第78話 部屋割り
「そう言えば部屋なんですけど、三つのうちどこにしますか?」
明らかにアメリアとかなめを無視して菰田はカウラに話しかける。
「私は別にこだわりは無いが」
「それじゃあお前が一番奥の部屋な」
そう言ってかなめは粥を口に運ぶ。その表情は明らかに量が足りないと言う不機嫌なものだった。
「じゃあ私が手前の……」
「テメエだといつ誠を襲うかわからねえだろ?アタシがそこに……」
「それはやめるべきだな。アメリアより西園寺の方が危ない」
「どういう意味だ!ベルガー!」
完全に菰田のことを忘れてカウラとかなめがにらみ合う。
「やめましょうよ。食事中ですし」
誠のその言葉で二人はおとなしく座った。誠の言うことはカウラとかなめは聞くという事実が食堂中に知れ渡る。痛い視線を感じて振り返った誠の目の前に、嫉妬に狂うとはどういうことかと言う見本のような菰田の顔があった。
「神前、お前に言われると腹が立つな」
そう言いながら菰田は高菜の握り飯に手をつけた。
「菰田君……嫉妬は見苦しいわよ」
アメリアの時々開く鋭い眼光のひと睨みでヒンヌー教徒の刺すような視線が止んで誠は一息ついた。
「でも、ここは本当に安くていいわね……家賃が。この部屋の賃料なら近くにロッカールーム借りても今の半分の値段だもの」
アメリアはゆっくりとリゾットをすする。
「しかし、島田の奴。将校に昇進したくせに何でここを出ねえのか?」
「将校と言っても准尉だ。あくまで正規の士官が技術部部長に昇進するまでのつなぎだからな」
かなめの愚痴に付き合うカウラ。いつものことながら見事なコンビネーションだと思いながら誠も粥をすする。
一方、高菜の握り飯を手にする菰田は明らかに不機嫌そうに見えた。
「そういえばグリファン少尉が来てないですね」
誠は島田とセットの彼女のサラのことを思い出しながらそう言った。
「サラか?あいつは低血圧だからな」
いつの間に気に入ったのかかなめはリゾットを満足げに食べていた。携帯をいじっているアメリアはサラとパーラに連絡をつけるつもりだろう。周りを見れば当番の隊員達が食器を戻している。
「アイツ等また有給か?残りあるのかよ」
「西園寺。貴様に心配されるほどではないだろ?」
そう言うとカウラは食べ終わったトレーを近くにいた技術部の男子隊員に渡した。
「サラとパーラなら駐車場まで来てるって。島田の馬鹿がメンチカツ弁当じゃなきゃ嫌だとか言ったもんで5軒もコンビニ回って見つけてきたって怒ってたわよ」
「奴らしいや」
かなめがそう言って笑う。とりあえず誠も場の流れに従うようにして笑みを作って見せた。
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