第11話 彼女ヅラ
次の日から、俺は石を割りまくった。
荒野には岩とは行かないまでも、でっかい石がたくさんある。
岩と石の違いってなんだろうとも思うのだが。
一抱えくらいの石を、『石のつるはし』で砕くのだ。
砕いた石の中に、鉄鉱石や、クリスタルがあると、麻で作った『麻の袋』に入れていく。
ちなみに、鉄鉱石もクリスタルもレアドロップだった。
石を10個割るごとに、どちらかが一個混じっていればいいかなっていうレベル。
最初に鉄鉱石とクリスタルを同時に獲得できたのは、だいぶ運が良かったらしい。
俺はとりつかれたように、石をひたすら割りまくった。
一体、石になんの恨みがあるのかっていう勢いで。
「うら……」
うららはそんな俺の腕をくいくいと引っ張ってくる。
遊んでほしそうに。
寂しそうに、指を咥えながら。
しかし、うららと遊んでいる場合ではないのだ。
鉄鉱石で作れるレシピは、大量にあるが、例えばこんなものがある。
・『冷蔵庫』
・『エアコン』
・『電子レンジ』
文明の利器すぎるじゃんね!?
こんなん作れたら、快適な暮らし確定ですわ。
ちなみに、『冷蔵庫』のレシピは以下の通り。
・鉄鉱石✕240個
・クリスタル✕25個
・ポリマー✕15個
・電子基盤✕10個
最後の2つはどうやって手に入れるのかわかんないし、電子基板ってなんだよっていう気もするのだが。
とりあえず手に入る鉄鉱石とクリスタルだけでも揃えておこうと思うのだ。
そして、3日が経った。
親の仇のように、石を砕き続けた。
集まった素材は以下の通り。
・鉄鉱石36個
・クリスタル5個
・石ころ∞
……………。
途方に暮れた。
冷蔵庫遠いわ。
鉄鉱石レシピで最も簡単な『鉄の剣』ですら、鉄鉱石✕80個。
なんか鉄鉱石の集め方を間違えている気がする。
石を割るのではなく、鉱脈みたいなものを見つけなきゃいけないのでは。
普通に考えたら、石の中に鉄鉱石入ってるのがおかしいもんね。
うーむ。
「うらら……」
3日間放置したうららは、完全にふてくされていた。
地面にしゃがみこんで、いじいじと枝で土をいじっていた。
なんというか。
申し訳無さが半端ない。
放置しなかった所で、俺がうららにしてやれるのはセクハラくらいしかないのだが。
まあでも放ったらかしたのは悪かった。
少しゆっくりやっていこう。
冷蔵庫とかエアコンは諦めて、まずは石で家でも作ろうか。
「うらら、悪かったよ。一緒に遊ぼうか、な?」
「うら!」
そう声をかけても、うららはプイッと顔を背けるだけだった。
うららはグレていた。
頬をプクッと膨らませているのが可愛いのでいいのだが。
「よし、じゃあさ、うららの好きなザリガニ取りに行こうぜ?」
「うら!?」
好物で釣る作戦に出てみた。
うららの顔がぱあっーと明るくなる。
ザリガニで釣れる美少女。
「ううら……うら?」
うららはモジモジしながら、俺の手を掴む。
タツヤ……いこ? 的な事を言っているのだろうが。
照れた顔がやたら可愛かった。
信じられないだろう? これザリガニで釣られてるんだぜ?
ザリガニでこんな可愛くなれるのは、世界広しと言えどもうららだけ。
ザリガニで思い出すのは、泥だらけになったうららである。
せっかく服を作ったのに泥だらけにするのは嫌だな、と思いつつも、俺はうららの手を取った。
そんな時だった。
「うーーーーらーーー!!」
遠くから、そんな雄叫びが聞こえてきた。
いつもの襲撃だった。
ここ数日、何度か野生の全裸男に襲われた。
いつものフル○ンこん棒男である。
怖いし、気持ち悪いので、蹴り飛ばしてたのだが。
「うーーーーらーーー!!」
今回はいつもと違うっぽい。
女の声だった。
「うーーー!!」
槍を掴んで、犬歯をむき出しにするうらら。
うららは遠くをキッと見つめている。
そちらから駆けてくる女。
俺は胸が高鳴るのを感じた。
女の襲撃は、うらら以来、二度目である。
女の姿が鮮明になる。
ばるんばるん。
丸出しにした女。
こん棒を片手に、全裸の女が走ってくる。
黒髪に日焼けした赤い肌。
堀の深い顔に、顔の半分はあるかという唇。
バタ臭っ!?
あと多分アラフォー。
うららみたいなのを想像していたのに。
俺は荒野の厳しさを学んだのだった。
「うらーー!!」
うららが槍を片手に迎撃に出る。
槍では殺傷力が高すぎる。
俺の興味は失せつつあったが、うららがバタ子さんを突き殺してしまうのは、なんか嫌だった。
フル○ン男ならいくらでも突き殺すといい。
「うらら、俺に任せろ」
「うら!?」
うららを背中でかばうようにして、迫りくる女に立ち向かう。
こん棒を振り上げる女。
間近に迫っていた。
「フッ!」
軽い呼吸とともに蹴りを繰り出す。
空手キック。
振り上げた足は、綺麗な放物線を描いた。
つま先が女のこめかみにヒット。
上段回し蹴り。
「ううっ!?」
女はそのまま地面に倒れた。
一撃だった。
特技のおかげで、蹴りが進化しすぎて怖い。
「ううら……」
うららがぽーっと俺を見つめていた。
ふふふ。
まんざらでもなかった。
「うう……」
こめかみを押さえて、バタ臭い顔のバタ子さんがうずくまっていた。
このまま放置しておけば、そのうち逃げていくだろうと思うのだが。
気だるそうにバタ子さんが身じろぎをする。
ぷるんと、何かが揺れた。
妙齢ではあるが、バタ子さんはいい身体をしていた。
ずくん。
エレファントが鳴動する。
思えば、うららとしてから今日で4日目?
中年とは言え、そろそろ限界である。
アレは3日でパンパンになってしまう。
パンパンになったら、あとは破裂するだけ。
そう。
死ぬのだ。
だから、仕方ない。
うららに手を出すのは控えるが、バタ子さんなら何をしてもいいだろう。
「……ちょっとこっち来い」
「う、うう!?」
バタ子さんの手を掴んで、立ち上がらせた。
「うら!?」
そんな俺を見て、何かを察したうららが怒っていた。
「うらーー!! うららー!!」
顔を真赤にしてジタバタ。
何が気に入らないのか、地面をべしべしと思い切り踏みつけていた。
「お前は、ちょっとアリンコとでも遊んでろよ」
「うらーーー!」
いてっ!?
うららにガブッと腕を噛まれた。
思わずバタ子さんを離してしまう。
「うらー! うらら!!」
「うー」
よろよろしたバタ子さんの垂れた尻を、うららがバチコーンと蹴飛ばしている。
何をキレているのか。
バタ子さんはそのまま逃げていってしまった。
あああ!?
俺の性処理担当が!?
「……ううら、ぐすっ」
うららが抱きついてくる。
鼻を鳴らしながら。
むにゅっと何かが押し付けられていた。
え、なにこれ。
かわいい。
あと、エロい。
とりあえず、うららを抱きしめる。
うららは顔を俺の胸に押し当ててきた。
これアレだろうか。
彼女ヅラっていうやつだろうか。
俺がバタ子さんとしようとしたから怒っている?
え、じゃあ何しても合意の上じゃん。
俺だって別にバタ子さんとしたかったわけではない。
金髪美少女でエロい身体のうららの方が良いに決まっている。
「うらら……」
「ううら……」
うららと見つめ合ってみた。
セリフだけ見ると間抜けだが、お互いの名前を呼んでいるのである。
とりあえず、うららの胸に手を這わせた。
むにゅ。
「う、うらーーー!!」
顔真っ赤にしたうらら。
そのまま俺の頬をビンタする。
えええ!?
「うらー! うららー!!」
真っ赤になったうららは、胸元を押さえてジタバタしていた。
彼女ヅラはしていても、中学生レベルの彼女ヅラだった。
え、なにそれ。
めんどくさい。
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