中学2年夏の朝友達の家の玄関で出会った恋人

 プログラミング言語が8年来の恋人になったのは、僕がまだ中学二年生だったころのことです。ある平日の朝、僕はいつものように支度をして、友達の家に行きました。毎朝その友達と通学していたのです。友達は非常なねぼすけで、しかもマイペースなものですから、その日も僕のチャイムで目を覚まし、それからゆっくりと朝ごはんを味わうのです。

 友達の家の玄関は、僕の最初の研究室でした。いるのは僕だけ。カバンの中には何冊もの技術書。時間は20分。何にも勝る環境です。そしてついに思いつきました。素晴らしいプログラミング言語のアイディアが天から降ってきたのです。その名はMalgoといいました。「まるご」と呼びます。⑤。

 Malgoはとにかくすごいプログラミング言語です。まず、Malgoはとても小さなコア言語と、それをもっと素敵にするメタ言語からなります。とても綺麗な書き味で、スラスラと筆が進みます。できあがるプログラムもよくできています。筆が勝手によいプログラムを書いてくれるのです。

 さて、今度はMalgoを動かさなくてはいけません。これはとても大変なことです。それは分かっていたのですが、思ったよりも大変だったことを告白します。未だ恋人の姿は地の果てにあるようです。

 僕は、あの夏の思い出に囚われたまま、生きてゆくつもりです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る