Act:04-8 バーガー・ラプソディ

「バーガーのセット、準備が終わった」


「ありがとう。休憩してもいいよ」

「りょうかいだ」


 いつもは混んでる時間帯。

 だが、今日は見慣れた客しかいない。……といっても、1人だけ。


 奥のボックス席で誰も頼まないフィッシュメニューを楽しむカナタ教官だ。


 一方、店は僕とクロエだけだ。

 妹も母も、用事があって1日不在。今のクロエなら特に問題は感じなかった。

 ただ、ここ最近は休みを取ることが増えている。

 さすがに理由を問うことはしない――が、気になるのも事実だ。



 もうすぐディナーの時間になる。忙しさで目が回ることだろう。

 それまで体力を温存しておこう。


 そう思っていると、出入り口のドアに付いていたベルが鳴る。

 入ってきたのは、もはや出迎える必要も無いほどの常連であるヨナとレッティだった。

 案内されるより先にカウンター席に向かう。


 注文するのは、おそらくのものだろう。


 貯蔵庫からハンバーガー用のミートパティとバンズを回収。

 早速、フライパンでミートパティを焼こうとした矢先――レティシアの不機嫌な声が店内に響き渡った。




「――もう一度、言ってみなさいよ」



「何も、そこまで怒らなくてもいいだロ……」

「あたしが何を頼んだっていいじゃない。あたしの金よ」


「いや、それはわかってるんだけどヨ。たまには……違うの頼んだっていいじゃねぇか?」


「何が問題なのよ!?」


 様子がおかしい。

 レティシアとヨナが騒がしいのはいつものことだ。

 だが、今日のレティシアはどこか抑えが効かない感じがする。


 ヨナが視線だけでこちらに救いを求めてきた。



 僕は手を洗い、すぐに店内へと向かう。

 レティシアに声を掛けようとした時、僕の横を――カナタ教官が追い抜いていった。



「やあ、ヨナ君」



「きょ、きょうか~ん!!」


 いつも通りの穏やかな表情。

 腕を組み、2人の間に立つ。



「どうしたんだい? 話してみろ」

 カナタ教官の言葉に、レティシアはそっぽを向きながら答える。



「ヨナが『オメーはハンバーガーしか言葉知らねーのか』って言ったから」


「――いや、あのですね。チームメイトとして食生活の心配を……」

 自分でも失言だとわかっていたのだろう。

 口走った言葉を取り繕う姿勢を見せてしまったことを、すぐに後悔しているようだった。


「たしかに、彼女はいつもハンバーガーを頼んでいるみたいだが……」


 小さく笑うカナタ教官。

 この表情から叱責が飛んでくるとは誰も思わないだろう。



「ここは好きな物を食べる場所だろう? 人の好みをあれこれ言うもんじゃない」


「へ、へい……そうですね」


「だが、私も魚料理ばかり食べているからね。よく心配されるんだ」

 事実、カナタ教官は魚以外を注文したことがない。


 魚は骨が取り除けなかったり、独特の臭みがあったり、食中毒を引き起こしやすかったりと、飲食店が数ある中でも扱っているところは少ないと聞いていた。

 それは単に、調理の方法を知らないというだけだと僕は考えている。 

 また、流通も少ない。


 ベイサイドの人工海、養殖場等で育てられた魚介の多くはファクトリープラントで加工食品に使われる。

 主に白身魚を使った『フィッシュケーキ』や『ヘルシー・ソーセージ』が有名だ。

 ペーストやフレークといったように、原形を留めない場合が当たり前だ。


 生の魚や切り身等を使った料理を食べるというだけで、変人扱いされることも多い。

 それでも、魚は美味しい。

 だから、僕はフィッシュメニューを出せるようにしている。



 ――まぁ、食べるのは本当に教官だけなんだけど。




「お騒がせしてすんませんでした……」


「いや、こちらこそ介入してすまない」


 この場はヨナが悪役になることで収まったようだ。

 ちょうど、店内にいるのだからこのまま注文を取ってしまおう。


 カナタ教官と入れ替わるように、僕は2人に近付いた。

 注文を書くメモを取り出し、声を掛ける。



「ハンバーガーセット、2つ。コークだよね」


 レティシアは不機嫌なままだ。そっぽを向いたまま、大きく頷いてみせる。

 一方、ヨナはニヤニヤとしながら僕を見ていた。



「……ヨナ?」



「なぁ、たまには違うの作ってみてくれよ」


「……そういうの、困るよ」

「頼むゼ、ここ最近は新メニューも食えてねェだろ? たまには何か……こう、『日替わりセット』みたいなのやってみてくれよ」






「そういうのが欲しいなら、余所に行けばいいじゃないか」


「オイオイ、客にそういうコト言うなってノ!!」


 ――たしかに、その通りではあるけど。


 事実、僕たちの店ではいつも同じメニューを出している。

 在庫の関係でポタージュだけは毎日違うものを作っているけど、ヨナが求めているのはそういうことではないのはわかっていた。


 しかし、客層的にそういったことをしても収益に繋がらないのも事実だ。

 ここに来る人のほとんどはレティシアやカナタ教官のように「同じ料理」を求めている。

 そういった意味では、メニューのほとんどを網羅しているヨナのような客は限りなく少ない。ありがたいことではあるけど。




「……考えてみるよ」


「頼んだゼ!」


 とりあえずの注文を取って、キッチンへと戻ってくる。

 すると、クロエが準備を進めていた。

 バンズ、ミートパティをグリルして、スライスした野菜を並べている。



「注文はハンバーガーセットだな?」


「ああ、そうなんだけど……」


 ヨナの『いつもと違う』という言葉が頭の中で引っ掛かっている。

 出来ないことはない。それでも、適当な物は作りたくはなかった。

 せめて、出すなら試作をしてから……食べる相手が身内であったとしても、仕事で対価をもらう以上は適当に済ますことは許せない。


 ――そういえば、クロエはあちこちで食べ歩いているみたいだな。


 以前、常連のお客さんから、クロエがセントラルシティの飲食店や屋台で食事をしていると聞かされた。

 もしかしたら、アイデアを持っているかもしれない。



 ――聞くだけ、聞いてみよう。



「……ヨナがさ、いつもと違うハンバーガーを作ってみろって言ってるんだけど」


 僕の言葉を聞いて、クロエは手を止めた。

 数秒、深く考え込む様子を見せてから、再び僕に向き直る。



「わたしに考えがある」


 いつもと変わらない無表情。

 でも、どこか自信満々のように見えた。




「聞こう」


 僕の返事に答えるように、クロエはホットスナックのストッカーを指差した。


「今日は注文が少ない。フライドチキンが余っている」


 クロエの言うように今日は来客も少なければ、デリバリーの方も微妙だった。

 だから、ホットスナックのストッカーには朝に揚げたフライドチキンがいつも以上に入っている。



「ミートパティの代わりに、フライドチキンを入れよう」


「いいけど、ソースはどうするんだい?」

「カットしたトマトをマヨネーズで和えたものを乗せる。あとはハンバーガーと同じく野菜とバンズで挟む、ソースにトマトを使っているから具のスライストマトは省いてもいい」


 クロエの提案をイメージしてみる。

 すると、なんとなくイメージ元の料理が想像できた。



「ブリトーっぽいね」


「ああ、屋台で食べた」


 クロエが言うのは、セントラルシティのオフィス街。その公園に出店している出店のことだろう。

 僕もデリバリーするついでに食べたことがある。チキンブリトーだ。あれは美味しかった。

 バンズとトルティーヤの違いはあるが、結局は同じ小麦粉だ。

 

「試す価値はありそうだね……ソースになるマヨネーズの方に少しだけスパイスを入れよう。ペッパー系かな」


「ホットソースを入れてもいいと思う」


「それをやるんだったら、バッファローチキンがいいけど……バーガーで食べるなら骨を取らなきゃ」


 話しながらも、クロエはミートパティを焼き上げた。

 まずはレティシアの分、セットを用意する。


「わたしが出してくる。しーけーは内容を詰めて欲しい」

「――ありがとう!」



 クロエのフライドチキンをミートパティの代わりにする案は悪くなかった。

 しかし、そのまま使うと骨が邪魔になってしまう。

 

 ブリトー屋のチキンブリトーは、骨の無い肉を使っていた。

 同じように骨が排除されているものを揚げれば、似たようなものは作れる。

 しかし、それでは時間が掛かりすぎてしまうのが問題だ、


 ――バラすか?


 骨付きのフライドチキンを解し、骨を取り除く。

 多少不格好にはなるが、安心して齧り付くことができる。

 しかし、せっかく全体を包んだ衣を崩してしまうのはもったいない気もするが……



 戻ってきたクロエに現状のアイデアを相談する。

 すると、クロエはそれを肯定してくれた。


 理屈としては、解してフライドチキンのジューシーさを失っても、マヨネーズの脂で補填できるだろうというものだ。

 それに、崩した衣はスナックのような食感になる。そういった意味では無駄にはならない――と、面白い内容もあった。



 クロエがあちこちで食べていたのは、やっぱりを果たそうとしてくれていたのかもしれない。

 記憶を失ったとしても、クロエが来てくれて良かった。



 クロエがバンズを焼いてくれている間に、骨が取り除きやすい物を選んでフライドチキンの肉を解す。

 もちろん、完全に解すわけではない。あくまで骨を除去するのが目的。

 そして、缶詰のカットトマトの水気を切ってからマヨネーズで和える。そこにブラックペッパーとレモンの果汁を加えて、ソースの完成。


 あとはいつもと同じようにバンズと野菜――トマトは抜いて、これらをサンドして包装紙に入れれば、完成。


 いつも通りの盛り付け、ドリンクのコーラを用意してトレーの上に並べる。

 それを、手に店内へと向かった。



 期待している様子のヨナ、その目の前にトレーを置く。

 そして、僕は堂々と言い放った。



「どうぞ、フライドチキンバーガーです」























「へっ? マジで作ったのかヨ」

























「えっ?」





「ん? ありゃ、冗談のつもりだったんだが……」


 ヨナは困ったような顔をした。

 すると、隣に座っているレティシアから手刀が飛んでくる。 

 

 見事な一撃が彼の頭部に打ち込まれ、痛みで悶絶している。

 それを冷ややかな目で見下ろすレティシア。コーラの入ったグラスを傾け、音を立てずにテーブルへ降ろす。



「言わなきゃよかったのに」


「す、すみません……」



 ――今日のヨナは謝ってばかりだ。

 

 しかし、事の発端はこの店のレパートリーの少なさに起因している。

 僕がもっと、たくさんのレシピを考えたりすれば……レティシアもハンバーガー以外を食べたくなるかもしれない。



「せっかく作ったんだし、食べてみてよ」



「値段、上げないよな?」

「美味しくなかったら、払わなくていいから」


「――CKが作る料理がマズかったことねーだろ、不安にすんじゃねーっテ!」


 そう言って、フライドチキンバーガーに齧り付くヨナ。

 口をモゴモゴさせながら、声にもならない感嘆を漏らしていた。

 咀嚼して、飲み込み。コークを一気に煽る。



「うめェ!! これ、すげえうめえぞ!!」


 ヨナは感激している様子だ。どうやら成功だったらしい。

 これはクロエのアイデアが形になった結果だ、彼女が食べ歩きしていたおかげで助かった……



「でも、それバーガーじゃないでしょ。そんな邪道は認めないわよ」


「うるせー、文句言うなら食ってからにしろ」


 すっかり上機嫌のヨナに言い返されてしまったレティシア、ムッとした様子で僕を見る。


「あたしにも、コレと同じの」


「フライドチキン余ってるから作れるよ。あと、値段はハンバーガーの単品と同じ価格にしておくね」


 追加注文をメモに記載し、キッチンに戻ろうとする最中。カナタ教官もオーダーを待っていた。

 奥のボックス席に向かうと、カナタ教官は笑顔で僕を見上げる。


「その、悪いんだけど……私にもバーガーを作ってみてくれないか?」


「えっ? バーガーですか……?」


 まさか教官がバーガーを頼むとは思っていなかった。

 いつも魚を使った料理しか食べない人だから、こういった料理に興味があるとは微塵も予想していなかった。



「わかりました。では――」


「もちろん、魚で頼むよ」



 ――やっぱりそうなるのか……


「とりあえず、やってみます……」

 

 注文を受け、キッチンに戻る。

 クロエにフライドチキンバーガーを作るように指示を出し、教官から注文を受けたフィッシュバーガーをどう作ろうかを考えることにした。



 今日、教官には白身魚のソテーを出していた。

 その魚はシーバススズキ、おかわりを想定してもう1食分を残している。

 しかし、これをただバンズで挟むのでは面白みが無い。


 それに、バーガーに挟んだところでミートパティほどのジューシーさは出せないだろう。

 


 ソテーでも充分にジューシーさを出すことは可能だ。

 しかし、魚肉は挽肉よりもボロボロに崩れやすい。小麦粉を塗してから焼いても、その性質は変わらない。

 

 ミートパティにおけるというのは肉汁――つまりは、脂だ。

 魚肉にも脂はあるが、牛肉や豚肉のそれとは大きく異なる。

 そこに植物性の油を使うことで、補うこともできるのだが……



 ――難しいな。


 魚介をミートパティの代替とするならば、脂と具としてのまとまりが必要だ。

 小麦粉を振って焼くだけでは足りない――そうなると、打てる手は1つしかない。


 牛乳、鶏卵、小麦粉でバッター液を作る。

 衣となるスパイスを加えた小麦粉を用意すれば、フィッシュフライの準備は完了。


 フライパンに植物性の油を注ぎ、コンロの電源を入れる。

 あとは水気を取ったシーバスの切り身をバッター液に潜らせ、小麦粉を入れた容器に落として粉を纏わせる。


 あとは適温になった油の中に入れて、揚げるだけ。

 フライパンの中の油が泡立ち、切り身を覆う。

 あとは、ソースの問題が残っていた。



 さっきのフライドチキンバーガーに使ったカットトマトとマヨネーズのソースも合うことは間違いない。

 しかし、それはレティシアの分も作ったせいでほとんど残っていなかった。


 フライにしたから、油のおかげでジューシーさは足りている。

 今度はが必要だ。


 


 教官はこれまで伝統的なディナーメニュー、もしくは生食という極端な形式の料理しか注文したことがない。

 ならば、ここは感を出すのも悪くないだろう。


 余ったフライドチキンを蘇らせるレシピ、そのソースを使うべきだ。

 


 早速、冷蔵庫からケチャップとホットソースを取り出す。

 小さなフライパンにケチャップをぶちまけ、最低出力で加熱。

 それをしている間にフライをひっくり返す――衣の色はベストな感じだ。


 ケチャップがふつふつと沸いてきたら、そこにバターとホットソースを投入。

 掻き混ぜるようにして、バターとケチャップを馴染ませる。軽く塩を足して、バッファローソースの完成。 



 油の中にいるフィッシュフライを引き上げ、油を切る。

 フライの温度が多少下がったところで、さきほどのソースをフライの上面に塗る。


 あとはバンズと野菜で挟み込めば――フィッシュバーガーの完成だ。



 付け合わせのスナックを皿に盛り、バーガーを中央に配置。

 トレーの上に置いて、店内に向かった。


 そして、そわそわして待っていた教官の前にトレーを差し出す。

 


「お待たせしました、フィッシュバーガーです」


 

「ありがとう!」


 僕に礼を述べ、すぐにバーガーに齧り付く教官。

 その光景は初めて見るものだ。

 だが、意外なことに驚きは少ない。




「これは、なかなか美味しい」


 そう言ってから、大口を開けてバーガーに向き合う。

 すっかり夢中になっているようだった。



 ――成功、なのかな。


 満足そうに食べる教官を横目に、僕はキッチンへと戻る。


 すると、店内のドアベルが鳴った。

 ぞろぞろと入ってきたのは、父と妹。



「おーい、CK~。今度はバッファローチキンのバーガー作ってくれよ」


 ヨナが大声を上げる。

 渋々、店内に戻ると父と妹がヨナの手元――食べかけのバーガーを見ているようだった。



「アニキー、また新作作ったの?」


「違うよ、いつもと違うの作れって言われてさ……」


「ハハハッ、つまりは新作ってことじゃないか」

 

 

 まさか見つかってしまうとは……

 メニュー以外の料理を出す際はきちんと食材と価格を設定して、妹や母の承認――というほどではないが、確認が必要だ。


 勝手に作って、勝手に客へ出す。

 ただでさえギリギリな経営なのに、利益が出ないことをするのは問題になる。



「いいじゃないスか、たまには色々変えるのもおもしれーすヨ」



「実はな……バーガーのバンズにマカロニチーズを挟むと、意外と美味いんだ」

「アタシも、余った肉の切れ端を焼いてサンドしたりするよー」


 家族からの唐突なカミングアウトに、僕は言葉を失う。

 まさか、僕よりコストの掛かることをしているだなんて……考えもしなかった。

 


 まだドアベルが鳴る。

 今度は普通に客のようだった。


 しかし、2人の会話とヨナの手にした食べかけのバーガーを見て、事態を察したらしい。

 満面の笑みで、客たちは僕らに問いを投げてきた。



「もしかして、新しいバーガーを出したのか?」


「オリジナルのハンバーガーを作れたりするの?」


 客達が詰め寄ってくる。

 だが、これ以上は良くない……気がする。



「えっと、これはその……」


 断るしかない。


 ヨナは常連客からも試作品の試食をしていることが知れ渡っている。

 今回のは試作品だと誤魔化すしかない。


 

 ――申し訳ないけど、言わなきゃ。


 覚悟を決め、頭の中で考えたセリフを言い放とうとした矢先。

 台車ごと、クロエが店内へとやってきた。






「バンズはたくさんある」


 ――いやいや、何をしてるんだ!?



 入ってきた客達はわくわくした様子で席に着く。

 それを横目に、僕はクロエの元へ駆け寄った。



「ダメだよクロエ!」


「いや、問題無い」

 そう言って、メモ用紙を僕に見せてきた。


「計算した。ハンバーガー単体を注文するよりも、バンズを原価そのままで提供、追加注文で料理を1品出した方が単価が高くなる。それにホットスナックが余っている以上、ハンバーガーを出す形でストッカーのフライドポテトやチキンを使うべきだ」


 たしかに、クロエの言うことは理想的だ。

 その理屈に、間違いはない。



 ――やるしか、ないか。



 もう客はその気になってしまっている。

 この状態で「できません」は無理だ。



 そして、この日の夜はいつもでは考えられないほどにハンバーガーの注文、バンズと具となる料理が大量に出た。

 たしかに、売上もこれまで以上に素晴らしいものだ。文句の付け所が無い。

 いつもはいくらか余って、廃棄したり加工するはずのバンズが全部無くなるほどの大盛況。数字的にも、雰囲気的にも、お祭り騒ぎだったのは言うまでもない。


 しかし、たった1つだけ問題がある。

 月曜日だったのだ。


 日持ちするように作られているハンバーガーのバンズは月曜の朝に仕入れて、3日を想定して使い切るようにしている。

 つまり、3日以上はハンバーガーが提供できなくなってしまう。


 バンズは店の向かいにあるベーカリーで特別に作ってもらっているものだ。

 こちらの都合で『今すぐ増産』とオーダーを掛けることはできない。


 

 案の定、ハンバーガーを提供できないと困るのはレティシアだ。

 数日間、人を殺しかねないほどに不機嫌になったのは……語るまでもなかった。

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