〈10〉そんな気がする

その後、教授が自由に使えるという宇宙ステーション内の研究室に案内され、何人かの大学生や、研究スタッフを紹介されたが、この時点ではほとんど覚えられなかった。


宇宙ステーションの研究室は、教授が持っている数多くの研究施設の一つにすぎないそうだ。地上や、海底などにも、教授の研究施設があるとのこと。




ちなみに、あの黒い戦闘機をけしかけた犯人は、後の調査により、あの爆発事故を起こした重機を持ってきたスタッフと、その関係者たちだということが判明した。


つまり、あの重機の実験自体が、教授の命を狙うためのフェイクであり、教授と運転を交代したことも、そのまま爆発事故で教授を殺害するためだった。


その策略が失敗し、暗殺の第二段階として、あの戦闘機をけしかけて、墜落させようとしたのだ。


大統領の忠告どおり、私はさっそく教授が命を狙われる事件に遭遇してしまったわけだ。




新ネットの可能性について、あれからいろいろ考えてみたが、きりがなくて、宇宙から帰った日の夜は、ほとんど眠れなかった。


新ネットは、これまでのテクノロジーを全否定しかねないほどの技術のような気がする。


ただ単に、さまざまなものをA点からB点へ転送できるというだけで、テクノロジー全体の考え方が一変すると思う。


よく考えてみると、交通機関や電気、ガスなどのインフラ系はもちろん、さまざまな工業製品の内部についても、電気や燃料、エネルギーなどを『運ぶ』ことから成り立っている。


もしかしたら人間の経済活動の全てが、何かをA点からB点へ運ぶことの集合体なのかもしれない。もしそうなら、ネットを通して、あらゆるものを転送できてしまう技術は、文字通りに世界を変えてしまうはずだ。


私たちは、旧ネットのことを、とても便利なものと感じていたはずだ。しかし、このような新しいネットが登場してしまうだけで、その全てが古臭く感じられてしまう。

古いネットは、単に情報しか・・転送できないことに気付いてしまうからだ。


とにかく教授の助手になれば、いろいろと新ネットについての知識が得られるのが嬉しい。やりがいのある面白いものに、やっと出会えたと思う。


いや、ウィル教授の助手をしていれば、面白いことがずっと供給され続けるのかもしれない。――そんな気がする

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