第21話「モーラの弱点」

 かつーん、こつーん


 キィキィキィ……!



「きゃ!!」


 薄暗い地下墓所を歩く二人。

 モーラはと言えば耳元をパタパタと飛び去って行った蝙蝠に驚き、ゲイルにしがみつく。


「ちょ、ちょっとモーラ近いよ。それじゃ歩けない────あと、なんか腕に」


 むにゅ


「ち、違うから!! ちょ、ちょっと蝙蝠が苦手なだけで──」

「いや、なんも言ってないよ?」


 なんか一人で否定して、一人で騒いでいるモーラ。



 …………あ、もしかして。



「………………アンデッドが苦手だったりする? 怖いのとかが、実は弱点だったり──」

 んな?!

「ち、ちちちちちちちち、違うし!! 違うわよ! 違くてぇぇええ!」


 いや、そんな力いっぱい否定せんでも。


「アンデッドなんてよゆーだしぃ? ってゆーかぁ、アンデッドなんて、何体現れようが、千切っては投げ千切っては投げ──」


『コカカカカカカカカ!』


 突如、わき道からスケルトン出現。

 武器なし、防具なしの裸スケルトン──雑魚だ……。


「きゃあああああああああああああああああああああああああ!!」

「うぉわ?!」


 なになになに!? 誰? 

 何の声!?


「ぎゃああああ! ぎゃああああ!! でたーーーーー!!」


 ……ミリミリミリ!!


「って、耳ぃい!」

 いたたたたた!! 耳! 耳ぃぃい!


「きゃあああ! きゃあああああ!! きゃあああああああ!!」


 モーラだ。モーラの悲鳴だ!!

 っていうか──……。


 ミリリリリ! 


「いだだだだだだだ!! 耳、耳!! 耳がちぎれるから!! 引っ張んなし!──あと、ランタン投げないで!!」


 ガチャーン、パリン。

 ぼわぁぁ!!


『コッカカカカカアアアァア!!』


「ぎゃああ!! ぎゃああああああああああああああ!! いやぁぁああ、骨が動いとるぅぅううう!」


 いだいいだいだいだいだいだい!!


「千切れる千切れる!! 耳がちぎれる! いだだだだだだあ!」

『コカカカカカカ♪』


「ぎゃああああああああああああああああああああああああああ!! こっち来んじゃねーーー!!」


 パニックを起こしたモーラによってゲイルはボッコボコにされた挙句、投げつけたランタンが棺に命中して、中の死体をブチ曲げた挙句、ボロボロに死体の衣服に延焼して────もう、なにがなにやら! もう、どえらいことに……!




 ──ぎゃあああああああああああああああああああああ!!!




「……────で、ちょっとは落ち着いた?」


 散々騒ぎまくったモーラは、いま床の上に正座してゲイルに説教を受けている。


「は、はい。ご、ごめん」

「ごめん、なさい・・・──でしょ? 置いてくよ?」


「はい! ごめんなさい!! もう、なんでも! アタシをなんでも好きにしていいから置いていかないでください!!」


 はやッ!!

 しかも、そこまで言ってない──……ゴクリ。す、好きに……。


「……触ったら殺すからね」

「あ、はい」


 何もしませんよーだ。ぴゅるる~♪

 ……っていうか、何でもする言うたやん!!


「──で、モーラは、そのー。……アンデッドが苦手なの?」

「う、うん。……ゴメン」


 いや、謝らなくてもいいんだけど──。


「苦手なら、無理についてこなくてもよかったんだけど……」

 邪魔だし。

「だ、だって、……一人でリッチ討伐だなんて、心配だったから──」


 もじもじ。

 顔を赤らめて言うモーラにゲイルは苦笑する。


(ちょ、ちょっと可愛いな)

 ポリポリ


「だ、大丈夫だって言っただろ? ほら、俺はアンデッドとは相性がいいんだって────なんたって呪具師だからな」


 そういって、転がっているスケルトンの下顎とアバラをいくつか回収する。

 これは討伐部位になるし、その他の素材も……安いが呪具の材料になる。


「ほ、ほんとにゴメン……。アンデッドはどうも怖くて……」

 おいおい……。

「はぁ……。ホントそれでよくついてくるなんて言ったよ──ま、」


 「──心配してくれてありがとう」そう、言うと手を差し伸べ、モーラを立たせる。


「じゃ、悪いけど我慢して付いてこれる? 怖かったら目をつぶってていいから」

「え、いや、それじゃ迷っちゃうし──」


 ちょいちょい。

 ゲイルは羽織っているマントの裾を示す。


「掴んでていいから。ゆっくりついてきて」

「う、うん……ありがと」


 そう言って本当にマントの裾を掴むモーラ。


 ポリポリと頬を掻くゲイルは、

「…………冗談だったんだけどな」(ボソッ)


「なんか言った?」

「いんや。……じゃあ先に行こう」


「うん!」


 本当にマントの裾を掴んだままモーラは歩き始めた。

 正直、マントが突っ張って歩き難いんだけど……。

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