるのを感じた。


スタッフたちは本心から教授の能力に感動している印象で、決して大物エンジニアに対するおせじ・・・という感じではない。


最後に、スタッフのリーダーであるコレットが、教授に言った。


「教授には、修復した全パーツを繋ぎ合わせ、組み上げる作業の監督をお願いしたいと思っています」




その日はシャルの手配してくれた宿泊施設に泊まり、次の日の朝から、組み上げ作業が始まった。


教授は、監督するというより、ほとんど自ら作業していた印象だ。教授は素人の私でも分かるほどに手際が良く、夕方には作業が完了した。


当初の見積もりでは三日かかるという話だったので、スタッフたちは本当に驚いていた。


組み上げる過程で分かったことの一つは、このロボットには特殊な『タグ』が取り付けられていて、何者かがロボットの位置を常に追跡していたということだ。


教授はそのタグを、そのまま残して組み立てた。それは、追跡していたのが誰なのかを知るため――いわば重要参考人を泳がせる・・・・ような目的だ。




組み上げが完了したとき、シャルが教授に質問した。


「頭脳はどう?」


「組んだだけでは、起動しない」


「そうか。じゃあ、キャンディスに頼むか」


「来られるのか?」


「もともと、このあとのAI分析を頼んでるからね。あ、でも遠隔でね」


――シャルの話から推測すると、AIの専門家『キャンディス』という人物が、遠隔操作で、ロボットのAIを修復するということか。


キャンディスという人が、教授から信頼されていることが伝わってくる。


この人物も、アメリアが言っていた『世界の四大エンジニア』の一人なのかもしれない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る