12の時が回る頃0は密かに動き出す
名無しのポチ
第1話 怖い
俺は死んだ。そして目覚めたら牢屋にいた
朝、携帯のアラームで目を覚ます。
冬の布団は出ることが困難と言われているが俺はすぐに起き上がる。アラームの音は自分の好きな曲に設定して目覚めよくしようとしたら、静かな曲で全く目が覚めない。変えようとはするが、めんどくさいので変えない。
眠くて仕方ない目を無理やり開いてベットから立ち上がり、洗面所に向かう。相変わらずの自分のブサイクさにがっかりしながらも顔を洗う。
タオルで顔を拭き、リビングのカーテンを開ける。庭には雪が積もっており冬だと認識させられる。だが家はとても暖かい。暖房がそこら中にあるからだ。やっとここで日光を浴びる。やっぱり人工的に作られた光よりも日光を浴びた方が気持ちいい感じがする。
でも部屋のカーテンは開けない。本が色落ちするからだ。
「カーテン開けるのまた忘れとるよ!」
そうばあちゃんに言う。
俺は、ばあちゃんとずっと一緒に暮らしている。俺が物心ついた頃には母さんと父さんはいなかった。
死んだのか、離婚して俺が邪魔だったのかも知らないし、幼い頃だったので名前も顔もわからないし覚えてもない。別に知りたいわけでもない。
俺はばあちゃんと暮らすのが楽しかった。
「ごめんねーー。もうおばあちゃん物忘れがすごくてすごくて。歳を感じるのよ、だから早く彼女さんの顔をみてみたいわーー」
ばあちゃんはいつも俺に彼女がいないか聞いてくる。そろそろ死んでしまうから孫、せめて彼女を見たいと思うのだろう。でもそれに答えれるほど俺はかっこよくなかった。
「いつかね」
いつも曖昧な答えしか打てない俺。
「待ってるよ」
トン
そう言いながらばあちゃんは、机に味噌汁と米とタクワンを置いた。米は顎の弱いばあちゃんが食べるから柔らかくてねちょねちょしてる。味噌汁は薄くてタクワンは濃い。それでもご飯は美味しかった。
「ごちそうさん」
そう言って俺は歯磨きをして着替える。学ランを着てマフラーを巻き手袋をつける。カイロを二個取り開けてポケットに入れる。ポケットに前に使って硬くなってるカイロを玄関に置き玄関を開けた。冬の冷たい風を無視して自転車にまたがり学校に向かう。白い雪を見ながら白い息を吐く。タバコを吸っている気分になれるので寒いのも嫌いじゃない。遠くの山も分厚い雪化粧をしていた。山はそのままでも綺麗なのに何故化粧をしたのだろう。そんな馬鹿なことを考えてるうちにあくびをしながら自転車に乗る俺。いつもいつも学校は楽しくないんだよな。
「ヘイヘイお待まちハマチ!!」
そう言いながら俺の自転車の荷台を握り止めてきた。
かなり危ない事をしてきた奴はあいつしかいない。
幼なじみでバカでアホで暇で仲の良い神崎いのり。
俺はそんな彼女が好きだった。
彼女と雑談しながら歩く俺は彼女の顔を見ると照れてしまうから前を見て話す。
でも本当に愛おしい。鳥の鳴き声、風の音が全てが耳に入らなくなり全て彼女の声一色になる。
いのりは俺のことを好きではないかもしれない。ただの幼なじみ止まりかもしれない。だって俺にだけ下ネタ言うし、普通に部屋に入ってくるし、デリカシーがない。好きな人にはこんなことしないだろ!!
こんな人を好きになってしまった自分を恨む。
でも恋には嘘をつけなかった。
「それでさ慎吾はさー部活入らないの?陸上とか入ったら余裕で世界一位取れるでしょ」
俺、風慎吾(ふうしんご)はかなりの身体能力を持っていた。50メートルでは2秒きれるかきれないかぐらいの速さだ。
身体能力測定では人間のレベルをいつも超えている。喧嘩も昔は売られていたが、今はもう喧嘩を売られることもなくなった。
「入らないよ。ばあちゃんの手伝いしないとだし」
俺はつまらない回答しかできない。でもこれは本当だ。ばあちゃんはもうほとんど力がなく買い物は全て俺がすることになっていた。
「ふーん。一緒に部活入りたかったなー」
いのりと一緒の部活をしているのを想像するだけで楽しかった。
「いのりは何するんだ?」
俺は聞くと
「え?しないよ?」
と返された。めちゃくちゃ意外だった。彼女は小さい頃はよく暴れ回っていた子だったから部活にも参加してかつやくするのかとおもっていた。
「部活したら慎吾と一緒に帰れないじゃん」
「え?」
突然の言葉に俺は彼女の顔を見てしまった。そしたら彼女の顔は真っ赤になっており、走って先に学校に行ってしまった。走ったら余裕で追いつくが俺はぼーっとしてしまった。俺のこと好きなのか?わからない。でもまだ可能性があることに気づき一人でガッツポーズしていた。
学校に着くとすることは読書だがいのりは俺の席の隣でいつもなら俺の読書を無視して話しかけくる。それなのに学校についてから本を読むとおどおどした表情で俺をチラチラと見てきた。
「なぁ、いのり」
先に話しかけてみるがいのりは
「ひゃい!!そ、そうだね!!最近テクノロジーの進化がすごいよね!!」
「まだ何も言ってないけど、、」
「なにもいわないでくれ!!」
テンパっている彼女を見ていてまた愛おしく感じてしまう。
「今日もぉ
「あ!ーー!!ー!ーーー!ー」
聞こえないように叫ぶ彼女の口を塞ぎ俺は言った。
「今日も一緒に帰ろうな」
ここで愛の告白などをした方が良かったのかもしれない。でもまだ俺たちはこの関係でいい気がする。いつか恋人になって結婚して子供作るのかもしれない。でもゆっくりと急がずに仲良くしていきたい。まだいのりも心の準備ができてないらしいし。俺もまだ恥ずかしい。てかなんでこんなに自信満々なのか自分でもわからない。朝までは無理だと思ってたのに。
授業のチャイムが鳴り先生がホームルームをし、授業が始まる。
真面目に先生の授業を聞いている俺にいつも通り消しカスを投げてくるいのり。
それを俺はいつも無視したり反応したりしている。
お返しに俺の鼻くそあげようか迷ってしまう。
ガラガラ
ドアの開く音が聞こえみんなそこに目線がいく。
入ってきたのは見たことのない生物だった。全身黒く、ツノが生えていて、目は赤く鋭い爪でかい八重歯が見えていた。
クラスメイトの女子が叫びクラスメイトが一気に騒ぎ始めた。
俺も冷静ではなかった。
こんな生物見たことがない。でもみんな何者か知っているんだ。
悪魔だ
だが、悪魔は小さい子供を拐いに来るぐらいで俺たち高校生のところに来るのは初めて聞いた。聞いたって言うか今その状況になっている。
それもなんで俺たちのクラスにきた。意味がわからない。
横を見ると震えているいのりがいた。椅子から落ちていて、腰が抜けて動けない状況だった。
その姿を見た俺は悪魔から彼女を守らなくてはいけないと思ってしまった。
俺は悪魔に思い切り椅子を投げる。
当たって椅子が砕け散った。だが悪魔には無傷だった。続けて俺は走って悪魔の顔をドロップキックをかました。悪魔の顔は壁を破壊して別教室に飛んで行った。足がじんじんする。
とても硬かった。
足の骨が折れたかと思ってしまうぐらいの硬さだった。
多分まだ生きているだろう。追い討ちをしようと俺も壁を壊して向かおうと思った瞬間
でかい手が俺の顔を掴んだ。
そして俺は三階の教室の窓から飛んだ悪魔に俺の顔を地面に叩きつけられた。雪がクッションになったが流石に痛かった。
ヤバイ
頭が熱くなるのを感じた。
血が出てるのか。
前がぼやけて見える。
このままじゃ死ぬ
まだ俺の顔を強く握りしめている悪魔の腕を握る。
俺はまだしねないんだわ!!
太く硬い腕だった。
でも俺の握力の方がすごい!
悪魔の腕をミシミシと握る俺。そして悪魔の腕を引きちぎった。悪魔はものすごく大きな声で叫び、距離を取ってきた。
流石に腕をちぎられたら悪魔でも痛いのか。
それより腕をちぎったの大きい。
これならワンチャン勝てるかもしれない。
そう思った瞬間悪魔から黒紫な煙みたいなものが出てきた。そして引きちぎった方の腕に行き腕の形になっていく。
悪い予感がした頃には遅かった。腕は元どおりに治ってしまった。
絶望とはこんな感情のことかと実感した。俺は何をしてもうまくいっていたと思う。だから絶望を知らなかった。だが今初めて絶望を感じて知りたくなかった感情だったことを思い出してしまった。
悪魔は笑っていた
走ってきた悪魔が俺に向かって腹を殴ってきた。校舎の方向に飛ばないようにずれていた俺はグラウンドの方向に転がっていった。
止まって倒れた体を無理やりにでも立たせようとするがゲロと血が混ざった何かが口から出てきた。
お腹がじんじんする。お腹を抑えていないとまた何かが口から出てくるかんじがした。
多分誰かが悪魔が来たと通報したと思うから耐えることに専念しようと思い逃げようと立ち上がった瞬間顔に膝蹴りをくらった。
鼻血が出てくる。
悪魔に全然対抗できない。
このままじゃ死んじゃう。
歯も折れてボロボロだった。
『学校を破壊しろ』
ふとこんな言葉が聞こえた。誰が言ったのかはわからなかった。でもそれを聞いた瞬間悪魔が学校の方向を向き、また黒紫のものを出し始めた。
何をするんだ
校舎を破壊したら全員死ぬぞ
気づけば俺の体は勝手に校舎に向かって走っていた。
そして三階に向かって思い切りジャンプをする。
いのりが見えた。一人で俺を窓から覗いていたのですぐにわかった。
だがいのりの体が傾いた。いや校舎が崩れたのか。
手を差し伸べる俺の手を彼女はギリギリのところで握った。そして俺はいのりを抱き寄せて彼女を守った。
俺たちは死体の上に立っていた。
校舎が崩れて生徒の血や肉片、壊れた机などがたくさんあった。
その上で僕はいのりを抱きしめていた。
他の人を助けないのは不平等だったのかもしれない。
他の人にもちゃんと命があって今まで生きてきたんだ。
なのに俺は一人しか助けられないと察してから彼女の方へ走ってしまった。
一人だけ生きてもいのりも嬉しくないだろう。それなのに俺はいのりを助けてしまった。
泣いているいのりを抱きしめる。
ごめんなさいみんな
俺はいのりを守ると決めたんだ。
『打て』
ふと彼女の背中に回していた手から血が溢れ出ているのがわかった。彼女の顔を見ると頭に一つの穴が開いていた。俺の手を見てみるとにも穴が開いていた。そして自分の胸を見ると穴が開いており血が吹き出していた。
悪魔にやられたのか。
そうわかった瞬間俺はいのりを地面に投げ捨て自分の心臓を抑えた。それでも血が溢れ出てくるのを感じる。暖かく怖い。嫌だ。死にたくない。俺はいのりのことはどうでも良くなっていた。自分の命だけ。自分の命だけでも!!
俺は地面の強く倒れた。
走馬灯が見えた。
いのりと俺は話していた。笑顔で2人は話していた。僕の人生ほとんどいのりと一緒にいた感じがする。
はは、
そんないのりを俺は投げ捨てたのか。
走馬灯ぐらいいいのを見せて欲しかった。
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