第52話
あれから私は仕事の日々を送りながらある決意を固めだしていた。
奈々とはやっとこさ順調そのものになったが将来的な話をして何かしたいと思ったのだ。
電話で話した感じ私達の意見は同じだが、たぶんこの先長く付き合っても区切りみたいのはない。
だから尚更言葉や何かで伝えようと思った。
付き合いは短い方だけど奈々は大切だしこの関係がなにより大事で続けていきたい私からしたらもう将来が奈々から感じていた。先が見えると言うか、この人とこの先一緒にいたいと思うのだ。
だが、決意があっても私は将来を考えた相手は奈々だけでどうしたらいいやらと言う感じだった。
それで早速ひいちゃんにオイスターバーを奢って私の家で宅飲みしながら作戦会議をする事にした。
「ねぇ、ひいちゃん。奈々の話なんだけどさ、私将来も考えてるくらい本気だからずっと一緒にいたいみたいな皆を伝えたいんだけどまだ早いかな?」
「……将来の具体的な話をしたし奈々ちゃんからも聞いてきたんだから考えてるはずだから早くはないと思うけど……」
「けど?」
「どう言うの?」
ひいちゃんは電話の件は知っているが相変わらず真顔で私はしっかり答えた。
「シンプルにずっといたいと思ってる……かな?」
「んー……、だったら指輪とかも用意したら?言うのは簡単だけど受け入れてもらうためには形も大事だし、本気なのが伝わるようにしないと」
「それなぁ…。指輪かぁ………。私指輪とかもらっても激萎えだったんだけど萎えないかな?」
「関係が深くなかったら萎えるしいらないけど朝海達なら平気じゃない?それに奈々ちゃんはそういうの喜ぶタイプじゃん」
真顔の神は真顔で酒を飲みながらおつまみのいかを食いながら言った。一見本当に興味なさそうだけどひいちゃんは話をちゃんと聞いてくれる。
「でも、指輪とかやっぱり早くない?奈々はマジで軽い感じで言ったかもしれないじゃん?」
「軽く言わない内容だろ普通に。こいつダメそうだなって思ったら言わないし言われてもそこまで考えられないとか言って即フェードアウトするでしょ」
「うん。確かに」
「ちゃんと将来が考えられる人じゃないとそこまで具体的に話さないよ。逆に話してくる勘違いバカはいるけどそれは言われたらなに言ってんだこいつ?ってなるだけだろ」
「うん…」
やっぱり真実しか話さないひいちゃんはぶれなかった。確かに当たっている。何も間違いはない。でも、指輪って…………私が指輪って…………。
「……大丈夫かなひいちゃん………」
「それは正直何とも言えないんじゃない?奈々ちゃんは出張もあるし付き合いも短いし、即断られるか考えるかじゃん?手放しで受けとる可能性は低そう。たぶん慎重だと思うよ。朝海は今まで男と付き合ってたから」
「あぁ、そうかぁ…………」
「子供が欲しいって言われたら作ってあげられないし、ましてややっぱり男がいいなんて言われたらショックでしょあっちからしたら。賭けるにしたって負けた時の傷がでかすぎるよ」
「うん………」
その問題は大きかったのに視野に入れてなかった。
ひいちゃんの言い分は非常によく分かって悩ましかった。私の問題だけどこれは信用問題だろう。私は奈々がいてくれるなら他はいいと思う決心だが奈々が信じてくれるかどうかだ。
「まぁ、でもここら辺は信じてもらえるように言うしかないんじゃない?本当に欲しいならここで一番頑張んないと無理だよ」
「うん…。じゃあ、頑張る…」
「断られても頑張れんの?それに他は諦められるの?途中で投げたらクソだよ朝海。クズみたいな男に成り下がるだけ。しかも相手も傷つける。覚悟がないならやめときな。人の時間を使うってお互いに利益が出せないと罪だよ」
ひいちゃんは興味なさそうにチャンネルを変えながら言った。
正しくその通りな事を問われても私は揺らぎなかった。この人がいいって思わせてくれるような人を諦めたいなんて思わないし、他なんかどうでもいいくらい奈々は大事だ。ここでなにも切り捨てられなくて自分が嫌な思いをしたくないから逃げるようなクズじゃない。
「絶対やるよ。諦められないもん。受け入れてもらえるように努力する。でも、本当に嫌がられてフラれたらひいちゃん慰めてね?」
ひいちゃんは今まで興味なさそうだったのに私を見て笑った。
「当たり前。やるだけやってフラれたらまた次行けばいいでしょ。人生長いんだからそんなの気にしてる暇あんなら今努力しな」
ひいちゃんらしい応援に私はさらにやる気になった。
ひいちゃんやっぱり好き。素敵。刺さる事しか言わないけどひいちゃんは私の宝だ。
「うん!じゃあ、まず奈々の指のサイズ計る。そんでバカ高い指輪を買う!」
「じゃ、ガルディエだな。指輪と言えばガルディエだろ。ここでけちるとバレるし萎えるからガルディエでいきな」
「出たガルディエ!ちょっと調べるから待って!」
ガルディエはもう有名なブランドで全部高いけど全部可愛いやつである。女性も男性も好きな人は多いのではないだろうか。私は携帯で早速調べあげてひいちゃんに見せた。
「んー、新車よりは安いよひいちゃん。高いけど。どれがいいかな?」
「全部可愛いな。どれ貰っても嬉しいわ私は」
「私も。え、どうしよ悩む…」
「なんかいろいろついてるとウザいからシンプルなのにしたら?でかいのもうざいし」
「それ。じゃあ、これは?プラチナだって」
すぐに決まったプラチナの指輪は一番シンプルな作りだが普通にいい海外旅行を満喫できる金額だ。ひいちゃんは即答した。
「好き。バカ高いけど」
「先行投資だからいいの。ここは金にものを言わせないと」
「えらい。じゃあ、指輪は決まったとして次はサイズじゃない?バレないように計ってこないと」
「うん。寝てる時を狙う予定」
「それが一番だな。そこで計ってさっさと注文して指輪が来たら渡すだけにしな」
「だよね。私もそう思ってた」
ひいちゃんは私とまたしても同意見だった。
膝をついて指輪を渡すなんて形に拘っても萎えさせる可能性があるし元々一回で通るとは考えてない。
人の気持ちは聞かないと分からないものよ。
「とりあえず言う事言って指輪は形で示す物としてケースごと渡してよく考えてもらう………。で、ダメだったら返却。どうかな?」
「それだな。それが一番いいんじゃない?テンションの違いがあったら膝つかれて渡されてもなにこいつってなるし、ここは強引に行かないで考えてもらう姿勢で待ちに出るしかないと思う。で、考えてもらう時間も努力する」
「うん!よし!じゃあ、それで行くわ。ありがとひいちゃん」
「まだ何も始まってないよ。次はお泊まりしないと。予定は決まってないの?」
一通り段取りは組んだが準備がまだで私はカレンダーを見た。
「えっと、来週平日にご飯行くけどお泊まりは決まってない」
「え、じゃあ、明日は?指輪はすぐ用意できないから明日お泊まりしなよ?」
「え、早いけど分かった。聞いてみる」
指輪が用意できないと話を進められないので私は奈々に連絡してみた。明日会えなかったらまだ先になってしまうが善は急げだ。それに考えてもらう待ち時間は長いだろうから早めに行っておきたい。
返事くるかなとそわそわしていたら奈々は電話をしてきた。私はそれに心底驚いてひいちゃんを見た。
「え、ちょっとやだ電話かかってきちゃった!ひいちゃんどうしよ!」
「出ろよ。ボロ出すなよ」
「うん!分かった!」
作戦会議の今で奈々と話すのは波乱だが頑張るしかない。私はドキドキしながら電話に出た。
「もしもし奈々?」
「あ、あっちゃん。急にどうしたの?今日お泊まりなんじゃないの?」
「え、あぁ、そうだけど。あの、…会いたいから……。もしかして予定ある?」
これはちょっと怪しまれてる?なんか怖いけどどうなる?!とヒヤヒヤしながら私は答えを待った。
「ううん。私はいいけど……疲れない?」
「疲れないよ。……それに、家でゆっくりするだけならいいかなって」
「うん。じゃあ、私があっちゃんの家行くね?」
「え?いや私が……」
「いいから待ってて?夕方くらいに行くから」
「うん。分かった。ありがとう」
私はひいちゃんにオッケーサインを出しながら答えた。よし!これでまずは奈々を誘き出せたぞ!次は指のサイズを計らなければ!私はそれから奈々と少し話をしてから電話をきった。
「ひいちゃんバッチリ!あとは計るだけや!」
「じゃあ、紐ないの?糸とか」
「え、あぁ………ちょっと待って」
ひいちゃんに言われて私は部屋の捜索に乗り出した。紐はなさそうだけど裁縫箱に糸はあるはず………。捜索してすぐに糸を発見した私はとりあえずベッドの横のサイドテーブルにバレないように仕込んだ。それからペンも仕込んでおく。これでとりあえず指輪に関しては問題なかろう。
あとはさっさとバレないように計れるかどうかだ。
「ひいちゃん私寝るまで待ってた方がいいよね?奈々はいつも私より先に起きてるんだよね」
「じゃあ、エナジードリンクでも飲んで起きてな。これ逃したらどんどん先伸ばしになるよ」
「だよねぇ……。起きてられるかなぁ……」
「起きてろよ。ていうか、慎重にね?起こしたら台無しだよ」
「うん。今から緊張するー。ちゃんとできるかな?」
「朝海最初で躓いてたら意味ないよ」
「うん。がってん」
ひいちゃんに言われて落ち着くが初体験だからドキドキする。寝たのをしっかり確認してからやればきっと大丈夫だがこそこそやるなんて隠し事みたいで性に合わない。奈々には隠し事なんかほとんどないし、奈々は察しが良いから勘づく可能性もある。
これはまたしても難しいミッションなのでは?私は絶望はしないけど悩ましかった。
今までに比べたら簡単な方だけどこそこそやんのが難しいし、読まれそうで怖い…。それに先に私が寝ちゃったらただのバカだから先に寝るのだけは避けたい。奈々によるけど。
新たな任務はドキドキの初体験だがやる気が出ていた。
まずはここを突破しないと関係を先に進めるなんて不可能だしこの先の方が難しいんだからこんなのちゃっちゃとやってやる!待ってろよ奈々と思いながら私はまたひいちゃんといろいろ話した。
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