第18話 物理法則を壊す少女
次に目を覚ますとそこは天国。
ではなかった。
良かった。
正しく言えば良くないが。
状況を説明するとユウトは今、路地裏で横になっている。
それもフィーナの太ももの上で。
誰もいない路地裏で。
ユウトが起き上がろうとするといきなりフィーナが頭を撫でてきた。
「こうやって触れ合えるのは、やはり幸せですな」
現在進行形でフィーナはユウトの頭をかなり強い力で撫でている。
正直言って痛いが、フィーナの言動や仕草からなんとなく寂しさと嬉しさが滲み出ているのが感じられた。
大して急ぐ予定もない。
勝手に気絶したユウトが悪いのでこのままフィーナに付き合う事にした。
どのみち、今起き上がったとしても気まず過ぎて話が続かないと思ったからだ。
ユウトは難なく、気まずくなく起きるためにある作戦を考えた。
【作戦名 起きた雰囲気を口からだして、起きたよサインを送る大作戦】
これはその名の通り、相手に今起きたとさり気なくアピールする作戦の事だ。
これを聞けば、ほぼ100パーセントの確率でフィーナはユウトの頭から手を離すだろう。
そして、気まずくならないように次の話題も今考えておこう。
そうだな、なんで気絶したのかを聞こう。
あの時は謎すぎた。
「あぁ〜。よく寝たぁ〜」
「あ、師匠おはようございます。私の膝はよく寝れましたか?」
フィーナはそう言ってユウトの目覚めを歓迎してくれた。
が、その間、フィーナは何一つ自分の行動を変えずに、ユウトの頭を撫で続けていた。
ユウトが目を覚ましたのにも関わらず、フィーナはその行動を辞めなかった。
いや、どうも辞めたくない様子だった。
「フィー? 何をしているのだ?」
「いえ、何も」
言葉を弾ませながら嘘を付くフィーナ。
どう見てもフィーナはユウトの頭を撫で続けていた。
「あの、立てないんだけど………」
「…………っあ」
ようやく気づいたのか、それとも言われるまで気づかないふりをしていたのか。
どうせ後者だろうが、ユウトが指摘したら直に辞めてくれた。
そしてようやくユウトはフィーの元から開放され、自由の身となる。
嬉しいのか寂しいのか。
どこかなんとも言えない感覚に襲われた。
きっとそれはユウトもフィーも後者に値すると思った。
実際フィーナはどこか寂しいような表情になっており、ユウトもどこか納得いかないような感情になっていた。
それはさておき、
「俺はどうして気絶したんだ?」
ユウトがそのことを聞くと、フィーナは罰が悪そうに口籠りながら下を向く。
あまり話したくなさそうにも思えた。
「いや、言いたくないならいいんだ。気にするな」
「いえ、大丈夫です。師匠には言っておかなきゃいけないことなので。それと……、絶対に逃げないでくださいね」
言う決心がついたのか、フィーナは覚悟を決めたような表情になる。
ユウトはフィーナの言葉に頷き、その事を言わせるように促した。
「師匠を気絶させたのは私の髪の毛のせいです………」
「は、はぁ?」
フィーナは自分の髪の毛の部分に人差し指を指す。
帽子を被っており全体は見えなかったが人の首を締めるくらいなら容易な程の髪の長さだった。
ユウトはこの時、既に物理法則がおかしい少女のせいで頭がパンク寸前になっていた。
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