朝の出来事
第37話 どうやらまたやらかしたらしい
誠は一人、ふかふかのソファーから起き上がった。つぶれはしなかったものの、地下のバーで何があったのか、はっきりとは覚えていない。
かなめにはスコッチのような蒸留酒を多く勧められたせいか、頭痛は無かった。二日酔い特有の胃もたれも無いがなぜかすっぽりと記憶だけが抜け落ちていた。
「起きやがったな」
髭剃りを頬に当てている島田が目をつける。
「何か?」
誠はその島田の複雑そうな表情に嫌な予感しかしなかった。
「何かじゃねえよ!人が寝ているところドカドカ扉ぶっ叩きやがって!お前、酒禁止な」
島田は指をさして怒鳴りつける。
「島田先輩ー!」
取り付く島の無い島田を見送ると、誠はバッグを開けて着替えを出し始めた。
「あのなあ、あの怖え姉ちゃんと何してたかは詮索せんが、もう少し酒の飲み方考えたほうがいいんじゃないか?」
「そうは思うんですけど……」
島田は髭剃りを置いてベッドに腰掛ける。誠はシャツを着ながら昨日のことを思い出そうとするがまるで無駄な話だった。
「じゃあ次は僕が」
誠も髭剃りを持って鏡に向かう。島田は立ち上がった誠の肩を叩いてつぶやく。
「まあ、あれだ。あの席にいてメカねーちゃんをキレさせなかったのは褒めとくわ」
言うだけ言ってさっぱりしたのか、島田はそう言うと新聞を読み始めた。
誠は急いで髭を剃り続けた。
「それにしてもいい天気だねえ」
新聞を手にしながら振り返った島田の後ろの大きな窓が見える。水平線と雲ひとつ無い空が広がっていた。
「神前、腹減ったから俺先に行くぞ」
そう言って島田が立ち上がる。誠は振り返ってその後姿に目を向ける。
「すいません、先に行っててください」
そう言いながら島田を見送り、誠はジーンズを履いた。扉が閉まってオートロックがかかる。
「ちょっとは待っていてくれてもいいんじゃ……」
とりあえずズボンをはきポロシャツに袖を通す。確かに絶好の海水浴日和である。誠はしばらく呆然と外の景色を眺めていた。
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