文明のない世界に転移したら、原住民が美少女だったので

第１０話 石の力

　とれたてのうりぼーを、うららが手際よく捌いて昼食にした。

　火で炙っただけだが、うりぼーは脂多めで美味い。

　とはいえ、くさみが強いし、味もないのでハーブと塩が欲しい所である。

　昼食を終えて。

「うらー！」

　うららは槍を掲げて、楽しそうに走り回っていた。

　槍を随分気に入ってくれたらしい。

　良かった。

　俺はそんなうららを尻目に、午前中に作った武器の確認をする。

『石の斧』

『石のつるはし』

『ボーラ』

　作れるものは、全て作ってみた。

『石の斧』は５０センチくらいの木の棒に、大きな石を紐で括り付けた斧だった。

　紐を作れる素材なんてあっただろうかと思ったが、草が減っていた。

　草製の紐らしい。

　石の斧は、幅広の石包丁のようなものが取り付けられている。

　殺傷力は低そうだが、思い切り叩きつければ木を切れそうだ。

『石のつるはし』は、同じく５０センチくらいの木の棒に、鋭利な尖った石が括り付けられている。

　尖った石は、当たったら痛そうだった。

　とはいえ、武器としてはリーチがある分、槍のほうが優秀だろう。

『ボーラ』は何に使うのかさっぱり不明だった。

　先が３つに別れた縄だった。

　縄の先っちょにはこぶし大の石が３つ括られている。

　でっかいアメリカンクラッカーみたいな。

　試しに、３つの石をゴツゴツぶつけて見たが、全然弾まないので面白くなかった。

　うららにあげようかと思ったが、うららは全く興味を示さなかった。

　ポイするしかないかな。

　ちなみにうららは『石の斧』にも『石のつるはし』にも興味を示さなかった。

「う！」

　誇らしげに槍を掲げるだけである。

　つまり、これらは武器じゃないのか。

　武器として扱うよりも、道具として扱うべきなのだろう。

　試しに、近くにあった大きめの石を『石のつるはし』で砕いてみた。

　一抱えもある大きな石だった。

　ガスガスと、石は面白いように砕ける。

　あっという間に、石ころレベルまで砕けた。

　こんなに簡単に砕けるものだろうか。

『石のつるはし』の破壊力に、少し引いた。

　そんな時、砕けた石ころの中で少し違うものを見つけた。

　赤くて光沢を帯びた石ころ。

　透明なガラスのような石ころ。

　なんというか。

　レアドロップ感が漂っている。

　そんな時だった。

『素材が集まりました。以下のものを作成可能です』

『解析眼鏡』

　そんな文字列が、視界に浮かんだ。

　おお。

　眼鏡はいらないけど解析って付いているのが気になる。

　とりあえず、しゅるるーポン！　と作ってみる。

　完成したのは、虫眼鏡だった。

　黒い取っ手のついた分厚いルーペのあいつである。

　どの辺が解析なのかわからないが。

「うらー？」

　とりあえず、うららを見てみる。

　レンズ越しに見える金髪美少女。

「うらら」

　なぜか照れてはにかむうらら。

　かわいいな、おい。

『解析結果：女体』

　おおおお。

　なんか出た。

　レンズにそんな文字列が浮かび上がる。

　視界に出るのと同じく、日本語だった。

　ていうか、女体って。

　なんてエロい言い方をする虫眼鏡さんだろう。

　自分の足元を写してみた。

『解析結果：麻桐達也（あさぎりたつや、１９８４年７月３０日-）は、埼玉県出身の会社員。法政大学卒。現住所は東京都練馬区……』

　ペディアか！！

　思わずぺしっと虫眼鏡を捨ててしまった。

　ずらずらとびっくりするくらいの文字列が浮かんでいた。

　なにこれこっわ！！！

　二度と己は見るまいと心に誓う。

　とはいえ、解析眼鏡さんは便利だった。

『解析結果：石ころ。アイテムビルド対象。作成対象レシピは以下の通り……』

　みたいにレシピがわかる。

　ちなみに石ころのレシピは以下のとおり。

『石の床』

『石の壁』

『石の天井』

『石の屋根』

『かまど』

『すり鉢』

『石の槍』

『石の斧』

『石のつるはし』

『ボーラ』

『石の矢』

　ｅｔｃ……。

　なんか家が作れそうな事を言ってる……。

　石の床を作った所で、どうやって運ぶんだよと思ってしまうが。

　ちなみに必要な材料は石ころと木材だけだったが、量は莫大だった。

　ちなみに、石を砕いた時に出てきた透明な石ころとガラスの石ころは、それぞれ以下の通りだった。

『解析結果：鉄鉱石。アイテムビルド対象。作成対象レシピは……』

『解析結果：クリスタル。アイテムビルド対象。作成対象レシピは……』

　まじか。

　鉄鉱石とクリスタルって石に混じってんのか。

　ちなみに作成対象レシピに載っていたのは、剣だったり望遠鏡だったり、便利そうなものばかりだった。

　どれも作成に必要な鉄鉱石とクリスタルの量はえげつなかったが。

　これもう割るしかねえだろ。

　石を。