われわれの友

 アイザック・アシモフの著作から「陽電子頭脳」と名付けられたそれは、人々の生活に浸透しつつあった。

 多くのロボットが作られた。そのほとんどは人間の姿を模していた。というのも、それらに搭載されているのは陽電子頭脳であり、陽電子頭脳は人間らしい人格を持っているように見えたからである。


 人とロボットは、初めから友好的な関係を結べたわけではなかった。雇用機会の喪失を恐れたもの。無慈悲な知性による破壊を恐れたもの。理解出来ぬ技術の結晶を恐れたもの。人々は恐怖し、戸惑った。


 しかし、人々は多くの物語を知っていた。正しい心を持って世界を救ったロボットの物語があった。アンドロイドと人間の恋を語った物語があった。誰もいなくなった地球で一人孤独に健気に生きる機械の物語があった。ロボットが人間に気に入られるのにさほど時間はかからなかった。人類は新たな友を受け入れる準備が出来ていた。


 ここに一つの物語がある。美しい物語がある。友との語らいに華を添える物語がある。この物語が、その脳の材質を問わず、人々に語られることを願う。

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