勇気をくれた、変身ベルトの、夢

"随分大きくなった"

 背後から声が聞こえてきた。よく覚えている声だった。だが、声の持ち主は今ここには居ないはずだ。

「もう随分前のことですから。どうしてまた、ここへ。」

"君に夢ができたと聞いた"

「夢?ああ、あのブログ、読んでくれたんですね。」

 彼は僕のおもちゃを手にとって、しばらく眺めていた。


 やがて、口を開いた。

"今も君はギアを持っている"

「買ったんです。あなたのことを思い出して。」

"この黒いレリーフは私だ"

 彼はしばらくおもちゃを見つめると、ベルトを腰に巻き、黒いスタンプを手にとった。

"使っていいか"

「どうぞ。それはあなたの……」


 彼は右手に持ったスタンプを高く掲げると、"変身!"と叫び、ベルトのバックルに装填した。ベルトは、あの頃を思い起こさせる懐かしい歌を歌った。


"覚えていたのか"

「片時も、忘れたことはありません。」

"ありがとう"

「この後は、どちらへ。」

"隣に立っている。全てが終わるまで。"


 そう言って、彼の姿は見えなくなった。

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星にゃーんの掌編集 星にゃーん @takoeight0821

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