19話:mission unkossible 中編・下

 前回のあらすじ!

 マンティコアのう○こを探し出すべく、コッソリ学生寮を抜け出した俺は、マンティコアウィングで空を飛ぶ!

 上から魔物使いの国を探索すれば誰にも見つかることなく、マンティコアが飼育されてる施設を見つけ出せると考えた俺だったが、この国デカい建物が多すぎる!

 初っ端から間違えて博物館に侵入しちゃって、何とか抜け出したけど本当に見つかるんだろうか……!?


(まずはここ! 見るからに魔物を飼ってそうな木造の建物、そして獣の臭い! これは間違いなく魔物宿舎――――)


「「「ブモオオオオオオ!!?」」」

「ギャン!?」


 目標の建物かとおもって突撃した場所がいわゆる牛舎という奴で、突然の捕食者のエントリーに狂乱した牛系魔物たちにどつきまわされました。

 ええい! 気を取り直して次だ次!


(檻だ! 滅茶苦茶頑丈そうで、いかにも凶暴な魔物を飼ってそうな雰囲気あるぞ――――)

「遅かったじゃねぇか、漸くここから脱走でき……ひ、ひいいいいい!!? マンティコア!? ちょ、まままってくれぇ!? 話が違うじゃねぇか!? 始末されるなんて一言も聞いてない!? 聞いてないぞぉぉぉ!?」

「ガウッ!?」(ちょ、人が入ってるし!? めっちゃ騒いでるし!?)


 凶暴な犯罪者を収監してる留置所だったとさ。

 脱獄する気満々の奴の目の前に降り立ってしまってさあ大変。

 もっとも、近くにいた脱獄の手引きをする奴諸共、睡眠魔法で眠らせたから何とかなったけどさ。

 そして挙句の果てには……。


「オラぁ! とっとと金を詰めろ! 早くしねえと俺とゴブリンとでてめえを○すぞ!」

「ゴブゴブー!」

「ひぐっ……、いやっ、やめてくださぁぁい……!」

(なーんでこんな忙しい時に二回も犯罪の現場に出くわすのかなー!?)


 適当にでっかい建物に入ったら、今まさに強盗の被害に遭っていて、店員さんが脅され泣きながらお金を袋に詰めてる場面を覗いちゃった。

 なんでだよ畜生!


 というか本当にどうしよう、いくら急いでるからって流石にこれは見なかったふりは出来ない。

 かといって助けに入るのも、マンティコア姿の俺が突然上から降ってくるなんて、悪夢のような状況になるに違いないし……。


 まてよ、悪夢?

 ピキーンと閃いた、悪夢になるんだったらいっそ――!


「止めなさい悪党っ! マンティコアキィィック!」

「ゴブビッ!!?」


 転移の魔法でゴブリンの真上に移動して、人語で技名を叫びながら蹴り潰してやる。

 緑色の肌をした小人であるコイツらは手先は器用だが体は軽い、その体躯はボールのようにバウンドして、ピクリとも動かなくなった。


「ぴぃっ!?」

「んなっ!? なにっ、うおおおお!? ま、マンティコアああああ!?」

「問答無用!!! マンティコアパァァァァンチ!!!」


 見るからに悪人面した強盗は、一瞬でのされた相棒と乱入した俺に気付く。

 だが、気付いたところで何もできるはずがあるまい。

 人語を喋り二本足で立つマンティコアが突然現れて、技名を叫びながら殴りかかってくるなんて状況に対処できるわけないだろう。


「「きゅぅ~」」

「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ……」


 強盗犯は腕っぷしに自信がありそうな奴だったが、俺のこぶしの前に一発KO、無事鎮圧完了した。

 はぁぁ、よかった、奇襲するためとはいえ人を殴るなんて久しぶりだし、店員さんも無事だしでほんとによかった。

 魔法は便利だけど発動するときに光ったり音が鳴るから奇襲には全然向いてないし、着ぐるみマンティコアくんのパワーがなかったどうなってたことやら。


「ふぅ。あっ、そこの店員さん、怪我はないですよね」

「ひっ!? は、はい、っていうかどどどうなってるんですかマンティコアが、しゃべ、喋って、わた、私を助けて、食べないで下さ……!?」

「食べませんって」


 その一部始終をご覧になった店員さん、当たり前だけどパニックになっている。

 強盗に遭った時より混乱しているのだが……これこそ、俺が狙っていたことだ。

 ぽふっ、と震えるその肩に優しく手を乗せてあげる。


「はひっ!?」

「落ち着いてください、私は正義のヒーローマンティコアマン。そしてこれは夢です」

「ゆ、夢? マンティコアマン?」

「そう、夢。貴女は今、夢を見ているんです」


 悪夢のような状況から着想を得た、「全ては夢で起きたことにする作戦」これで誤魔化しきる!

 店員さんに今起きたことは夢の中の出来事だと信じ込ませるため、マンティコアの外見のまま地声で語りかける。


「冷静に考えてみてください、強盗に入られて、絶妙なタイミングで正義のヒーローが助けにくるなんて、夢でなかったらなんだというのですか?」

「たっ、確かに!? ということは私、寝ちゃってるんですか……?」

「ええ、その通り。貴女は夢の中です」

「はは、そっか、夢なんだぁ……よかったぁ……」

「はい、ですので目覚めたら何事も無かったかのように強盗犯が倒れてますが、それは気絶した貴女が突如秘められた格闘術の才能に目覚め、無意識のうちに返り討ちにした結果なのです」

「夢から覚めても夢みたいな状況なんですか!?」


 うん、夢オチするからといっても、強盗犯を逮捕するまで付き合う時間もないからね。

 残念ながらコイツらの処理は店員さんにしてもらおう。

 強盗犯が当分目を覚まさないよう、睡眠魔法を念入りにかけるくらいはしておくけど。


 ……ん、そうだ!

 夢と思い込ませる為とはいえ、こうして現地の人間と意思疎通できるならチャンスだ。


「ところで貴女。我が同族、マンティコアがいそうな場所を教えてくれませんか?」

「へっ?  ど、どうしてそんな唐突に……というかマンティコアマンさんってマンティコアの一種なんですか」

「まあまあ、夢ですから。夢の中とはいえ助けたお礼をすると思って」


 この店員さんにマンティコアが飼われている場所を聞いてみよう。

 正直言って一人で国中を探し回るのにも限界を感じていたのだ。


「んー。 学校の魔物宿舎なら、大抵の魔物が住んでいると思うんですけど……」

「――ま、マジですか」


 灯台元暗し、というやつであった。

 学校って、知ってる場所じゃないか。


「はい。お城の裏手にある、大きな木造の建物なんですけど」

「おお、ありがとうございます。それが分かれば私も同胞たちの元へ帰れます。それでは貴女に目覚めの呪文を、ラフ、ラム――――」

 

 目覚めの呪文と称して、睡眠魔法を唱える。

 強盗犯どもに掛けたものより軽くかけてあるから、確実に店員さんの方が先に目覚めるだろう。


 さて、時間を取られたと思ったが結果オーライだ。

 急ごう、学校へ。夜が明ける前に!


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