最後の秋
今日の天気は酷い。鉛やらカドミウムやらの重金属がしっかり溶け込んだ酸性雨が窓を打っている。雷が送電系のどこか重要な部分に致命傷を与えたらしく、電力の供給は止まっている。停電のせいで灯りは旧時代のバイオ燃料を燃焼させた炎しかない。俺をシャットダウンしておけば電力は足りるが、同居人は一人になるのを嫌がった。
野生化したボットたちがこの機に乗じて近くのタワーを襲ったらしく、しばらく前からネットも止まっている。警備システムは停電と悪天候がいっぺんに来てまともに機能していない、だから今の政府は駄目なんだ、と同居人が冗談めいてぼやいていた。政治が完全自動化されて20年経った。結局あれが人の手に残った職業の最後の一つだった。
手元のタームの天気予測によればあと3時間で天候は回復するらしいが、このポンコツが一人で正しいことを言ってみせた試しはない。幸いにも今日は休日だ。雨が上がるまでおとなしく引き篭もっていればいい。先月北極でサルベージした小説の物理書籍が届いているはずだ。これぞ読書の秋、と同居人は何やら上機嫌だった。
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